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三田学会雑誌 1968年12月号(61巻12号)

2008年10月18日 | 読書日記など
『三田学会雑誌 1968年12月号(61巻12号)』
   中鉢正美・編著/慶応義塾経済学会1968年

「被爆者生活の構造的特質--広島地域における面接調査を中心として--」中鉢正美・著があるから、原爆小文庫にあると思います。
--国の調査の結果は十分なものではないという。このことがポイントですね。



調査の対象者など……。下「」引用。

「 昭和四○年一一月に実施された厚生省の原子爆弾被爆者実態調査は、四二年二月にその基本調査の概要がまず明らかにされ、さらに一一月には健康調査と生活調査の結果についても、その要点が発表された。これは被爆者特別措置法の審議とも関係して、厚生当局が調査結果のうち注目すべきいくつかの特徴を取りあげて、一定の評価を下したものであり、最終的な結果報告書はいまだ刊行されていない。
 基本調査の結果は、被爆者手帳の交付台帳登録者中から死亡や所在不明を除いた総数の約九二%と、手帳はないが被爆者と申し出た者とを合せて二七七、九五五名の回答によるものだが、その内訳の集計に用いられたのは、手帳の交付を受けて調査に応じた二三二、四一二名だけの回答である。-略-」

独身者について……。下「」引用。

「配偶関係は男性については全国一般と大差ないが、女性については未婚・離別等の独身者が多いこと(図3)、また結婚についての差別は二・六%であるが、未婚・離婚の場合にはやや高率(未婚四・一%、離別五・七%、また死別の三五-三九歳男性で一七・二%)であること等が指摘された。」

身障の男性高率と、働く女性の高率……。下「」引用。

「また被爆による障害が慨して女性より男性の方が高率であるのに(表5)、保健薬の常用が男性(三九・三%)より女性(四○・四%)の方が多いことは、女の就業率が被爆者において一般より高いこととあわせて注目すべきであろう。
 これは生活調査においても、「元気」と答えた者が女において少ないにもかかわらず(表6)、就業率は女が一般よりやや高く、しかも一般より就業率の低い男において失業率がかなり高くなっている(表1)。また男の就業者(主に仕事と答えた者)のうち、「元気」と答えた者の約九割が就業しているのはともかくとして、「あまり元気でない」と答えた者の八三%、さらに「弱い・病気がち・床につききり」と答えた者の四七%が働いていることも見落としてはなるまい(表3)。さらに被爆者における日雇の割合は、一般より高いのみならず、とくに女において高率であり(表2)、被爆者のうちでも特別被爆者や近距離被爆者において高くなっている。」

「まとめ」として、五つのことがあげられている。下「」引用。

「 最後に、以上の諸資料にもとづく考察をつぎの五点に要約し、今後の検討のための仮説として提出したい。
(一) 厚生省の被爆者実態調査は、被爆者全体が国民一般と大差ないという結論を下すに十分なものとは必ずしもいえない。
(二) 被爆後における一応の生活再建期を、世帯の再構成・広島地域社会への復帰・経済生活の回復といった指標についてみるとき、被爆による本人の健康・世帯構成・地域社会等の破壊が顕著であるほど、再建の時期がおくれ、これはまた広島地域社会全体の戦後復興の波にも乗りおくれることとなって再建以後の経済的活動にも不利な影響をあたえている。
(三) 被爆は世帯の主たる生計維持者により多くの打撃をあたえ、被爆後の生活での他の世帯員、とりわけ女性の経済的責任を加重している傾向がある。
(四) 被爆は社会階層の上層から下層にわたって、普通爆弾による場合に比較すれば一様な被害をあたえたようであるが、その回復はやはり上層において著しく、下層はより重い負担をになわされている。
(五) しかも被爆者の階層構成全般としては、戦後広島の復興と発展にもかかわらず、被爆前の階層的位置を十分に回復するにはいたっていない。」

十分とはいえないというより、後が正しければ、ウソとなるのではないか?











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