『徹底解明東海村臨界事故』
舘野淳、野口邦和、青柳長紀(著)/新日本出版社2000年
国の対応は無責任だとしかいえない。
--こんなシステムをつくった国こそが、一番の加害者であることは間違いない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/46/0f478f8d683dd01d5e4084f416bb7c3d.jpg)
「はじめに」で書かれてあります。下「」引用。
「ウランやプルトニウムなどの核物質が「一定量以上一カ所に集まる」と、核分裂の連鎖反応が起きて、大量の放射線や熱を発生するというたいへん危険な状態になる。これを「臨界」という。」
「マンハッタン計画」でも臨界事故による被害者がいた……。下「」引用。
「初期の臨界事故は、原爆製造のマンハッタン計画が進められていたロス・アラモスで多く発生した。一例をあげると、当時、核爆発が確実に起こるかどうかを確かめるために、二つに分けた金属ウランの半球
形の塊をドライバーで押してすこしずつ近付け、臨界点に達したら直ちにそれを引き離すという危険きわまりない実験を、スローチンという名の若い科学者が行っていた。その様子をロベルト・ユンクは次のように述べている。
「一九四六年五月二一日、スローチンは南海のビキニ環礁で企てられた二回目の原爆実験に備えて同じ実験をやっていたとき、以前は何回もうまく行っていたのに、どうしたものか不意にドライバーが滑り落ちたのだ。-略-」(ロベルト・ユンク、菊盛英夫訳『千の太陽よりも明るく』一九五八年、文藝春秋新社)」
国は何もしなかった。安全局長の言い訳。下「」引用。
「この経過をみれば、国民の安全を守るべき政府(科学技術庁)が、住民を強い放射線にさらしたまま、何の手も打たず、いたずらに時を過ごしていたことが分かる。
「NHKスペシャル」(九九年一○月一○日放映)の中で科学技術庁の原子力安全局長は、「私どもは原子力安全委員会や助言機関の指示がなければ何の行動もとれない」と言い訳をしている。たしかに臨界事故はわが国ではじめての経験かもしれない。しかし、事故発生後四四分後に、JCOは「臨界事故の可能性あり」と報告している。その後、原研那珂研究所から中性子の異常が報告されるなど、臨界事故を想定して対応を取るきっかけは何回もあったが、ことごとくこれを見送っている。東海村には、原研をはじめ多くの専門家集団があるのだから、電話を一本入れて「臨界事故とはどんな事故なのか、臨界はまだ続いているのか確かめてほしい。どのような対策が必要か」と早い時期に聞けば、以後の展開は大きく変わっていたはずである。
当事者能力に欠けていることもあろうが、同時に普段からいつも頭にある「事故を大きくみせてはいけない」という官僚的ことなかれ主義が、そうした必要最小限の行動も取らせなかったのではないか。その意味では東海村村長の独自判断が光っている。」
「遅れに遅れた初期対応」下「」引用。
「それはともかく、「現場へ急行」を使命と考えるまじめな消防署員は、誘導されるままに事故の起きた転換試験棟に踏み込んだという。建物内のロッカールームには、もっとも被曝線量の多かった大内久さん(35)が作業服を脱いだ状態で横たわっていた。吐しゃ物で近くの床やTシャツは汚れていた。二番目に被曝線量の多かった篠原理人さん(39)はしゃがみこんでおり、もっとも被曝線量の少なかった横川豊さん(54)が付き添っていたという。」
ヘリで搬送。下「」引用。
「しかし、急性放射線症の患者であるため、国立水戸病院にも的確に対応できる専門医はいなかった。そのため千葉市にある科学技術庁放射線医学総合研究所(以下「放医研」という)に、急遽ヘリコプターで患者を搬送することになった。国立水戸病院→水戸ヘリポート→千葉ヘリポート経由で二台の救急車が放医研に到着したのは一五時二五分のことであった。事故発生からすでに五時間が過ぎていた。」
「常陽」製品製造。下「」引用。
「一方「常陽」製品製造の溶液は、濃縮度が高い上にさらにウラン濃度も高く、沈殿槽にける六フッ化ウラン原料溶液や八酸化三ウラン精製溶液では一リットル当たり四五グラムウランに対して、この溶液を取り扱う溶解塔、貯塔などでのウラン濃度は、一リットル当たり三七○グラムである。-略-」
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舘野淳、野口邦和、青柳長紀(著)/新日本出版社2000年
国の対応は無責任だとしかいえない。
--こんなシステムをつくった国こそが、一番の加害者であることは間違いない。
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「はじめに」で書かれてあります。下「」引用。
「ウランやプルトニウムなどの核物質が「一定量以上一カ所に集まる」と、核分裂の連鎖反応が起きて、大量の放射線や熱を発生するというたいへん危険な状態になる。これを「臨界」という。」
「マンハッタン計画」でも臨界事故による被害者がいた……。下「」引用。
「初期の臨界事故は、原爆製造のマンハッタン計画が進められていたロス・アラモスで多く発生した。一例をあげると、当時、核爆発が確実に起こるかどうかを確かめるために、二つに分けた金属ウランの半球
形の塊をドライバーで押してすこしずつ近付け、臨界点に達したら直ちにそれを引き離すという危険きわまりない実験を、スローチンという名の若い科学者が行っていた。その様子をロベルト・ユンクは次のように述べている。
「一九四六年五月二一日、スローチンは南海のビキニ環礁で企てられた二回目の原爆実験に備えて同じ実験をやっていたとき、以前は何回もうまく行っていたのに、どうしたものか不意にドライバーが滑り落ちたのだ。-略-」(ロベルト・ユンク、菊盛英夫訳『千の太陽よりも明るく』一九五八年、文藝春秋新社)」
国は何もしなかった。安全局長の言い訳。下「」引用。
「この経過をみれば、国民の安全を守るべき政府(科学技術庁)が、住民を強い放射線にさらしたまま、何の手も打たず、いたずらに時を過ごしていたことが分かる。
「NHKスペシャル」(九九年一○月一○日放映)の中で科学技術庁の原子力安全局長は、「私どもは原子力安全委員会や助言機関の指示がなければ何の行動もとれない」と言い訳をしている。たしかに臨界事故はわが国ではじめての経験かもしれない。しかし、事故発生後四四分後に、JCOは「臨界事故の可能性あり」と報告している。その後、原研那珂研究所から中性子の異常が報告されるなど、臨界事故を想定して対応を取るきっかけは何回もあったが、ことごとくこれを見送っている。東海村には、原研をはじめ多くの専門家集団があるのだから、電話を一本入れて「臨界事故とはどんな事故なのか、臨界はまだ続いているのか確かめてほしい。どのような対策が必要か」と早い時期に聞けば、以後の展開は大きく変わっていたはずである。
当事者能力に欠けていることもあろうが、同時に普段からいつも頭にある「事故を大きくみせてはいけない」という官僚的ことなかれ主義が、そうした必要最小限の行動も取らせなかったのではないか。その意味では東海村村長の独自判断が光っている。」
「遅れに遅れた初期対応」下「」引用。
「それはともかく、「現場へ急行」を使命と考えるまじめな消防署員は、誘導されるままに事故の起きた転換試験棟に踏み込んだという。建物内のロッカールームには、もっとも被曝線量の多かった大内久さん(35)が作業服を脱いだ状態で横たわっていた。吐しゃ物で近くの床やTシャツは汚れていた。二番目に被曝線量の多かった篠原理人さん(39)はしゃがみこんでおり、もっとも被曝線量の少なかった横川豊さん(54)が付き添っていたという。」
ヘリで搬送。下「」引用。
「しかし、急性放射線症の患者であるため、国立水戸病院にも的確に対応できる専門医はいなかった。そのため千葉市にある科学技術庁放射線医学総合研究所(以下「放医研」という)に、急遽ヘリコプターで患者を搬送することになった。国立水戸病院→水戸ヘリポート→千葉ヘリポート経由で二台の救急車が放医研に到着したのは一五時二五分のことであった。事故発生からすでに五時間が過ぎていた。」
「常陽」製品製造。下「」引用。
「一方「常陽」製品製造の溶液は、濃縮度が高い上にさらにウラン濃度も高く、沈殿槽にける六フッ化ウラン原料溶液や八酸化三ウラン精製溶液では一リットル当たり四五グラムウランに対して、この溶液を取り扱う溶解塔、貯塔などでのウラン濃度は、一リットル当たり三七○グラムである。-略-」
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