磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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荷風さんと「昭和」を歩く

2007年05月12日 | 読書日記など
『荷風さんと「昭和」を歩く』
    半藤一利・著/プレジデント社1994年、1995年2刷

この本を読んで一番こわいと思ったのは「群衆心理」です。江戸っ子・荷風さんは「群衆心理」なんてものには関わりがなかった頑固者、あるいは偏屈だったようです……。



小説ではなく、歴史探偵として書かれている本といっていいかもしれません。


永井荷風さんと夏目漱石は日本という社会を冷静にみておられた方だと思います。下「」引用。

「荷風さんと「昭和」を一緒に歩こうとして、肩をならべたとたんびっくりさせられるのは、開幕早々にして昭和の御代を“乱世”ときめつけていることである。明治維新このかた、欧米の文明をどんどんとり入れ、夏目漱石の言葉を借りれば「あらゆる方面に向って、奥行きを削って、一等国だけの間口を張っちまった」「虚偽である、軽薄である」日本。」

乱世……そうだったと思います。
そして、乱世に導く力の源はこれではないでしょうか?

「群衆心理」という魔力……。下「」引用。

「フランスの社会心理学者ル・ボンは『群衆心理』という名著を、十九世紀末に書いている。かれはいう。
「群衆の最も大きな特色はつぎの点にある。それを構成する個々の人々の種類を問わず、また、かれらの生活様式や職業や性格や知能の異同を問わず、その個人個人が集まって群衆になったというだけで集団精神をもつようになり、そのおかげで、個人でいるのとはまったく別の感じ方や考え方で行動する」」


今も「群衆心理」をうまくつかって、魔法をかける人たちがいますね。
それは右やら左やら……。なかなかえげつないものです。
しかし、魔法にかかっている人たちには理解できないようです。
理解できたら、魔法がとけていますよね。

天皇機関説。天皇をロボットにしようとした軍部。下「」引用。

「半藤 そうですね。そこで実は天皇機関説について調べてみたんです。どうやら考え方は三つに分かれるようです。一つは帝国憲法にいう天皇の絶対的権威を認める。だけどもそれを駆使しないで国家の上に乗った機関であるべきだとする。昭和天皇はこの考え方だったと思います。二つめは天皇が国家を統治することも陸海軍を指揮することも一応は認めるが、できるだけ立憲的に自由主義的に国家を運営しようじゃないかという機関説。この立場で議会や内閣の権限を、天皇大権に対して相対的にどんどん強めようとしたのが美濃部達吉です。三番目は国家主権の絶対性をうんと強めて、最高機関としての天皇の地位を相対化してしまう機関説。北一輝はこれです。国家が必要としないときは天皇を単なるロボットにしてしまうわけです。」

昭和16年11月号『文学界』「英雄を語る」座談会。
文化人も「群衆心理」に染まっている人がいましたね……。下「」引用。

「林房雄 時に米国と戦争をして大丈夫かネ。
小林秀雄 大丈夫さ。
林房雄 実に不思議な事だよ。国際情勢も識りもしないで日本は大丈夫だと言っているからね。何処から生まれているか判らないが皆言っているからね。負けたら皆んな一緒に亡べば宣(よ)い思っている。天皇陛下を戴いて諸共に皆んな滅びて終えば宣いと覚悟している」」

ナチス・ドイツぎらいで、薩長ぎらいの荷風さん、いい意味でも悪い意味でも江戸っ子。下「」引用。

「江戸っ子荷風さんの薩長嫌いの弁のことこどくに、大いに溜飲を下げている。枚挙にいとまのない、その藩閥政府への憎悪と侮蔑と嘲罵のことば。早い話が、荷風が心からなつかしむ江戸文化を、遠慮会釈もなく叩きこわした連中にたいする怒りなのである。」










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