「三国志(吉川英治)より 関羽雲長の名言」
「まだ兵はおろか、兵器も金も一頭の馬すら持たないが、三名でも、ここで義盟を結べば、即座に一つの軍である」
「黄巾の賊はなお討つに易し。廟堂の鼠臣はついにおうも難し、か」
「小人の小人ぶりに、いちいち腹を立てていたひには、とても大事はなせぬぞ。天下、小人で満ちいる時だ」
「世に理のなき妖術などあろうか。武夫たるものが、幻妖の術に怖れて、木の根にすがり、大地を這い、戦意を失うとは、何たるざまぞ」
「すすめや者ども、関羽の行く所には妖気も避けよう」
「こんな不法は蹴とばすべきです。先頃からそれがしもつらつらと思うに、枳棘叢中鸞鳳の栖む所に非ず、と昔からいいます」
「棘や枳のようなトゲの木の中には良い鳳は自然栖んでない、というのです」
「いまは劉皇叔の消息も知れぬが、一朝お行方の知れた時は、関羽は一日とて、曹操のもとに晏如と留まっておるものではござらん」
「千里万里もおろか、お暇も告げず、直ちに、故主のもとへ立ち帰り申すであろう」
「いや、丞相。この髯が、鴉になって故主の屍を探しに飛んで行きましょう」
「これはかつて、劉皇叔から拝領した恩衣です。どんなにボロになっても、朝夕、これを着、これを脱ぐたび、皇叔と親しく会うようで、うれしい気もちを覚えます」
「こういう千里の駿足が手にあれば、一朝、故主玄徳のお行方が知れた場合、一日のあいだに飛んで行けますからそれを独り祝福しているのです」
(曹操より赤兎馬を贈られた時)
「決して、広言ではない証拠をいますぐお見せしましょう。軍中に戯言なしです」
「自分には、玄徳という実在のお人があるから、古人の交わりも、うらやむに足りません。死なば死もともに。生きなば生をともに。管仲、鮑叔ごとき類とひとつに語れませぬ」
「そのときは、肉体を捨て、魂魄と化して、故主のもとにまかり帰るであろう」
「見るが如し。貴公もまた、関羽のために、血の餞別にやってきたか」
「武人一歩を踏む。なんでまた一歩をかえしましょうや。舌をうごかすのさえ、一言金鉄の如しというではありませんか」
「人生の快、ここに尽くる」
「他日、天下に理想を展べる日もあらんことを想えば、百難何かあらんです」
「あわれや、主従の情。……どうしてこの者どもを討つに忍びよう」
(曹操の逃走経路に待ち伏せし生殺与奪を握るが)
「あら無残。早々、馬を乗り代えて、快く勝負を決せられよ」
「なぜかって、犬ころの子に、虎の娘を誰がやるかっ」
「人間五十に達すれば、吉夢もなし、凶夢もなし。ただ清節と死所にたいして、いささか煩悩を余すのみ」
「死をだに顧みぬ大丈夫が、医師の手に弄られるぐらいなことで愕きはせぬ。よいように療治してくれ」
「今日、過って呉の計に墜ち、たとえ一命を失うとも、九泉の下、なお桃園の誓いあり、九天の上、なお関羽の霊はある。汝ら呉の逆賊どもを亡ぼさずにおくべきか」