「三国志(吉川英治)より 諸葛亮孔明の名言」
「管仲、楽毅、いま何処にありや! 自分をおいてはない。不敏といえども、それに比するものは自分以外の誰がいよう」
「北に拠った曹操は、すなわち天の時を得たものであり、南の孫権は、地の利を占めているといえよう。将軍はよろしく人の和をもって、それに鼎足の象をとり、もって、天下三分の大気運を興すべきである」
(有名な「天下三分の計」の一節)
「何かのご縁でしょう。将軍は私にめぐり会うべく諸州をさまよい、私は将軍のお招きを辱のうすべく日まで、田野の盧にかくれて陽の目を待っていたのかも知れません」
「剣印ここにあるを、見ぬか。命にそむく者は斬るぞっ。軍紀をみだす者も同じである!」
「然るときは、わたくし自身、一帆の風にまかせて、呉国へ下り、三寸の不爛の舌をふるって、孫権と曹操を戦わせ、しかも江夏の味方は、そのいずれにも拠らず、一方のやぶれるのを見てから、遠大にしてなお万全な大計の道をおとりになるようにして見せます」
「これ、大計というもので、いたずらに晴の場所で雄弁を誇り、局地的な勝敗をとって功を論じ、社稷百年の計を、坐議立談するが如き軽輩な人では、よく解することはできますまい」
「曹操が百万の勢も孔明からいわしめれば、群がる蟻のようなものです。わが一指をさせば、こなごなに分裂し、わが片手を動かさば、大江の水も逆巻いて、立ちどころに彼が百船も呑み去るであろう」
「鳥獣すら殺手をのばせば、未然に感得して逃げるではありませんか。まして万物の霊長たるものが、至上の生命に対して、なんで無感覚におられましょうや」
「敵を謀るにはよろしく敵の智能の度を測るをもって先とす」
「人です。すべては人にあります。領地を拡大されるごとに、さらにそれを要としましょう」
「一国に二人の主なし。そんな婦人の仁にとらわれてはいけません」
「民が峻厳を求めるとき、為政者が甘言をなすほど愚なる政治はない。仁政と思うは間違いである」
「老将黄忠、ただ簡単に許しては駄目なのです。ああして言葉をもって励まして、初めて責任も一層強く感じ、相手の認識も新たにすると申すものです」
「平時にこういう備えを黙々としてきた者の功を戦時にも忘れてはならない」
「何の、彼ごとき者を生擒るのは嚢の中から物を取りだすも同じことではないか」
「巣なき鳥、家なき人間が、どう生きてゆくか。いわんや、王風にそむいたところで、どれほどの力があろう。振舞えるかぎり振舞うてみよ」
「社稷の為には、多少の功はあろうが、自分は必ず寿命を損ずるであろう。いかにとはいえ、かくまで、殺戮をなしては」
「しかし、戦いというものは、あくまで『人』そのものであって、『兵器』そのものが主ではない」
「初めて、孔明の心が透った。否、王風万里、余すものなくなった。予もうれしく思う」
「心を以て心を読む。さして難しい理由はない。総じて、敵がわれを謀らんとするときは、わが計略は行いやすい。十中八、九はかならずかかるものだ」
「思うに、一人の姜維にすら勝つことができない人間に、何で魏を破ることができようぞ」
「自分が隆中の草蘆を出てからというもの、久しい間、つねに天下の賢才を心のうちでさがしていた。それはいささか悟り得た我が兵法のすべてを、誰かに伝えておきたいと思う希いの上からであった」
「駙馬の如きは、一羽の雁に過ぎない。姜維を得たのは、鳳凰を得たようなものだ。千兵は得易く、一将は得難し。いま雁を追っている暇はない」
「四門を開けよ。開け放て。門々には、水を打ち、篝を明々と焚き、貴人を迎えるごとく清掃せよ」
(有名な「空城の計」の一節)
「生兵法。まさに汝のためにあることばだ。今は何をかいおう」
「ゆるせ、罪は、予の不明にあるものを」
(有名な「泣いて馬謖を斬る」の一節)
「そもそも、智謀ばかりでは戦に勝てない。また、先頃の大戦では、蜀は魏よりも兵力は多かったが、負けてしまった。量るに、智でもなく数でもない」
「うごく敵は計り易いが、全くうごかぬ敵には施す手がない」
「きょうの不平と、その憂き目と思い較べて、いずれがよいと欲しているか」
「口舌を以ていたずらに民を叱るな。むしろ良風を興して風に倣わせよ」
「──悠久。あくまで悠久。人命何ぞ仮すことの短き。理想何ぞ余りに多き」