雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

信州紀行~松本、その三

2008-10-23 | 旅行
 普段、休日の朝といえば、前夜に痛飲した酒が残っていたり、夜更かしで寝不足もいいところな愚体を、ダウン寸前のボクサーさながらの状態でかろうじて起き上がる、というのがもっぱらスタンダードな休日の朝のスタートなのだが、この日(12日)の朝は、久方ぶりの熟睡によって実に健全な寝起きをむかえられた。

 前日はといえばAM5:00出発だったのでAM4:30起き。そこから長時間の運転。そして四六時中、妻と一緒。そんな過酷な一日であり疲れも溜まりまくっているにもかかわらず、これほど快適な朝を迎えられるとは、やはり旅先ゆえの昂揚感からか?はたまた四六時中妻の監視下に置かれているためにあまりやんちゃなことをしていないからであろうか?いずれにせよ、AM6:00にセットした目覚ましが鳴るまで爆睡していた。起きる少し前に妻の無遠慮なドライヤーの音を聞いた覚えもあるが、まだ目覚ましは鳴っていない、と、かまわず眠りにおち入れた。ようするに、それほどまでに疲れていたということだろう。

 さて、そうして爽やかに起きだして、そそくさとお湯を沸かしたりして、ジャスコで買ってきたインスタント味噌汁やパン、果物などで軽い朝食を済ませ、七時にはホテルをチェックアウトした。

 外に出ると、信州の朝は冷え込んでいた。「気温、一ケタだろ?」と長袖シャツに秋物ジャケットを羽織っただけの私はぶるりと身震いしながら車のエンジンをかけ、すぐさま暖房をつける。しかし、暖房が効く間もなく、ほんの二、三分で松本城に到着、すぐそばの100円パーキングに駐車させ、我々はクソ寒い中、松本城を目指す。

 さすがにこんな朝早くなので観光客の姿は見受けられないが、お堀の周りを散歩する人やジョギングする人など地元の方と思われる姿がチラホラある。

 松本城へは以前(五、六年前だったかな?)上高地に行ったとき、ついでとばかりに市内に寄り、その前を通り過ぎたことがあって、今度来るときはちゃんと見てみたいなぁ、中に入らなくてもいいから、と考えていたので散歩がてら、ゆっくりと外から眺めていればいいかな、と、お堀の周りを歩いていたら昨日に引き続き、というか連休いっぱいやっているらしい『そば祭り』の準備やなんやらで正門が開放されている。それとは関係なく、普段でもこんな朝早くから入れるのだろうか?まぁ、いいや。とにかく中に入れるようなので、入っていった。
「中」といってももちろんお城の中ではなくて、その外周広場。そしてその広場ではフェスティバルのテナントがひしめき合って立ち並んでいた。各テナント内では早くも準備に勤しむ人たちがあれやこれやと動き回っていた。
 
 そんな人たちを尻目に、とにかく松本城をカメラに収めていたら、あるテナントからそば職人風の人たちがぞろぞろと(総勢二十人くらい)がお城をバックに並びだした。その光景を「ポカーン」と見ていた私に、その軍団のおっさんが、「おおー、すいませーん。そこの人、カメラお願いできますかー!」と叫んできた。えっ、オレ?
 ふと、隣にはにこやかにデジカメを差し出すオネェサン。あ、あぁ、いいですよー。てへ。と、はにかみながらデジカメを受け取ると、「あっ、じゃあ、これも」「あー、これもお願いしまーす」「それじゃあ、これも」そんな調子で、あれよあれよという間に六機のデジカメを手渡される・・・。あ、あぁ、ハイ。突然のことにアタフタとしている私を見て、屈託の無い笑い声をあげる軍団。
 とにかく六機のうち五機を妻に手渡し、一つずつ片付けてゆく。

「ハーイ、撮りまーす!」を六回繰り返す。

 ちなみに私は観光地へ行くと必ずと言っていいほどカメラを頼まれる。妻が言うには、私はどうやら頼みやすい雰囲気を持っているらしい・・・。なんだ、それ?

 ともかく、全てを撮り終わり、軍団の人たち数人にやたらテンション高めなお礼を述べられ、終いには「おにぃさん、ここの蕎麦食べにきてよ。ご馳走するから」「おおい、みんな、顔覚えとけ、顔」とか言っておっさんたちに見つめられる始末。いやはや・・・なんとも・・・。

 なんといっていいのか、まぁ、よくわからないままその場を後にしようとすると、中でもひときわイカツイ顔をしたおっさんが「これ持ってきな、これ」と言ってなにやらパンフレットのようなものにスタンプを三つ押したものをくれた。

 そんな手厚いムードに見送られながら私たちは歩き出し、しばらく行ったところで「ふぃーっ」と一息ついた。 

 何気に貰ったパンフレットに目を通す。てっきり、このフェスティバルのパンフだと思っていたのだが、よく見ると「茨城県」の県民便りであった。どうやらあの軍団は茨城蕎麦軍団であるようだ。

 無料で食える蕎麦は魅力的だが、如何せん私たちはもうすぐ松本を発ち、次の目的地、『上田市古安曽』に向かうので、残念ながら茨城蕎麦軍団とは二度と会うことはないのであった。

 そういったわけで、私たち夫婦はせっかくの茨城蕎麦を食い損ない、身体は冷え込んでいたが、気持ちはなんだかあったかく、次の目的地へと車を走らせたのであった。


 ・・・つづく・・・
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