雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

夕子ちゃんの近道/長嶋 有

2008-12-14 | 小説
≪アンティーク店フラココ屋の二階で居候暮らしをはじめた「僕」。どうにも捉えどころのない彼と、のんきでしたたかな店長、大家の八木さん、その二人の孫娘、朝子ちゃんと夕子ちゃん、初代居候の瑞枝さん、相撲好きのフランソワーズら、フラココ屋周辺の面々。その繋がりは、淡彩をかさねるようにして、しだいに深まってゆく。だがやがて、めいめいがめいめい勝手に旅立つときがやってきて―。誰もが必要とする人生の一休みの時間。7つの連作短篇。≫

 読み始めて、最初に思ったのが「つげ義春みたいだなぁ」でした。それはたぶん、古物商とか狭い六畳間とか大家と店子の関係だとか、そういったディティールが「いかにも!」な感じだからだろうけども、でもそれよりも、作品全体に漂う雰囲気とか主人公の不透明さとか、まわりの人々の微妙に一般ズレしている感覚だとかが「つげ義春みたいだなぁ」って。そしてなにより漫画好きの作者(『ジャージの二人』ではつげ義春のことにも言及していた)ならではのオマージュなのであろうな、と。

 だから、というか、なんというか?故に?自分的にはとても面白く心に沁み入る一冊でした。

 こういう、なにげない仲間が集まり、なにげない生活が営まれ、そしてそのときがくれば「スッ」と離れていくけれども、またなにげなく集まれる。肩ひじ張らずになにげなく送れる仲間たちとの日々、そういうのが好きです。
コメント
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