2020@TOKYO

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■アメリカで、iPhoneいよいよ発売!

2007-07-02 | ■エッセイ
  
  アメリカで、ついにiPhoneが発売された。携帯電話にiPod、さらにはPCの機能までが搭載されているそうだ。各局のニュースは、販売店の前に何日も並び続けている人や、順番待ちの席を400ドルで譲ってもらった人の話などを紹介していた。本体が6万円もするのに、すごいフィーバーぶりだ。

  iPhoneの日本への上陸はまだ先のようだが、最近、iPodの普及が全世界で1億台をこえたと聞いて、遅ればせながら、アップルストアに赴いた。本体からイヤフォンまで、すべてが真っ白!ON/OFFのスイッチはどこにもなく、ボタンを押すとか、ダイアルをひねるとかいった動作はいっさいない。選曲は、本体中央にある環状のトラックを指でなぞるだけである。もちろんプレイやストップは「押す」という作業が加わるが、これも押すというよりは、ほとんど触っているだけに等しい。

  何度が使ってみて思ったのだが、iPodの感触には独特なものがある。もしかすると、iPod成功の一つの要因は、この感触にあるのかもしれない。沢山の曲が収納できること、バッテリーが長時間の使用に耐えることなど、機能の面での優位性も確かにあるのだろう。しかし、iPodが圧倒的に他社の追随を許さない根底には、人間の心の奥底に潜む感性を刺激する触感があるような気がする。

  表面が純白、背面は金属の光を放ち、その佇まいは近未来的である。電子機器であるにもかかわらず、その体そのものが呼吸しているように見える。透明感あふれる空間に置かれた植物のようだ。iPodを動かすのは電気ではなく、水と光と酸素ではないかと思ってしまう。iPodの光合成!

  それにしても、「携帯型オーディオプレーヤー」というものは、日本が先駆だったはず。ソニーのウォークマンが世に出たのは1979年のことで、今のiPodと比べると、その体は弁当箱のよう。いかにもバネが利いている感じのスィッチが備わっていて、今思えば、何とも重厚長大という感じ。音量は、右と左別々に調整することができた。イヤフォンを片方の耳に入れて聞く携帯型のラジオから、突然イヤフォンを両耳に入れて、右と左から異なる音が聞こえる機器が登場したのだ。初代のウォークマンの背面には、大きなロゴでSTEREOと記されていた記憶がある。

  当時、何より驚いたのは、同時に二人で聞くことができるように、ヘッドフォンの端子が2つ付いていたこと。もっと驚いたのは、HOTLINE機能というものがあって、オレンジ色のボタン(このボタンは異様に目立った)を押すと、本体に内蔵されたマイクで、お互いの話し声がヘッドフォンから聞こえたこと。その時、音楽の音量が少し下がる仕掛けになっていた。

  目の前にあるiPodを見ながら、ふと私は、あのオレンジ色のボタン=HOTLINEのことを思った。デジタル機器はどんどん小さくなり、ますます美しくなり、便利にもなった。しかし、イヤフォンで耳を塞いでしまえば一人の世界。街中には、白いイヤフォンで耳を塞いだ「個」が行き交っている。音楽を中断してまで会話を優先する機能を付けた初代ウォークマンの感性、それは日本人独自のものなのだろうか?
コメント
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