2020@TOKYO

音楽、文学、映画、演劇、絵画、写真…、さまざまなアートシーンを駆けめぐるブログ。

ポー川のひかり

2013-01-22 | ■映画

  amazonのKindle FireHDを購入したので電子版の書籍をどんどんダウンロードして行き帰りの列車内で楽しんでいる。青年のころに読んだ本、読もうと思ってそのままになっていた本、新しく見つけた本などを手当たりしだいにダウンロードする。数百冊の本を一度に抱えて歩くなど到底不可能なことだが、電子書籍ならそれが可能だ。

  今のうちに出来るだけ沢山の本を集めて仕事を引退した後で、どこかに隠遁して少しずつ読もうと企んでいたら、思いがけなく「ポー川のひかり」という映画に出会った。「木靴の樹」のエルマンノ・オモリが監督した作品で、ミステリー・タッチの冒頭場面からどんどん引き込まれてしまうのだが、強烈な印象を残すひとつの言葉に出会った。

  『世界中の本よりも友だちと飲むコーヒーの方が良い』。古都ボローニャを舞台に、智の象徴である分厚い書物に次々に釘を撃ち込んでいく衝撃的なオープニング・シーン、物語後半に吐露される主人公の一言で、僕らは“智”の有りようを考えて立ち止まる。

  『世界中の本よりも友だちと飲むコーヒーの方が良い』。

  
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ビッグ・リボウスキ コーエン兄弟

2012-05-15 | ■映画
  コーエン兄弟の「ビッグ・リボウスキ」がブルーレイで出たので早速購入しました。コーエンのような映像のタッチは、やはりブルーレイで見ると色彩感やディティールへのこだわりが明確になり、楽しさが倍増します。

  それにしても、同姓の億万長者リボウスキに間違えられたジェフ・ブリッジスが散々な目に遭う喜劇は何度見ても面白く、コーエン作品の中でも後味のよい部類に入るものです。劇中に散りばめられた無益な戦争への鋭い視点、ベトナム、イラクといったテーマが人間の日常に潜む不条理とダブルイメージされていきます。


ビッグ・リボウスキ [Blu-ray]
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ジェネオン・ユニバーサル
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ナッシュビル ロバート・アルトマン

2012-05-05 | ■映画
  30年位前、日本での封切り時に見に行ったものの、最初から最後まで寝ていた記憶しかない映画だったのですが、改めてDVDで見直してその素晴らしさに唖然としました。

  先月の半ばに仕事でナッシュビルに滞在していたことで、それぞれのシーンへの思い入れも一層深くなったのかもしれません。それにしても、アルトマンの群衆処理はいつもの事ながら実に見事です。大統領選を絡ませつつ、アメリカ南部の音楽の街ナッシュビルの5日間を重層的に描いたこの映画は、様々な思い、境遇の人々の関係性を編み上げるうちにアメリカが抱える巨大な問題を明らかにしていきます。いわゆるハリウッドの大スターは登場しませんが、いぶし銀のような演技力をもった名優たちの演技にも圧倒されます。

  この種のDVDソフトは、リリース後すぐに廃版になってしまう傾向があるので、まずは入手することをお勧めします。

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パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
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ツーリスト アンジェリーナ・ジョリー+ジョニー・デップ

2012-02-15 | ■映画

  「ソルト」に引き続き、アンジェリーナ・ジョリーの「ツーリスト」を見ました。共演はジョニー・デップ。

  舞台はパリの街角にはじまり、リヨン駅発の列車でヴェネツィアに移動、全編にヨーロッパの空気感が横溢している映画です。特にヴェネツィアの高級ホテル DANIELIは以前仕事で宿泊したことがあり、懐かしさもひとしおでした(ちなみに、映画に登場するのは超豪華スイートルームで、僕が泊ったのは普通の部屋です)。

  途中からストーリーの結末が読めてしまうという底の浅さはあるものの、美しいヴェネツィアの風景と美女+美男の御姿を堪能するだけでも見る価値は十分にあると思います。
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SOLT ソルト アンジェリーナ・ジョリー

2012-02-13 | ■映画

  週末にスカッとした映画を見ようと思い立ちTSUTAYAに急行!店頭で目立ったブルーレイ・ディスクを4枚ほど借りてきました。

  そもそもは、『ジジイをバカにするな!』がテーマの「レッズ」(ブルース・ウィルス、ジョン・マルコヴィッチほか)が第一希望で、あとは4枚1000円の条件を満たすためのオマケ。オマケは「ソルト」(アンジー)、「ツーリスト」(アンジー+ジョニー・デップ)、「ナイト&デイ」(トム・クルーズ+キャメロン・ディアス)。

  このうち、「レッズ」と「ソルト」を土・日で見たのですが、「ソルト」が意外に面白かった。amazonなどのレビューを見ると、あまりの荒唐無稽さに呆れかえっているヒトが多いようですが、ここまでデタラメが極まると、それはそれで映像作品としての存在感があると思います。どんでん返しにつぐどんでん返し、それがあり得ない話の展開とはいえ、私たちが暮らしている現実の方があり得ないことだらけの現代では、むしろ映画の中の話の方が現実味を帯びてくる。霞が関に潜入したソルトに一気に問題を解決してもらいたいとつくづく思いました。
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■バッド・ルーテナント ヴェルナー・ヘルツォーク

2010-04-09 | ■映画
  
  少し旧聞に属してしまいますが、ヴェルナー・ヘルツォークの新作「バッド・ルーテナント」を見ました(恵比寿ガーデン・シネマ)。

  ヘルツォークは、「フィッツカラルド」で圧倒されて以来のファンですが、今回もヤケドシしそうなほど熱い映像を見せつけられます。

  ニコラス・ケイジ扮する警察官、これが押収した薬物をこっそりポケットに入れてしまうほどの麻薬常習者、しかも恋人は金持ち相手の娼婦というボロボロの人生なのですが、もう本当に好演というか何というか、ニコラス・ケイジはプロ根性丸出しでバッド・ルーテナントを演じきります。

  物語の舞台は、ハリケーン・カトリーナの後遺症が残るニューオリンズで、映画全体に独自の湿度感が溢れています。ドイツの巨匠はこの映画の最後の最後で、超ハリウッド的な手法を用いて、ニコラス・ケイジをボロボロの人生から救い出そうとします。「魚も夢を見るのか?」ラストのセリフが余韻を深める傑作映画です。

  

  
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■アバター

2010-03-05 | ■映画
  話題の映画「アバター」を見ました。

  圧倒的な制作資源を投入した映画で、見終わったあとに多少の疲労感が残りました。

  (たぶん)アメリカの企業が、ある星で採れる高価な鉱石を求めて他の星を侵略するという話がベースになっていますが、壮絶な戦闘によって白黒がつけられるという物語の結末に向かって3Dの大スペクタクルが展開します。

  主人公の試練、苦悩、達成、さらに恋愛があるのは何時ものことですが、その「気づき」に向かう過程は、今まで見たことがないようなとてつもない映像の力と美しさが示されます。

  この映画に、アメリカが過去に日本やベトナム、イラクやアフガニスタンで犯した戦争責任への反省と贖罪の気持ちを見ることも可能ではありますが、最後の戦闘シーンがあまりにハリウッド的であり過ぎて、ガムを噛みながら日本人やベトナム人を虐殺した「アメリカ」のスポーツとしての戦争という構図が浮かんできました。敵も味方も、兵士は死に、戦争を仕掛けたアメリカ人の企業家は生きているところもアメリカそのものでした。

  「アバター」の戦闘シーンで虐殺されるのは敵も味方も常に無名の人であり、主人公に準ずる存在の死は英雄扱いされます。もちろん映画ですからそれは当然のことですが、私たちにはここで描かれた無名の死に思いをいたす想像力が必要だと思いました。戦争とは常におびただしい無名の死の集積であり、その累々たる死体のひとつひとつに、今私たちが生きているのと同じような人生があったのだということ、それがある日、不条理なままに無理やり死に駆り立てられる(死ぬことを強要される)、これが戦争であるということ、それを思うことで「アバター」の過剰な戦闘シーンに意味を持たせることができると思いました。




  

  
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■セントアンナの奇跡

2009-08-21 | ■映画
  スパイク・リーの最新作、「セントアンナの奇跡」を見ました。

  見終わってから7時間以上が経過しているというのに、心の底に重い課題を担ってしまったような感覚があります。

  とはいえ、それは、ある種の心地よい課題です。

  戦争をテーマにした映画にありがちなステレオ・タイプの人物が多数登場するのですが、善玉とか悪玉とかいう区別で済ませるのはなかなかむずかしい。

  まだ、この映画を見ていないひとのために、ラスト・シーンを書くことは遠慮しますが、人種差別、一神教信仰、戦争のバカらしさなどのテーマが重層的に絡み合って、ドラマが形作られます。

  そのような事々をまとめて言えば、天国と地獄。映像的なコントラストとしては、もっとも描きやすい情景だと思いますが、スパイク・リーは、それを単純な二元論として提示しているわけではありません。

  人間の実在の危うさと信仰の深さ、日本人である私にはなかなか厄介なテーマであります。冒頭に書いた心の底に担った重い課題、しかし、心地よい課題…。西洋音楽を考える上でいつもブチ当たるテーマに、久々に再会したような気がしています。

  

  
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