2020@TOKYO

音楽、文学、映画、演劇、絵画、写真…、さまざまなアートシーンを駆けめぐるブログ。

日本フィルハーモニー交響楽団(5月18日、サントリーホール)

2012-05-22 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)
  上原彩子(ピアノ)、アレキサンドル・ラザレフ(指揮)で日本フィルの定期演奏会。

  前半に演奏されたラフマニノフの協奏曲第3番は、わが国のピアノ演奏史に残る大名演。とてつもないテクニックでオケとわたり合う​上原、ラザレフがどれほど煽り立てても、ものの見事にソリストとしての強固でゆるぎない音楽を演奏しつづける。ピアノという楽器​から鋼(はがね)の音が聞こえたのは久しぶりだ。

  後半はチャイコフスキーの交響曲第3番。ひたすら温かく、明るく、楽しい演奏だった。それは軽いという意味ではなく、灰色に凍る北国の空に束の間光がさして、辺りの温度が少しずつ上がっていくような、そのような温かさ、明るさ。私たちは時を惜しんで陽だまりの中で踊るのだが、心の中では、いつかこの空が再び曇ってしまうことを知っている。日本フィルの豊饒な音色が、そんな景色を見事に描き出していた。
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ゲザ・ホッス リサイタル(5月17日、浜離宮朝日ホール)

2012-05-22 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)

  2001年、別府のアルゲリッチ音楽祭ではじめてゲザ・ホッスを聴いた。ゲザはまだ十代だったが、天才バイオリニストとしての存在感は絶大だった。あれから約10年、フォーレ、ドビュッシー、サン=​サーンスといったフランスものを東京で聴いた。

  ソナタの各楽章で客席から拍手が起きたのは、聴衆が音楽を知らないからではなく、楽章の切れ目で思わず手をたたきたくなるほど魅力的な演奏だったからだ。それほど個性的で独創的な解釈だった。ポゴレリッチがショパンを縦横に分析=分解していくように、ゲザは大作曲家の有名作品を独自の世界観で読み解いていく。常識的な句読点に気を配らずに、自らの言語、フレーズで演奏する。フランス音楽のエスプリなどおかまいなく、いっさいの固定観念から解き放たれた新しい音楽が生まれてくる。聴きなれた音楽が、現代の尖端を走る演奏家によって全く新しい衣装をまとうプロセスに立ち会うのは、じつに楽しいものだ。類まれなるテクニックに、演奏者自身が耽溺しているように見えた瞬間もあったが、それやこれやを全て呑みこんでしまう巨大な音楽の器が、彼には備わっているように見えた。

  アンコールに演奏されたグルックの「メロディ」で、はじめてシンプルに旋律を辿ったゲザは、当夜、もっとも深いpp=ピアニッシモを奏でた。その幽玄な響きの中に、かつての天才少年が大人の演奏家へ脱皮していく羽音を聴くようで、胸が熱くなった。


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日本人作曲家の作品 初演音源CD化 (日本経済新聞 2012年3月3日 朝刊 文化欄)

2012-03-03 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)
  本日の日本経済新聞・朝刊・文化欄に「戦後活躍 日本人作曲家の作品 発掘・保存機運高まる 時代に応じ再演/初演音源CD化」という記事が大きな扱いで掲載されています。

  その中にナクソス・ジャパンのCDが登場し、私の名前も出てきます!大新聞に名前が載るのは2度目、最初は20年くらい前、学研で発掘音源のCD化を進めていた際に起きた著作隣接権問題の、言わば“被告”としての扱いでした。朝日新聞・社会面への大々的な実名掲載は、当時、親戚から罪人と誤解されるなど大変でしたが、今回の日経の記事はリベンジ、凱旋できた気分です。

  私の祖父は白柳秀湖という歴史家ですが、孫の私もそれに倣い、いつの間にか「歴史的音源」の発掘が生業となってしまいました。この3月からは、これら貴重な音源のハイレゾ化(現在の技術で望みうる最高の音質での保存)にも着手しています。4~5月には全貌が明らかになると思います。どうぞご期待ください。
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NHK 現代の音楽 アーカイブシリーズ 諸井誠 先生 訪問

2012-02-16 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)
  昨日は作曲家の諸井誠先生を鎌倉のご自宅に訪ねました。昨年の夏以来リリースをつづけているナクソスのNHK現代の音楽アーカイブシリーズ、その10枚目となる「林光」のライナーノートに、諸井先生から追悼の辞をいただいたお礼を兼ねての訪問です。昨年来、諸井先生宅には何度もお邪魔し、その度に歴史の証言ともいえる貴重なお話を伺っています。話の内容があまりにも過激で、容易に公表できるようなものではないのが残念ですが、先生は涼しい顔で「僕の話は発禁になるようなのが多いんですよ!」と呵呵大笑されます!戦後、日本の作曲家たちが何を考え、どのように行動してきたか?僕自身は発禁覚悟で次代に伝えるべきではなかと考えています。

  西欧にもその例があるように、わずか数年の間にこれだけのキラ星のごとき作曲家たちがこの国に誕生し、互いに影響を与えあいながら生きていることを思うと、彼らをこの世に遣わした創造の神の存在を信じたくなります。
1929年生:黛敏郎、湯浅譲二、矢代秋雄、間宮芳生、松村禎三…、1930年生:諸井誠、武満徹、本間雅夫、三木稔、下山一二三、廣瀬量平、福島和夫…、1931年生:林光、外山雄三、松平頼暁…、1933年生:一柳慧、三善晃………。
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ムラマツ フルート

2012-02-10 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)

  金管楽器のメンテナンスが済んだところで、一気に木管楽器へ。ブ​ラスが相棒ならフルートは伴侶というイメージ。20代のころ垂涎​の的だったムラマツです。
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HOLTON トランペット

2012-02-08 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)

  レスポールのメンテナンスが完了したのはすでに報告のとおり。弦楽器が一段落したところで、管楽器にも油を…。ピストンオイルとスライドグリスを久々に注入しました。HOLTONのトランペット、手前の小型は20年以上前にミュンヘンの楽器店で嬉々として購入した後に、日本製と判明し落胆しきりだったポケット・トランペット。共に年来の相棒です。
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ギブソン レスポール

2012-02-06 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)

  ようやく先週の土曜日にギブソン・レスポールのメンテナンスが完了しました。第3弦のペグ(糸巻き)を自力で交換するというオマケつきでしたが、名器はついに蘇りました。

  じつはこれ、長男からの借り物。僕らの学生時代は垂涎の的だった楽器ですが、彼らは事もなげに所有しているのです。
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kuniko plays reich 加藤訓子 スティーブ・ライヒ

2012-01-26 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)
  
  世界的なオーディオ・メーカー、LINNからリリースされているアルバム、kuniko plays reich のライブを聴きました(2012年1月23日、ムジカーザ)。

  このCDには、打楽器奏者の加藤訓子が自身でアレンジをほどこし、スティーブ・ライヒ本人のお墨付きを得たというプログラムが収録されていますが、SACDでリリースされているほかに、LINNが運営するハイレゾサイトでは192khz/24bitという最高音質の配信が行われています。

  この日は富士通テンのスピーカー、イクリプスの新製品発表会におけるライブでしたが、高性能スピーカーから流れるプリレコーディングされた音と加藤訓子の生音によるElectric Counterpoint、Six Mrimbasといった曲の演奏を間近に見ることができたのは収穫でした。

  ライヒの音楽は能動的に「聴く」というよりは、受動的に「包まれる」という感覚があるのですが、この日も8本のスピーカーに囲まれつつ、プリレコーディングされた音と対話しながら進行する加藤の演奏は、卓抜なタイム感覚と鮮やかな色彩感に満ちていました。ミニマル・ミュージックのなかに浮かび上がるアフリカやインドネシア(ジャワ)あたりの土俗的なリズムの中に、最先端の音響技術の向こうに立ち現れたヒトの根源であるピテカントロプスの幻影を見るようで、それは不思議な官能にあふれた時間でした。


  
  

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ネットワーク・オーディオ=高音質配信、ハイレゾ配信-1

2012-01-19 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)

  SACDやxrcd、SHM-CD、HQCD、Blu-specCD…など、いわゆる高音質CDのことは、このブログに何度か書いてきました。いずれも、何とかして良い音をリスナーに届けようという技術者たちの苦心の結晶で、それぞれ成果が上がっていると思います。

  しかし、CD製造における意欲的なチャレンジとは別次元の、今まで経験したことのない新たな世界が拓かれつつあります。それがネットワーク・オーディオで、昨年末にこれを導入した自分自身、驚異的な高音質の世界に直面し心底驚きました。

  ソニーとフィリップスが共同で開発したCDは、厳密な規格を遵守することによって世界標準となりました。その一つが44.1kHz/16bitという規格。アナログ信号をデジタル化する際の時間の区切りがサンプリング周波数で、CDは44.1kHzに規定されています。ちなみに1kHzは1秒間を1,000に区切るという意味なので、この数値が多ければ多いほど、より細かく時間軸を区切ることができます。また、bitは信号の強さを段階的な値で示すもので、bitが増えるほど区切る段階も増えていきます。

  録音時のフォーマットが96kHz/24bitであったとしても、CDになるときは44.1kHz/16bitに圧縮されるので、元の音の解像度やダイナミックレンジは減少することになります。ところが、ネットワーク・オーディオにはデータを配信する上での制約がないため、96kHz/24bitの音がそのまま送られてきます。16bitと24bitは数字の見え方上、あまり差が無いように感じますが、16bitは2の16乗=65,536(段階)、24bitは2の24乗ですから16,777,216(段階)ということになり、圧倒的な差が生じます。これが、音の解像度やダイナミックレンジの改善に大きな影響を与えることになります。

  数値上のことはともあれ、実際にアメリカのハイレゾ配信サイト、HDtracksから立て続けにソフトを購入してみました。円高の恩恵もあり、1アルバムは約1,400円くらいです。アナログ・マスターから24bitでリマスタリングしたもの、最初からハイスペックでレコーディングしたものなど多種多様な買い物でした。

  それらを列挙すると以下のようなものです。①リンダ・ロンシュタット、②カーペンターズ、③ビヨーク、④ポール・サイモン、⑤MJQ、⑥ビル・エバンス、⑦コルトレーン、⑧渡辺香津美、⑨ジョニー・ミッチェル、⑩アバド、⑪ブーレーズ、⑫ムター、⑬ソニー・ロリンズ、⑭ブエナビスタ・ソシャルクラブ、⑮オールソップ、⑯オスカー・ピーターソン、⑰シュタルケル、⑱グレン・グールド、⑲ラン・ラン、⑳クライバー、。21ネトレプコ(つづく)。

  

  

  
  


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リゲティ:ロンターノ、ピアノ協奏曲 都響定期演奏会(2012年1月17日)

2012-01-18 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)

1月17日、一柳慧プロデュース「日本管弦楽の名曲とその源流ー13」を聴きました(東京文化会館大ホール)。プログラムは北爪道夫:地の風景、クラリネット協奏曲、リゲティ:ロンターノ、ピアノ協奏曲。演奏は三界秀実(クラリネット)、岡田博美(ピアノ)、高崎健(指揮)東京都交響楽団。

学生時代、最低月に2回は通っていた東京文化会館の5階席に40年ぶりに上がりました。観客も私と同じか少し上くらいの老人が多く、約半世紀の間、現代音楽を聴き続けている風情の聴衆が目立ちました。当夜の白眉は何と言っても2つ並んだリゲティの大作。

「ロンターノ」の何という美しい響き!混沌としたトーンクラスター(音塊)が、凪いだ湖面のように透き通った平面にユニゾンで止揚されていく瞬間には、思わず息をのみました。この半世紀の間に、日本のオーケストラが到達した高みを実感すると同時に、今日でもまったく色あせないリゲティの作品の力に驚きました。

「ピアノ協奏曲」の演奏が始まる前に、「今まで4回演奏したが、上手く出来たためしがない。もし、途中で演奏が止まってしまったら最初からやり直します。演奏が上手くいかなかったら、それは僕らのせいではなく、楽曲が難しすぎるのだ…」というコメントをユーモア交じりにアナウンスした指揮者の高関健。しかし、その言葉は杞憂に終わりました。ピアニスト岡田博美のずば抜けた技巧と感性、弦、管、打楽器群の確かな技術と音楽性、高崎健の正確無比な棒さばき、それらが、ともそれば必死に音符を追いかけるだけで終わりそうなこの曲の演奏を、見事な物語に昇華させてくれました。精密な分析と瑞々しい感性が同居している短編小説を読むような味わい、日本人の演奏家がこれほど高いレベルの演奏を聴かせるようになるとは、70年代には想像もつきませんでした。

あの頃の現代音楽は今や古典の部類に入りますが、確実に「現代の演奏」というものが存在することを改めて実感した夜でした。誘ってくれた田中先輩、ありがとうございました。
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平成23年度文化庁芸術祭参加作品 日本作曲家選輯 東京藝術大学編

2011-09-08 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)

  東京藝術大学とナクソス・ジャパンのコラボレーション企画、“日本作曲家選輯・東京藝術大学編”橋本國彦:交響曲第2番、三つの和讃、感傷的諧謔を収録した新録音CDが、平成23年度(第66回)文化庁芸術祭参加作品に承認されました。戦前、戦中、戦後という巨大な歴史のうねりの中で、数奇な運命に翻弄されながら、孤高の作曲姿勢を貫き、後に母校藝大で黛敏郎、矢代秋雄などの優れた作曲家を育てた橋本國彦。演奏、録音、解説、デザイン、CDにかかわる全てを東京藝術大学の音楽学部と美術学部の教授陣が担当しました。新憲法発布の日、平和な時代の到来を高らかに謳い上げた「交響曲第2番」、親鸞が遺した言葉を道しるべに、魂の安寧を祈る「三つの和讃」、共に世界初録音です。11月9日リリース予定、皆さん応援よろしくお願いいたします!
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二期会 トゥーランドット

2011-07-11 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)

  プッチーニのトゥーランドット、ディミトローヴァやマルトンで聴​いていたころ、日本人のキャストでは100年経っても、この作品​は上演できないだろうと思っていました。しかし、7月6日の二期​会公演はたいへん完成度の高いもので、初めて日本人のオペラを見​て身体が震えるほどの感動を味わいました。とりわけ、横山惠子、​日比野幸(ソプラノ)、福井敬(テノール)、粟國淳(演出)には​心からの拍手を送りたいと思います。ここ10数年来、二期会の公​演はほとんど見てきましたが、6日のトゥーランドットは間違いな​く私にとっての最高峰であり、日本オペラ界の進化を証明するもの​でした。

  最近はFace Bookばかりになってしまったので、とりあえずFBの投稿を貼りつけてみました。やはり、ブログの場合は過去の流れからしても、もっときちんと書くべきなのでしょう。改めて書きます。
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中央ヨーロッパ音楽 満漢全席

2010-12-15 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)

  昨夜は友人の誘いで久々に都響の定期演奏会に行った。チェコの指揮者、ヤクブ・フルシャのプリンシパル・ゲスト・コンダクター就任披露公演ということで、プログラムは以下のように指揮者の前向きな意欲が窺われる内容。

  ドヴォルジャーク:序曲「フス教徒」 作品67
  スメタナ:交響詩「ブラニーク」
  マルティヌー:リディツェへの追悼
  ヤナーチェク:グラゴル・ミサ

  これだけ立て続けに中央ヨーロッパものを聞かされると、何だか喉が渇いてしまい、終演後には友人といささか高揚しながらアークヒルズの広場をまっすぐに駆け抜け、向かいの店に駆け込むとワインと生ハムでひと息ついた。

  それにしても都響の演奏は良かった。木管・金管も表情豊かな好演ながら、何といっても中低域の弦のピッチが素晴らしく合っていて、スラブの作曲家特有のうねるような横揺れの音楽を十分に楽しむことができた。ただ、いわゆるスラブ特有の土臭さとは一味ちがう演奏で、これはオーケストラの所為というよりは、指揮者の解釈によるものだと思う。

  日本のオーケストラの演奏会がこんなに楽しいなら、もっと頻繁に足を運びたいとつくづく思った。

  演奏家は以下のとおり。(12月14日 都響 第708回定期演奏会 Bシリーズ サントリーホール)

  指揮:ヤクブ・フルシャ
  ソプラノ:アドリアナ・コフートコヴァー
  アルト:ヤナ・シーコロヴァー
  テノール:リハルト・サメク
  バリトン:マルティン・グーバル
  合唱:晋友会合唱団


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20世紀を語る音楽

2010-12-14 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)
  ぜったいに有るはずがないと思いながら、昨日たまプラーザの有隣堂に行ったら、その本が棚に並んでいた!1,2巻あわせて8千円はちょっと高いと思いつつ、迷わず買ってしまった。

  その本の書評が朝日新聞に載ったのは一昨日の日曜日、タイトルは「時代の熱と鼓動伝える壮大な物語」である。書評の書き出しはこんな感じだ。

  『いわゆる西洋クラシック音楽の世界で「現代音楽」というと、調性から脱した新ウィーン楽派以降の音楽をなんとなくそう呼んできたわけだが、しかし、それは百年も前の話なのであって、いくらなんでも「現代」ではないだろう。一方で新ウィーン楽派と同時代ないしそれ以降も調性のある音楽は書かれ続け、では、それらは「現代音楽」ではないのかといわれると、違うともいいにくい。こうした曖昧(あいまい)さの原因は、二十世紀音楽の概念が全く明確でなかったからである。その意味で、西欧の二十世紀音楽の姿を、トータルな形で、明瞭な輪郭とともに描き出した本書は、まずは画期的といってよいだろう。』

  この本のタイトルは「20世紀を語る音楽」、著者はアレックス・ロスでみすず書房から出版されている。まだ読み始めたばかりなのだが、上下2巻に分けられた大部の書き出しはじつにかっこいい。書評子の言葉を借りると、それはこんな風である。

  『大量の資料を駆使して編まれた「物語」――一九〇六年五月一六日、リヒャルト・シュトラウスの指揮する《サロメ》を聴くべく、マーラー夫妻、ベルクら六人の弟子を引き連れたシェーンベルク、アドルフ・ヒトラー、そしてトーマス・マンの小説『ファウスト博士』の主人公、アードリアン・レーヴァーキューンといった人々が、グラーツの街で一堂に会する場面からはじまる壮大な「物語」は、二十世紀という時代の熱と鼓動をいきいきと伝えて魅力的だ。』

 
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■HMV渋谷店 閉店

2010-08-23 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)
(C)時事通信

  昨日、HMV渋谷店が20年の歴史に幕を下ろしました。最後の姿を目に焼き付けるために、午後9時ごろ店に行きました。

  センター街寄りの階段を出口専用とし、入口は井の頭通り側に限定、前日につづきこの日も入場制限が発令されたそうです。

  店の中は閉店を惜しむ若者たちでごった返し、各階で開催されているイベントには立錐の余地も無い人の波が押し寄せています。この人波は、店の正面玄関での鏡割りを合図に、シャッターが静かに閉じられるまで、途絶えることはありませんでした。

 
  

  
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