2020@TOKYO

音楽、文学、映画、演劇、絵画、写真…、さまざまなアートシーンを駆けめぐるブログ。

kuniko plays reich 加藤訓子 スティーブ・ライヒ

2012-01-26 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)
  
  世界的なオーディオ・メーカー、LINNからリリースされているアルバム、kuniko plays reich のライブを聴きました(2012年1月23日、ムジカーザ)。

  このCDには、打楽器奏者の加藤訓子が自身でアレンジをほどこし、スティーブ・ライヒ本人のお墨付きを得たというプログラムが収録されていますが、SACDでリリースされているほかに、LINNが運営するハイレゾサイトでは192khz/24bitという最高音質の配信が行われています。

  この日は富士通テンのスピーカー、イクリプスの新製品発表会におけるライブでしたが、高性能スピーカーから流れるプリレコーディングされた音と加藤訓子の生音によるElectric Counterpoint、Six Mrimbasといった曲の演奏を間近に見ることができたのは収穫でした。

  ライヒの音楽は能動的に「聴く」というよりは、受動的に「包まれる」という感覚があるのですが、この日も8本のスピーカーに囲まれつつ、プリレコーディングされた音と対話しながら進行する加藤の演奏は、卓抜なタイム感覚と鮮やかな色彩感に満ちていました。ミニマル・ミュージックのなかに浮かび上がるアフリカやインドネシア(ジャワ)あたりの土俗的なリズムの中に、最先端の音響技術の向こうに立ち現れたヒトの根源であるピテカントロプスの幻影を見るようで、それは不思議な官能にあふれた時間でした。


  
  

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ネットワーク・オーディオ=高音質配信、ハイレゾ配信-1

2012-01-19 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)

  SACDやxrcd、SHM-CD、HQCD、Blu-specCD…など、いわゆる高音質CDのことは、このブログに何度か書いてきました。いずれも、何とかして良い音をリスナーに届けようという技術者たちの苦心の結晶で、それぞれ成果が上がっていると思います。

  しかし、CD製造における意欲的なチャレンジとは別次元の、今まで経験したことのない新たな世界が拓かれつつあります。それがネットワーク・オーディオで、昨年末にこれを導入した自分自身、驚異的な高音質の世界に直面し心底驚きました。

  ソニーとフィリップスが共同で開発したCDは、厳密な規格を遵守することによって世界標準となりました。その一つが44.1kHz/16bitという規格。アナログ信号をデジタル化する際の時間の区切りがサンプリング周波数で、CDは44.1kHzに規定されています。ちなみに1kHzは1秒間を1,000に区切るという意味なので、この数値が多ければ多いほど、より細かく時間軸を区切ることができます。また、bitは信号の強さを段階的な値で示すもので、bitが増えるほど区切る段階も増えていきます。

  録音時のフォーマットが96kHz/24bitであったとしても、CDになるときは44.1kHz/16bitに圧縮されるので、元の音の解像度やダイナミックレンジは減少することになります。ところが、ネットワーク・オーディオにはデータを配信する上での制約がないため、96kHz/24bitの音がそのまま送られてきます。16bitと24bitは数字の見え方上、あまり差が無いように感じますが、16bitは2の16乗=65,536(段階)、24bitは2の24乗ですから16,777,216(段階)ということになり、圧倒的な差が生じます。これが、音の解像度やダイナミックレンジの改善に大きな影響を与えることになります。

  数値上のことはともあれ、実際にアメリカのハイレゾ配信サイト、HDtracksから立て続けにソフトを購入してみました。円高の恩恵もあり、1アルバムは約1,400円くらいです。アナログ・マスターから24bitでリマスタリングしたもの、最初からハイスペックでレコーディングしたものなど多種多様な買い物でした。

  それらを列挙すると以下のようなものです。①リンダ・ロンシュタット、②カーペンターズ、③ビヨーク、④ポール・サイモン、⑤MJQ、⑥ビル・エバンス、⑦コルトレーン、⑧渡辺香津美、⑨ジョニー・ミッチェル、⑩アバド、⑪ブーレーズ、⑫ムター、⑬ソニー・ロリンズ、⑭ブエナビスタ・ソシャルクラブ、⑮オールソップ、⑯オスカー・ピーターソン、⑰シュタルケル、⑱グレン・グールド、⑲ラン・ラン、⑳クライバー、。21ネトレプコ(つづく)。

  

  

  
  


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リゲティ:ロンターノ、ピアノ協奏曲 都響定期演奏会(2012年1月17日)

2012-01-18 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)

1月17日、一柳慧プロデュース「日本管弦楽の名曲とその源流ー13」を聴きました(東京文化会館大ホール)。プログラムは北爪道夫:地の風景、クラリネット協奏曲、リゲティ:ロンターノ、ピアノ協奏曲。演奏は三界秀実(クラリネット)、岡田博美(ピアノ)、高崎健(指揮)東京都交響楽団。

学生時代、最低月に2回は通っていた東京文化会館の5階席に40年ぶりに上がりました。観客も私と同じか少し上くらいの老人が多く、約半世紀の間、現代音楽を聴き続けている風情の聴衆が目立ちました。当夜の白眉は何と言っても2つ並んだリゲティの大作。

「ロンターノ」の何という美しい響き!混沌としたトーンクラスター(音塊)が、凪いだ湖面のように透き通った平面にユニゾンで止揚されていく瞬間には、思わず息をのみました。この半世紀の間に、日本のオーケストラが到達した高みを実感すると同時に、今日でもまったく色あせないリゲティの作品の力に驚きました。

「ピアノ協奏曲」の演奏が始まる前に、「今まで4回演奏したが、上手く出来たためしがない。もし、途中で演奏が止まってしまったら最初からやり直します。演奏が上手くいかなかったら、それは僕らのせいではなく、楽曲が難しすぎるのだ…」というコメントをユーモア交じりにアナウンスした指揮者の高関健。しかし、その言葉は杞憂に終わりました。ピアニスト岡田博美のずば抜けた技巧と感性、弦、管、打楽器群の確かな技術と音楽性、高崎健の正確無比な棒さばき、それらが、ともそれば必死に音符を追いかけるだけで終わりそうなこの曲の演奏を、見事な物語に昇華させてくれました。精密な分析と瑞々しい感性が同居している短編小説を読むような味わい、日本人の演奏家がこれほど高いレベルの演奏を聴かせるようになるとは、70年代には想像もつきませんでした。

あの頃の現代音楽は今や古典の部類に入りますが、確実に「現代の演奏」というものが存在することを改めて実感した夜でした。誘ってくれた田中先輩、ありがとうございました。
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