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SHM-CD

2007-12-10 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)
  
  ユニバーサルとビクターの共同開発によるSHM-CDを聞いた。SACD、XRCD共に従来のCD盤を大きくしのぐ音質的な成果をあげているが、今回のSHM-CDは、さらに驚異的な仕上がりである。

  試聴したのは11月21日にリリースされたドイツ・グラモフォンの「第九」。カラヤン=ベルリン・フィルの1962年録音版である。

  まず、低域の量感が圧倒的に増大していることと、繊細な音のニュアンスが聞き取れること。そして、デジタル的な刺々しさが消えていること。この点をもって、普通盤は元よりSACDさえも凌駕していると言える。

  試しにSACDとの比較も行ってみたが、木管などの解像度はSACDに一歩譲るものの、物理的な音質の良さということではなく、そこで演奏されている音楽の有様が手にとるように分かる(これは細かいニュアンスが、はっきりと再現されているということ)という点で、このSHM-CDは画期的である。

  第九の四楽章、冒頭からバスの歌が出るまで、コントラバスが主役となって音楽を牽引していくのだが、カラヤン=ベルリン・フィル盤に聞くコントラバスは、明らかに歌を歌っている。これほど細かいニュアンスをつけた演奏が収められているとは想像がつかなかった。残念ながら、SACDからは聞き取ることのできない微妙なディミニュエンドなどが、この新素材CDからは聞こえるのである。

  そもそも、CDの素材はポリカーボネートだが、今回のSHM-CDも同じマテリアルから出来ている。ところが、その純度が異なるらしい。PC画面などに使われる透明度の高いものだそうだ。透明度が高い分だけ情報を大量に読み取ることができるという理屈。とはいえ、SHM-CDについてリポートしている「オーディオ・ベーシック」の新刊によると、この音の良さの根源的な理由は、じつのところビクターの技術陣にもはっきりとは分かっていないらしい。

  このリポートを読んで、私は膝を打った。そうなのだ。音楽を物理的な特性で評価したところで、それは音楽とは何ら関係ない。「なんだか分からないけど、音がよくなった」という人間的な吐露こそが、この新素材の面白さだ。

  楽しみなのは、これからリリースされるルディ・ヴァンゲルダーのリミックスシリーズ。今まで聞いたことのないベースの音が聞こえてきたりするのだろうか。
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