3D CG, CAD/CAM/3Dプリンタ な日常でつづる クルスの冒険ブログ

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「立体コピー」とか「3Dコピー」とか (その1)

2009年06月07日 | □3次元CAD私論
 
クルスの冒険です。

「立体コピー」とか「3Dコピー」という語句で検索して来てくれる方は多い。
 
最初に言っておくけど、今のところ世の中に「立体コピー機」とか「3Dコピー機」
という機械は存在しない。これホント。
 
そして皆さんが、その言葉から受ける印象のような「立体コピー機」とか「3Dコピー機」というような機械は
今後もしばらく出来ないだろうね。少なくともワタシはそう考えてる。

ワタシがそう考えるには、理論的な理由がある。その理由も分かるように書きます。
 
ただし、「立体コピー」とか「3Dコピー」は、行為としては出来ますよ。(質は悪い超劣化コピーだけどね)
「紙のコピー機」のような、手軽で、信頼性が高く、コピー代が安く、自動のは、まず出来ないよ、と断言しておきたい。

逆に言えば、「こういう条件がそろえば出来るでしょう」ということも書きます。

意外と大したことじゃないから、さ(笑)

さて。 
 
すごく先進的に聞こえて、とても革新的でハイテクな印象のある
「立体コピー」とか「3Dコピー」だけど、何も特別な技術じゃない。ホントだよ。
技術やその道具としては20年くらい前からある(もっと古いかも…)。
 
「立体コピー」とか「3Dコピー」の本質を理解する前に、普通に会社にある
「立体じゃない」紙のコピー機を思い出してほしい。そう、普通のコピー機。
 
紙のコピー機は、2つの要素で出来てる。

○スキャナ
○プリンタ

だね。コピーしたい紙を置いて、それをスキャナで読み取って、その情報を基に
プリンタがプリントする。
それが1個の機械で、ほぼ自動に行われる。それがコピー機。

だから複合機と呼ばれる機種はスキャナ機能を備えていたりする。
元々コピー機にはスキャナの機能は必須なわけだから、自然な話だよね。

「スキャナ一体型プリンタ」を、コピー機と呼ぶんだよね。
 
ここまではいいよね?
 
じゃ、次。「立体」とか「3D」とか、行こうか。理屈は一緒だ。
 
その印象とか言葉の響きとは裏腹に、「立体コピー」とか「3Dコピー」も大したことじゃないよ。
ホント、大した技術じゃない。原理も、大したもんじゃないって(笑)
 
○3Dスキャナ(デジタイザ、とか測定機とも言う)
○3Dプリンタ(RP機とも言うね)

この2つを組み合わせて使うと…ハイ、「立体コピー」とか「3Dコピー」と呼ぶわけだ。
 
すげえじゃん!…いや、すごくないって(笑)全然大したことないよ。
 
じゃ、ひとつずつ見て行こう。まず
○3Dスキャナ(デジタイザ、とか測定機とも言う)
の方ね。
 
眼の前にある物体のカタチを測るとき、どうする?
…そうだね、物差しを使う。ちょっと正確にやりたいとノギスとかだ。
でも測りたい物体がグニャグニャしてたり、球では無い丸っこいカタチだと、どうする?全体に丸っこいカタチは測れない。
第一、測らないとホントに球かどうかも分からないよね。

…そうね、手段が無い。それを可能にしましょう、というのが
○3Dスキャナ(デジタイザ、とか測定機とも言う)
だと考えていい。
 
すげえじゃん!…いや、すごくないって(笑)
 
測りたい物体がグニャグニャしてたり、球では無い丸っこいカタチの場合は、
基準となる場所から、測りたいモノとの距離をたくさんたくさん計測して、その距離の集まりを並ることで、測るんだ。

こういうの、見たことあるでしょ?


基準となる場所から、測りたいモノとの距離をたくさんたくさん計測するのに、たくさんのピン(針)を使う。

こんな風に使うんだね。


「フォーマーゲージ」とか「コントラゲージ」、「針千本」なんて呼ぶ。
ナニ?見たことないか?…じゃあ、これは?



「ピンプレッション」とか「ピンアート」、たぶん商品名だ。
これは知ってるでしょ?これは、「ピース」してる手を計測したってことだ。

…これ、「立体コピー」とか「3Dコピー」とかの一つの要素である
○3Dスキャナ
なの。いや、ホントだって。考え方は、正にこれなんだよ(笑)
全然難しい原理じゃないでしょ?
 
実際、この無数のピンを測りたいモノにくっ付けて行って、計測する機械もある。

こういうのね。



台に乗ってる青いモノが測りたいモノで、上のピンを青いモノにくっ付けて行って、全体のカタチを測るってわけだ。

こレを見て、「スキャナ、チガウじゃん…」と思ったアナタ。アナタは思い違いをしてます(笑)

スキャナ、というときにはこういうピン状のモノを接触させてるとなんか違う…と思っちゃうけど、
このピンの代わりに、レーザー光線を当てたり、写真(まぁ、デジカメだ)を使ったり
するだけの話。
 
そういうのを、「非接触式」という風に呼ぶ。計測するモノにピンなどが触らないからだ。
 
でも、同じことだよ。
 
ここで押さえて欲しいのは、
 
「3Dスキャンで計測できるのは、立体表面のたくさんの点だ」
 
ってことだ。3Dスキャナが取るのは、たくさんの「点」なんだよね。それも、見えるところの表面の点だけ、だ。
 
「あー、なるほど、たくさん点が集まれば立体になるよなぁー…」
 
と思っちゃったアナタ!そう、そこのアナタだ。大間違いだからね、それ。
自分を教えてくれた数学の先生に謝ってきなさい。今すぐ、だ。
 
「点は座標をあらわすものであって、点には面積はない」
 
ってのを、忘れてたね?ハイ、謝ってきなさい(笑)。
そう、みんなここに引っかかる。

点は、何万点、何十万点、何億点集まっても、カタチじゃない。
点描ってあるけど、無数の点が集まっているとまるで色を塗ったような「面」に見えるのだけど、
点には面積は無いから、何億個集まったって面にはならない。
 
○塗ったように、カタチがあるように見える

ということと

○面である

ってことは、全く違うんだよね。
 
そろそろ今日のまとめをしますよ。
 
<3Dスキャナとは>
・スキャナがスキャンする対象から取れるのは、無数の点だけです
・点はいくら大量に集まっても面や立体ではありません
・光は基本、直進しますから後ろ側はスキャンできません(これは紙のスキャナと一緒ね)
・紙であれば表裏だけで済みますが、立体をスキャンするとなるとあらゆる方向からスキャンしなければなりません
・あらゆる方向からスキャンした点を、正しく立体に並べなければなりません
・奥まったところ、内側に回り込んだところは、スキャンできません
 
これが、3Dスキャナ、立体スキャナです。
 
次回は、3Dスキャナ、立体スキャナのもう一つの要素、3Dプリンタ、立体プリンタのお話をします。
 
それで、立体コピー、3Dコピーの要素が揃うってわけだ。

じゃ、また次回。