昭和三丁目の真空管ラジオ カフェ

昭和30年代の真空管ラジオを紹介。
アンティークなラジオを中心とした、自由でお洒落な、なんちゃってワールド♪

松下電器産業(National)「E-330」

2006-04-08 | ナショナル 真空管ラジオ
              

 昭和30年代の真空管ラジオのレストアに手を染めて半年、近頃ようやく親しい友人たちにこの趣味のことをカミングアウトし始めた。
本来、趣味、嗜好、性癖(?! 笑)の類は、一人で隠れてコッソリと楽しむところに『自分を解放する味わい』があるのだが・・・・
 自分の自由時間を真空管ラジオの修復にあてていることを話すと、家の片隅に埃を被った真空管ラジオのあったことを覚えている人は、特に興味と理解を示してくれる。
「うちにもデッカイ木箱のラジオがあったんだけど・・・・」 「部品はどうやって手に入れるんですか?」 「壊れた箇所がよくわかりますね!」 「どんな音がするんですか?」等など。話題も昭和30年代から40年代の日常生活に広がっていく。
 真空管ラジオの話に心から興味を持ってくれたある友人に「じゃあ今度、1台持って行くから、使ってみて」とプレゼントの約束をした。
自営業を営む彼の事務所兼工場は昭和24年(1949年)に建てられた地元の信用金庫本店を譲り受けた、擬石モルタル洗い出し仕上げのレトロな建物である。
改修された内部にはまだ当時の面影が残っており、昭和30年代のラジオが溶けこむ空間である。

 「えっ、本当にいいんですか?楽しみにしてます!」
 素直に嬉しそうな表情を見せてくれる彼のために選んだのは、1963年にナショナルから発売された横長の2スピーカー型真空管ラジオだ。


 メーカー:松下電器産業(NATIONAL)『E-330』 2スピーカー

 サイズ : 高さ(約16.5cm)×幅(約44cm)×奥行き(約11cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1650KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

              


 1960年代後半FMステレオ放送が開始される以前、1952年12月にNHKが「土曜コンサート」という番組を中波の東京第一放送と東京第二放送の2つの電波を使って右信号と左信号をそれぞの放送で送信する、立体放送(東京地域のみ)を開始した。
その後、全国で2波放送によるステレオ放送が実施されたが、FM放送が普及する1965年まで続けられた。
それに伴い、2波同時に受信できる2スピーカーのステレオ・ラジオ(2台分を詰め込んだ)も発売された。もっとも2波によるステレオ放送は、放送局(演奏所)から送信所までの距離、伝送路の位相遅延特性の違いなどから、左右の信号に位相差が生じ、音源が頭の周りを回転するように聞こえることもある代物だったようである。
一方,当時のほとんどのラジオにはレコード演奏も簡単に楽しめるようにレコード・プレーヤのピックアップ端子が設けられており、大きな音量でも歪みなく楽しめるよう設計したHi-Fiラジオも数多く作られている。

 その流れを汲み、実際はステレオ受信対応しないものの、アンプは1組でスピーカを左右に2個搭載した『なんちゃってステレオ・2スピーカーラジオ』が各社から発売された。2スピーカ・ラジオは卓上小形のプラスティック・キャビネットに同じ口径のスピーカを2組積むと同じ出力でも2倍大きな音が出せる、逆に同じ音の大きさならアンプもラジオのキャビネットもより小形にできるというメリットがあり、横に長いこのスタイルのラジオが瞬く間に流行したのである。

              

 E-330は、1962年に松下電器産業から発売された2スピーカ・モデル3機種(E-330, GM-520, BM-550D)のうち、マジックアイ無しの廉価モデルだが、肉厚なプラスチックキャビネットはクロムメッキの金属モールを一部装飾した大変丁寧な作りであり、部品もネジ一本まで品質の高いパーツを使っている。
 ナショナル製真空管ラジオによく採用されている垂直鉄板型シャーシーに取り付けられた真空管やパーツを点検してみたが修理を行なった痕跡もなく、部品の劣化は少ない。
電源スイッチを入れ測定したところ、各回路の電圧・電流値は正常であり、感度・音質ともに問題なく動作してくれた。
ただボリュームの最小抵抗値が絞りきれず、本来なら交換するところだが許容範囲とすることとした。

              

 今回はキャビネットのフロント透明パネルを取り外し、いつものように中性洗剤で洗浄後、コンパウンド入りプラスチック・クリーナーを使い丁寧に研磨したところ、新品に近い輝きをとり戻した。中波、短波ともに感度良好、ボリュームの不具合さえ気にしなければ経年変化を感じさせない。

 このラジオをプレゼントした友人は一昨年まで、若手経営者が修練・向上し合い社会の発展に貢献しようと集う地元の(社)青年会議所理事長も務め、地域に根ざした社会活動に参画されている。
また彼とは、歴史を教訓とする国内外の社会情勢、教育が担う日本の未来、地域と人との絆といった話題を、肩に力を入れることなく一杯傾けながら等身大で語り合える友人でもある。

 しかし!しかしである!!
 10才以上歳の離れた若い奥さんをもらうなんて、羨ましすぎ~!!

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