アメリカの高級通信機メーカHallicrafters社から第二次世界大戦終戦の翌年1946年に発売されたS-38は、高名なデザイナーRaymond Loewyがデザインしたと言われる普及型の中・短波受信機である。このたび自分へのご褒美に、この憧れの名機を入手した。
今回ヤフオクで入手した S-38は、20世紀を代表するデザイナーと言われ、「アメリカを形作った男」の異名を持つレイモンド・ローウィ(Raymond Loewy)がオリジナルデザインを手がけ、1946年から15年間にわたって、製造・販売されたHallicrafters社の民生用受信機のプロトタイプモデルである。
▲自分へのボーナス♪ Hallicrafters社 S-38 初期型('46年製)
レイモンド・ローウィは、1935年、シアーズ・ローバック社の依頼を受け、冷却装置がむき出しであった冷蔵庫を、「白いホウロウ引きされた鋼鉄製のケース」でカバーし、さらにボディと同一平面状を形成する扉をつけた。この結果、冷蔵庫の機能性を変化させずに、年間の販売量は20倍近くに跳ね上がり、デザインが販売に大きな影響を及ぼすことを実証した。
彼は著書『口紅から機関車まで』の題名でもわかるように日用品から機関車まで広範囲な工業製品を手がけ、そこで彼は工業製品の機能と美的感覚の一致を提唱し、優れたデザインが商品の販売促進に大いに貢献することを実践し、ペンシルヴァニア鉄道の電気機関車GG1や、自動車メーカー スチュードベーカー社のコマンダークーペなど傑出した多くの作品を生み出している。
S-38の前身は、1940年にHallicrafters社が買収したEchophone社のブランドで発売していた極めて安価な民生用短波受信機 Echophone EC-1 に遡る。第二次大戦勃発と参戦に伴い、短波受信機や短波ラジオの生産は制限されたが、 Echophone EC-1 だけは例外的に終戦まで供給され続けた。
大戦終了後、Echophone EC-1A、BをベースにしたHallicraftersブランドの S-41G SkyRider Jr. をごく短い期間だけ発売したが、高級通信機メーカHallicrafters社は、その名に恥じない商品としてレイモンド・ローウィに外観の意匠設計を依頼する。
▲Echophone EC-1シリーズ('40年~)の最終モデル EC-1B('46年製)
1946年、レイモンド・ローウィのデザインとHallicrafters社の再設計により S-38 は、中波で放送される通常のラジオ番組に加え、短波帯で放送される外国のニュースや音楽番組、さらにはアマチュア無線・船舶・航空無線のモールス信号も受信可能な、6球構成の初心者向けの民生用受信機として生まれ変わった。
▲1946年当時のHallicrafters社 S-38 と 上級機種 S-40 の雑誌広告
その基本設計は、トランスレス5球スーパにBFO回路を加えた6球構成のシンプルな回路だったにもかかわらず、中波~32MHzを4バンドに分割・連続カバーし、短波帯のデリケートな選局微調整を容易にするスプレッド・ダイヤル機構、雑音を低減するANL(オートマチック・ノイズ・リミッター)やモールス信号を受信するピッチコントロール付BFO回路、送信機を組合わせて使用するためのスタンバイ機能をリメイクすることにより、通常のラジオでは聞けない世界中の電波をキャッチする手頃な価格の受信機として、爆発的な人気を集めた。
戦後のメーカー製民生用受信機の原点といえるHallicrafters社の S-38 だが、翌'47年に発売された S-38A では、BFOとANL回路を構成していた12SQ7が取除かれ、中間周波数増幅管12SK7で兼用することになり、BFOピッチコントロールとANLを削除した5球構成へとスペックはダウンされた。
続く S-38B も回路スペックはほぼ同等だが、底板および裏蓋は厚紙になり、S-38C ではケースの塗装が黒からシルバーグレイのハンマートーン塗装に改められ、 中間周波数増幅とBFO兼用の真空管も12SK7から12SG7に変わり、コストダウンと生産効率の追求へと向かう。
通常の製品は、後期の方が改良・改善されるものだが、本機の場合は、'46年に発売された最初の S-38 から徐々に機能の省略化が行われ退化していった点が興味深い。
いずれにしても '46年にリリースされた S-38 は、S-38A,B,C,D,E,F と数年ごとにモデルチェンジを重ねながら15年間にわたり生産され続けられる大ヒット商品となり、戦後日本のアマチュア用受信機にも大きな影響を与えた。
▲S-38の型番・バージョンの変遷と年代、外観の塗装仕上げの分類
当時はまだ知的所有権の概念も希薄な時代であり、S-38のデザインをコピー(リスペクト? 笑)した受信機が、'53年頃に春日無線(後のトリオ、現ケンウッド)からは6R4S、三田無線からはDELICA CS-6として販売され、そのレプリカのケースまでが秋葉原や日本橋で売られていたそうです。その後、両メーカーはS-38をリスペクトしたモデルに改良・機能を加え、6R4Sは9R4、9R42J、CS-6はCS-7、DX-CS-7へと発展する。
▲春日無線(現ケンウッド) 6R4S(左)と三田無線 DELICA CS-6(右)
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友人&先輩である音響の匠氏の事務所では、GE製クロックラジオC-505から乾いた耳に心地いいサウンドが流れてる。同型のラジオをヤフオクで発見、“1950年代”と言う文句に踊らされ落札してみたら・・・何とトランジスタラジオだった!!
という、実に間抜けなお話・・・ A^-^;
▲音響の匠氏所有のGE製真空管クロックラジオC-505D
真空管ラジオに魅かれた理由の一つは、その「デザイン」にあることは、何度か述べた。
’40~50年代インダストリアルデザインの技を競ったアメリカ製ベークライトキャビネットの真空管ラジオは、’50年代後半に入り、生産効率を追求したプラスチックキャビネットへと変わるにつれ、デザイン的な魅力は一気に衰退する。そんな中、直方体を基調とした写真のGE製クロックラジオは、シンプルな造形と選局ダイヤルのコンビネーションがアクセントになり、アメリカン・グラフティに出てきそうな雰囲気を醸し出す。
ただなぜかアメリカ製にはこの機種を含め、パイロットランプを装着しないラジオが多く、暗い部屋で薄灯りのぬくもりを堪能する楽しみは得られない。回路全体の負荷に影響する割には、交換を要するパイロットランプがあると、余計なメンテナンスが必要なため、合理性を求める彼の地では割愛しているのでしょうか。
一方、その乾いたサウンドは、民放ラジオのトーク番組をBGM代わりに聞き流すには、ちょうどよい。キャビネットの中身はプリント基板に真空管を載せたスタイルだが、プリント基板の作りもしっかりしており、’60年代中盤に日本で一時採用された熱に弱いプリント基板とは一線を画す品質だ。
▲C-505は、プリント基板に真空管が並びスピーカはキャビネット底面に
ヤフオクを徘徊していると同型機を発見! 出品者の方のコメントには、
「General Electric社製真空管ラジオです。アメリカ駐在中に購入し持ち帰りました。」
と書かれており、勇んで入札したところ、思いのほか価格は高騰せず、いつもの予算内で落札できた♪
▲今回、店長が入手したチープ感漂うGE製クロックラジオC4404
宅急便で届いたラジオは、小傷はあるもののキャビネットに艶もあり、同世代の日本製真空管ラジオのキャビネットとはプラスチックの素材も違うのか、50年前のラジオとは思えないほど。
ただ音響の匠氏のGEアラームクロックラジオと比べ、キャビネットは同じ金型を使って作られているが、クロック部の文字盤ほか金属パーツがシルバーのため、あっさりしすぎ、チープ感の漂うデザインだ。
裏蓋には、UL規格のCAUTION(注意)と型式が書かれている。このラジオは、C4404 HONEY BEIGEのようだ。仕様は105-120Vの60Hzの対応であることがわかる。
いつものように裏蓋を外し、キャビネットの中身を点検しようとしたところ・・・ 一瞬、我が目を疑った。真空管がない!!
▲裏蓋を外した瞬間、我が目を疑った! 真空管は・・・?
しかし、よくよく見ると・・・ プリント基板の上にトランジスタが載っているじゃないですか。
「おいおい、こんなのアリかよ~」
と独り言で文句を言っても、プリント基板に真空管が生えてくるわけじゃなし。
状況が理解できないまま、再びプラスチックキャビネットに目をやると、選局ダイヤルの下に「SOLIDSTATE」の文字を発見。どおりで程度の割には値段が高騰しなかったわけだ。ヤフオクで真空管ラジオを蒐集するマニアの人は、このあたりも抜け目無くチェックしてるんでしょうね。
テストでは真空管ほどデリケートになる必要もなく、とりあえずACプラグをコンセントに差込み、動作確認を行なってみた。クロック部の時計は、スムーズに動く。ラジオのスイッチをONにすると、トランジスタラジオ特有のチリチリ音の雑音が聞こえてくる。選局ダイヤルを回すと、地元の民放とNHK中継局が入感する。しかし格別に感度がいいとは思えない。
しばらくNHKと民放の番組に耳を傾けたが、真空管ラジオとは何かが違う・・・ ん~ 感覚的に言うと、“耳に突き刺さる音” なのです。
では真空管とトランジスタの音の違いはどこからくるのか?
いわゆる「真空管の音」というイメージには、歪((高調波)特性が大きく影響しているように思います。もともと倍音と呼ばれる偶数次の高調波は、生音を聴かせる楽器や声に自然に含まれているものなので、偶数次歪は録音・再生の過程で失われたものを擬似的に補完する効果を持っているということがあるようです。また偶数次の歪(高調波)を含んだ音は、人間には “艶やかで自然な音色として感じられる” という説もあります。
このため、歪そのものは半導体よりも真空管の方がかなり大きくても、聴感上はより自然に聴こえるということらしいのです。
さらに真空管ラジオに使われている出力トランスは、高域がなだらかに減衰する特性を持っていて、柔らかめの音になる傾向があります。
応答特性まで述べると、高級オーディオのファンの方からは、「ラジオごときで何を語っているのか!」 とのお叱りもあるでしょうが、いずれにしても音質や聴感については、“良し悪し”というよりは、好みに合うか合わないかの問題だと思います。
という、実に間抜けなお話・・・ A^-^;
▲音響の匠氏所有のGE製真空管クロックラジオC-505D
真空管ラジオに魅かれた理由の一つは、その「デザイン」にあることは、何度か述べた。
’40~50年代インダストリアルデザインの技を競ったアメリカ製ベークライトキャビネットの真空管ラジオは、’50年代後半に入り、生産効率を追求したプラスチックキャビネットへと変わるにつれ、デザイン的な魅力は一気に衰退する。そんな中、直方体を基調とした写真のGE製クロックラジオは、シンプルな造形と選局ダイヤルのコンビネーションがアクセントになり、アメリカン・グラフティに出てきそうな雰囲気を醸し出す。
ただなぜかアメリカ製にはこの機種を含め、パイロットランプを装着しないラジオが多く、暗い部屋で薄灯りのぬくもりを堪能する楽しみは得られない。回路全体の負荷に影響する割には、交換を要するパイロットランプがあると、余計なメンテナンスが必要なため、合理性を求める彼の地では割愛しているのでしょうか。
一方、その乾いたサウンドは、民放ラジオのトーク番組をBGM代わりに聞き流すには、ちょうどよい。キャビネットの中身はプリント基板に真空管を載せたスタイルだが、プリント基板の作りもしっかりしており、’60年代中盤に日本で一時採用された熱に弱いプリント基板とは一線を画す品質だ。
▲C-505は、プリント基板に真空管が並びスピーカはキャビネット底面に
ヤフオクを徘徊していると同型機を発見! 出品者の方のコメントには、
「General Electric社製真空管ラジオです。アメリカ駐在中に購入し持ち帰りました。」
と書かれており、勇んで入札したところ、思いのほか価格は高騰せず、いつもの予算内で落札できた♪
▲今回、店長が入手したチープ感漂うGE製クロックラジオC4404
宅急便で届いたラジオは、小傷はあるもののキャビネットに艶もあり、同世代の日本製真空管ラジオのキャビネットとはプラスチックの素材も違うのか、50年前のラジオとは思えないほど。
ただ音響の匠氏のGEアラームクロックラジオと比べ、キャビネットは同じ金型を使って作られているが、クロック部の文字盤ほか金属パーツがシルバーのため、あっさりしすぎ、チープ感の漂うデザインだ。
裏蓋には、UL規格のCAUTION(注意)と型式が書かれている。このラジオは、C4404 HONEY BEIGEのようだ。仕様は105-120Vの60Hzの対応であることがわかる。
いつものように裏蓋を外し、キャビネットの中身を点検しようとしたところ・・・ 一瞬、我が目を疑った。真空管がない!!
▲裏蓋を外した瞬間、我が目を疑った! 真空管は・・・?
しかし、よくよく見ると・・・ プリント基板の上にトランジスタが載っているじゃないですか。
「おいおい、こんなのアリかよ~」
と独り言で文句を言っても、プリント基板に真空管が生えてくるわけじゃなし。
状況が理解できないまま、再びプラスチックキャビネットに目をやると、選局ダイヤルの下に「SOLIDSTATE」の文字を発見。どおりで程度の割には値段が高騰しなかったわけだ。ヤフオクで真空管ラジオを蒐集するマニアの人は、このあたりも抜け目無くチェックしてるんでしょうね。
テストでは真空管ほどデリケートになる必要もなく、とりあえずACプラグをコンセントに差込み、動作確認を行なってみた。クロック部の時計は、スムーズに動く。ラジオのスイッチをONにすると、トランジスタラジオ特有のチリチリ音の雑音が聞こえてくる。選局ダイヤルを回すと、地元の民放とNHK中継局が入感する。しかし格別に感度がいいとは思えない。
しばらくNHKと民放の番組に耳を傾けたが、真空管ラジオとは何かが違う・・・ ん~ 感覚的に言うと、“耳に突き刺さる音” なのです。
では真空管とトランジスタの音の違いはどこからくるのか?
いわゆる「真空管の音」というイメージには、歪((高調波)特性が大きく影響しているように思います。もともと倍音と呼ばれる偶数次の高調波は、生音を聴かせる楽器や声に自然に含まれているものなので、偶数次歪は録音・再生の過程で失われたものを擬似的に補完する効果を持っているということがあるようです。また偶数次の歪(高調波)を含んだ音は、人間には “艶やかで自然な音色として感じられる” という説もあります。
このため、歪そのものは半導体よりも真空管の方がかなり大きくても、聴感上はより自然に聴こえるということらしいのです。
さらに真空管ラジオに使われている出力トランスは、高域がなだらかに減衰する特性を持っていて、柔らかめの音になる傾向があります。
応答特性まで述べると、高級オーディオのファンの方からは、「ラジオごときで何を語っているのか!」 とのお叱りもあるでしょうが、いずれにしても音質や聴感については、“良し悪し”というよりは、好みに合うか合わないかの問題だと思います。
広大な国土のアメリカでは、メールオーダー(カタログ通販)の長い歴史と実績がある。その最大手シアーズ社のカタログに掲載、販売されていたSilvertoneというプライベートブランドの'54年製造のMT管4球スーパ真空管ラジオをご紹介する。
1886年、シカゴにて設立されたシアーズ(Sears, Roebuck and Company)は、カタログ通販のアイデアが成功を収め、第二次大戦後は安売り郊外型デパートとして全米に出店、全米第一位の小売業者の座を獲得しするとともに、カバーオール、ワークシャツ、オーバーオール、ピーコート、レザージャケットなどの衣料品につけられた自社ブランドHERCULESは有名だが、他にも、Pilgrim、SturdyOak、StrongReliable(DrumMajor)など多くのプライベートブランドが存在し、今でもシアーズの古着は品質の高さから人気が高い。
衣料などの日用生活品以外にも、数多くの自社ブランドを持ち、ラジオや楽器、レコードにはSilvertoneのプライベートブランドが使われた。
Silvertone3002は、写真のように、アイボリーのプラスチックキャビネットと赤いダイヤル、V字型のスピーカグリルが安っぽい玩具のように見えるラジオだ。アメリカ製真空管ラジオは、キャビネットの素材にベークライトを使った黒や茶色の重厚さと、様々なデザインを施した造形美の融合が魅力的なのだが、それとはまったく趣の異なる ’50年代アメリカンTOYのようなSilvertone3002のPOPなデザインが気になり、つい購入してしまった。
写真のように、キャビネット底にはシアーズのカタログNo.が記載されている。
この3002の他に、3001というブラウンのタイプがあるようだ。調べてみたところ、ブラウンを基調に白いダイヤルがアクセントになった落ち着いた配色となっている。しかしマテリアルのチープさは否めず、ラジオとしての重厚さとは程遠い。
メーカー:Sears, Roebuck and Co. (Chicago) Silvertone 3002
サイズ : 高さ(約13cm)×幅(約23cm)×奥行き(約11cm)
受信周波数 : 中波 530KC~1650KC
使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12AV6(検波&低周波増幅)
50C5(電力増幅)、35W4(整流)
電 源 : AC 105~125V/60Hz
数日後、宅急便で届いた段ボールを開梱し、まず外観からチェックを開始した。小ぶりなキャビネットと赤いダイヤルは、妙に安っぽいプラスチック製。小傷はあるものの50数年前のラジオとしてはかなりキレイだ。ボルト1本で留められた裏板(裏蓋にあらず:笑)を取外すと、裏板にはアメリカ製ラジオの特徴であるループコイルではなく、フェライトバーが取付けてある。
キャビネット内部は埃がたまり、かなり汚れている。
「ん? 真空管が4本しかないぞ!セレン整流なのか?」と思い確認したところ、12BE6-12AV6-50C5-35W4の構成だ。(12BA6はどこに行ったんだ?)
よく見ると、IFTも1個しかついていない。
トホホなことに結局、中間周波増幅を削った回路設計でコストダウンを図っていたのだ。当然、感度は5球スーパに劣る・・・。
街から何十マイルも離れた土地で農園を営む両親が、ハイスクールに通う娘キャサリンの誕生日プレゼントに、このラジオをシアーズのカタログで注文したのだろうか。あるいは在日米軍キャンプの若い兵士が、日本人の彼女のために、本国のラジオを取寄せたのだろうか。
いずれにしてもこのオモチャのような可愛いラジオを受け取った人々の情景に、ボクは思いをはせる。
1886年、シカゴにて設立されたシアーズ(Sears, Roebuck and Company)は、カタログ通販のアイデアが成功を収め、第二次大戦後は安売り郊外型デパートとして全米に出店、全米第一位の小売業者の座を獲得しするとともに、カバーオール、ワークシャツ、オーバーオール、ピーコート、レザージャケットなどの衣料品につけられた自社ブランドHERCULESは有名だが、他にも、Pilgrim、SturdyOak、StrongReliable(DrumMajor)など多くのプライベートブランドが存在し、今でもシアーズの古着は品質の高さから人気が高い。
衣料などの日用生活品以外にも、数多くの自社ブランドを持ち、ラジオや楽器、レコードにはSilvertoneのプライベートブランドが使われた。
Silvertone3002は、写真のように、アイボリーのプラスチックキャビネットと赤いダイヤル、V字型のスピーカグリルが安っぽい玩具のように見えるラジオだ。アメリカ製真空管ラジオは、キャビネットの素材にベークライトを使った黒や茶色の重厚さと、様々なデザインを施した造形美の融合が魅力的なのだが、それとはまったく趣の異なる ’50年代アメリカンTOYのようなSilvertone3002のPOPなデザインが気になり、つい購入してしまった。
写真のように、キャビネット底にはシアーズのカタログNo.が記載されている。
この3002の他に、3001というブラウンのタイプがあるようだ。調べてみたところ、ブラウンを基調に白いダイヤルがアクセントになった落ち着いた配色となっている。しかしマテリアルのチープさは否めず、ラジオとしての重厚さとは程遠い。
メーカー:Sears, Roebuck and Co. (Chicago) Silvertone 3002
サイズ : 高さ(約13cm)×幅(約23cm)×奥行き(約11cm)
受信周波数 : 中波 530KC~1650KC
使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12AV6(検波&低周波増幅)
50C5(電力増幅)、35W4(整流)
電 源 : AC 105~125V/60Hz
数日後、宅急便で届いた段ボールを開梱し、まず外観からチェックを開始した。小ぶりなキャビネットと赤いダイヤルは、妙に安っぽいプラスチック製。小傷はあるものの50数年前のラジオとしてはかなりキレイだ。ボルト1本で留められた裏板(裏蓋にあらず:笑)を取外すと、裏板にはアメリカ製ラジオの特徴であるループコイルではなく、フェライトバーが取付けてある。
キャビネット内部は埃がたまり、かなり汚れている。
「ん? 真空管が4本しかないぞ!セレン整流なのか?」と思い確認したところ、12BE6-12AV6-50C5-35W4の構成だ。(12BA6はどこに行ったんだ?)
よく見ると、IFTも1個しかついていない。
トホホなことに結局、中間周波増幅を削った回路設計でコストダウンを図っていたのだ。当然、感度は5球スーパに劣る・・・。
街から何十マイルも離れた土地で農園を営む両親が、ハイスクールに通う娘キャサリンの誕生日プレゼントに、このラジオをシアーズのカタログで注文したのだろうか。あるいは在日米軍キャンプの若い兵士が、日本人の彼女のために、本国のラジオを取寄せたのだろうか。
いずれにしてもこのオモチャのような可愛いラジオを受け取った人々の情景に、ボクは思いをはせる。
前回はオシャレなアメリカ製ラジオのリスクを書いたが、引続いて蒐集やレストアに際しての注意点や非常に困る問題点を述べる。確かにデザインは斬新で魅力的なアメリカ製真空管ラジオだが、その修理に際して真空管をはじめとする部品入手の難しさは致命的であろう。
とにかくネジの一本からして日本とは規格が異なるインチ・ネジのため、重要部品が壊れていると本当に困ってしまう。
そもそも真空管からしても日本の製品にまったく使われていなかったような馴染みのないロクタル管&GT管&mT管混成トランスレスラジオは当時の米国ではごく普通だし、型番から規格を調べたりするのも大変だ。もっともそれを趣味にしてらっしゃる方も多いのですが・・・。
バリコンやIFTにしても日本の規格化された大量生産品と違い、用途に応じて個別化・差別化が進んでいた米国では、各メーカーや型式ごとに部品の仕様が違っているため、新品はもちろん、中古部品だっておいそれとは手に入らない。
さらにはハンダ付け、配線の適当さ加減というか、やっつけ仕事ぶりにも閉口してしまう。
そういうボク自身もハンダ付の腕前は彼らとそう変わらないが、電子工学の知識があるわけでもない、マニュアル化された工場の単なる組立て作業員により生産されたラジオは、配線材の被覆がところどころ溶けていたり、抵抗やコンデンサの足がチューブで被覆されず不必要に長いく、あちこちでくっつきそうになっていたりする。
その点、同年代の日本製品のそれは、細かい部分にまで目が届き、よく品質管理された仕上がりの良い配線になっている。
なるほど「この違いが日本製ラジオの輸出攻勢につながった…」と納得させられると同時に、「アメリカ製ラジオは故障が多い…」という当時の評判のとおり、そういう部分をも含めて補修しておかないとスグに故障する。
写真のようにコンデンサを交換、何ケ所か配線を修正されたシャーシ裏だが、音量調整がうまくできず、可変抵抗器が不良で交換の際にも、インチ仕様なので継ぎ手に苦労されたそうです。
電圧の違いから、100Vで動作しない場合があったりもする。電源電圧範囲は120~130Vと記載されていると、国内の100Vでは周波数変換管のエミッションが弱いのか、局部発振が停止して受信できない。110Vでは不安定ながら何とか受信でき、120Vでは安定して受信可能となるケースもあるようだ。やはり海外のラジオは正規の電圧で動作させたほうが、精神衛生上よろしいようです。
オリジナルでもパイロットランプも無かったりすると、不便でないのかなぁ?と思ってしまいます。豊かなアメリカのはずが・・・合理的なのか手抜きなのか?(笑)
ま、ざっとこんなところだが、何であれ古いものをちゃんと使えるようになるまで整備するのは大変。またそういった手間をかけるから、アンティークにはそれなりの価値があるのだろう。
「こういった側面があるから、アメリカ製のラジオは面白い…」ということにもなるのだが、それ知らないで「買ったラジオがスグ壊れた…」ということにならないためにもアメリカ製ラジオを入手する際は、ぜひこういった部分をも考慮して、楽しんでいきたいと思う次第だ。
とにかくネジの一本からして日本とは規格が異なるインチ・ネジのため、重要部品が壊れていると本当に困ってしまう。
そもそも真空管からしても日本の製品にまったく使われていなかったような馴染みのないロクタル管&GT管&mT管混成トランスレスラジオは当時の米国ではごく普通だし、型番から規格を調べたりするのも大変だ。もっともそれを趣味にしてらっしゃる方も多いのですが・・・。
バリコンやIFTにしても日本の規格化された大量生産品と違い、用途に応じて個別化・差別化が進んでいた米国では、各メーカーや型式ごとに部品の仕様が違っているため、新品はもちろん、中古部品だっておいそれとは手に入らない。
さらにはハンダ付け、配線の適当さ加減というか、やっつけ仕事ぶりにも閉口してしまう。
そういうボク自身もハンダ付の腕前は彼らとそう変わらないが、電子工学の知識があるわけでもない、マニュアル化された工場の単なる組立て作業員により生産されたラジオは、配線材の被覆がところどころ溶けていたり、抵抗やコンデンサの足がチューブで被覆されず不必要に長いく、あちこちでくっつきそうになっていたりする。
その点、同年代の日本製品のそれは、細かい部分にまで目が届き、よく品質管理された仕上がりの良い配線になっている。
なるほど「この違いが日本製ラジオの輸出攻勢につながった…」と納得させられると同時に、「アメリカ製ラジオは故障が多い…」という当時の評判のとおり、そういう部分をも含めて補修しておかないとスグに故障する。
写真のようにコンデンサを交換、何ケ所か配線を修正されたシャーシ裏だが、音量調整がうまくできず、可変抵抗器が不良で交換の際にも、インチ仕様なので継ぎ手に苦労されたそうです。
電圧の違いから、100Vで動作しない場合があったりもする。電源電圧範囲は120~130Vと記載されていると、国内の100Vでは周波数変換管のエミッションが弱いのか、局部発振が停止して受信できない。110Vでは不安定ながら何とか受信でき、120Vでは安定して受信可能となるケースもあるようだ。やはり海外のラジオは正規の電圧で動作させたほうが、精神衛生上よろしいようです。
オリジナルでもパイロットランプも無かったりすると、不便でないのかなぁ?と思ってしまいます。豊かなアメリカのはずが・・・合理的なのか手抜きなのか?(笑)
ま、ざっとこんなところだが、何であれ古いものをちゃんと使えるようになるまで整備するのは大変。またそういった手間をかけるから、アンティークにはそれなりの価値があるのだろう。
「こういった側面があるから、アメリカ製のラジオは面白い…」ということにもなるのだが、それ知らないで「買ったラジオがスグ壊れた…」ということにならないためにもアメリカ製ラジオを入手する際は、ぜひこういった部分をも考慮して、楽しんでいきたいと思う次第だ。
オシャレなアメリカ製真空管ラジオを蒐集・レストアしようとするとき、まず注意すべきポイントは、「アメリカ製ラジオは製作時期がその回路やデザイン、真空管の型式から想像される日本の同等型ラジオより古く、リスクが高い!」ということだろう。
当時、日本の技術は欧米の後追いのコピーだったため、アメリカで製造・販売された回路型式の製品が、何年か後に日本でも生産され売られていた。
従って同じ型式ならアメリカ製ラジオの方が絶対的に古い。言い換えれば経年変化による部品の劣化は、日本製より酷いということになり、「この型のラジオならこの部分は問題ない…」という経験値がアメリカ製には通用しないということになる。
一例を挙げれば、写真のラジオの型式は、メタル管とGT管混成構成のトランスレスタイプの5球スーパーである。日本でトランスレスタイプのラジオが普及するのは昭和30年代(1955年~)に入ってからなのだが、このアメリカ製ラジオの製造年は1940年代にまで遡る。つまり国産ラジオの感覚で捉えた回路型式では「新しいはず」のこのラジオの実年齢は、日本の時間軸でいえば「トランス付ST/MT管ラジオの時代と同等」ということになる。当然、部品の傷み具合も「日本のトランス付ST管ラジオなみ…」ということになり、写真のようにパーツの経年劣化はかなり進み、ペーパーコンデンサーが1個破裂している。ケミコンはブロック型ではなく、チューブラー型が付いている。メーカー製にしては、半田付けが下手くそで、半田がてんこ盛りになっている。内部の配線コードが、日本の戦前のラジオの様に、ビニールコードではなく布巻きのコードなんで、絶縁不良が不安である。
ところが…なんと!ラジオの電源を入れると、この状態でも一応「動作する」のだ。
もちろんリーク電流で電源パスのコンデンサは蝋がすっかりはげ落ちてこげた跡があったり、出力管のバイアスが小さくなって音の歪が多く聴きづらかったりするのだが、確かにとりあえず動作はするので「動作品!」あるいは「完動品」と称して売られているケースに出くわす。
専門知識のない古物販売業者からヤフオクに出品または売出される数十年前のヴィンテージラジオは、アメリカ製/日本製に限らず、この手のリスクがあることは致し方ない現実と言えよう。
しかし実際に届いたラジオがこのような状態だった場合、ボクのような “中途半端な知識だけ持ち、修理できない人” にとってはどうすればいいんだろう…と、途方に暮れてしまうことになる。ましてや真空管ラジオの知識がまったくない人にとっては、硬化した電源コード一つでも、火災の原因になりかねない危険性をはらんでいる。
おまけにUL規格のアメリカ製真空管ラジオには、恐ろしいことにヒューズが存在しない。
「過電流が流れれば、球が切れるし、煙が出るだろうから、修理して部品と真空管を交換すれば ”No problem”さ♪ 」的なアメリカ流の考え方にも、真空管を貴重品と考える日本人と消耗品と割り切るアメリカ人の文化の違いを垣間見る。
いずれにしてもヴィンテージラジオは、 「外観と機能はオリジナルのままでキレイに、内部は安全第一で最新に」 というポリシーを持って、『自己責任』
で楽しみましょう。
当時、日本の技術は欧米の後追いのコピーだったため、アメリカで製造・販売された回路型式の製品が、何年か後に日本でも生産され売られていた。
従って同じ型式ならアメリカ製ラジオの方が絶対的に古い。言い換えれば経年変化による部品の劣化は、日本製より酷いということになり、「この型のラジオならこの部分は問題ない…」という経験値がアメリカ製には通用しないということになる。
一例を挙げれば、写真のラジオの型式は、メタル管とGT管混成構成のトランスレスタイプの5球スーパーである。日本でトランスレスタイプのラジオが普及するのは昭和30年代(1955年~)に入ってからなのだが、このアメリカ製ラジオの製造年は1940年代にまで遡る。つまり国産ラジオの感覚で捉えた回路型式では「新しいはず」のこのラジオの実年齢は、日本の時間軸でいえば「トランス付ST/MT管ラジオの時代と同等」ということになる。当然、部品の傷み具合も「日本のトランス付ST管ラジオなみ…」ということになり、写真のようにパーツの経年劣化はかなり進み、ペーパーコンデンサーが1個破裂している。ケミコンはブロック型ではなく、チューブラー型が付いている。メーカー製にしては、半田付けが下手くそで、半田がてんこ盛りになっている。内部の配線コードが、日本の戦前のラジオの様に、ビニールコードではなく布巻きのコードなんで、絶縁不良が不安である。
ところが…なんと!ラジオの電源を入れると、この状態でも一応「動作する」のだ。
もちろんリーク電流で電源パスのコンデンサは蝋がすっかりはげ落ちてこげた跡があったり、出力管のバイアスが小さくなって音の歪が多く聴きづらかったりするのだが、確かにとりあえず動作はするので「動作品!」あるいは「完動品」と称して売られているケースに出くわす。
専門知識のない古物販売業者からヤフオクに出品または売出される数十年前のヴィンテージラジオは、アメリカ製/日本製に限らず、この手のリスクがあることは致し方ない現実と言えよう。
しかし実際に届いたラジオがこのような状態だった場合、ボクのような “中途半端な知識だけ持ち、修理できない人” にとってはどうすればいいんだろう…と、途方に暮れてしまうことになる。ましてや真空管ラジオの知識がまったくない人にとっては、硬化した電源コード一つでも、火災の原因になりかねない危険性をはらんでいる。
おまけにUL規格のアメリカ製真空管ラジオには、恐ろしいことにヒューズが存在しない。
「過電流が流れれば、球が切れるし、煙が出るだろうから、修理して部品と真空管を交換すれば ”No problem”さ♪ 」的なアメリカ流の考え方にも、真空管を貴重品と考える日本人と消耗品と割り切るアメリカ人の文化の違いを垣間見る。
いずれにしてもヴィンテージラジオは、 「外観と機能はオリジナルのままでキレイに、内部は安全第一で最新に」 というポリシーを持って、『自己責任』
で楽しみましょう。
ヤフオクに出品されているアメリカ製真空管ラジオは、日本国内には流通していないGT管やメタル管が使用されていることが多く、外観はキレイでもIFTやパーツに問題がある場合もある。今回ご紹介するGE社のModel135は、1949年製造のGT管、メタル管、MT管混成トランスレスのラジオです。
ボクはインダストリアルデザインにかかわる仕事柄、フランス人でありながら「アメリカを作った男」と称されるレイモンド・ローウィなど先端を行くデザインを生み出し、モダンアートと工業製品を融合させた象徴とその変遷を感じ取れることが、真空管ラジオに魅せられる理由である。
日本では昭和30年代('55~65年)に企業や一般社会に、やっとその必要性が認知された時代といっていいと思います。'50年当時のアメリカのデザインは戦前から続いたストリームライン(流線型)に加えて、時代の華であったジェット機がモチーフとされ、クルマでいえば長く低く幅広く、そしてジェットエンジンのエアーインテークをイメージさせるスピンナー(回転部分の尖んがり)や垂直尾翼をイメージさせるテールフィンといった、無駄は多いが伸び伸びとしたデザインに特長があった。
一方ヨーロッパでは、この時代には余計な飾りやムダを廃したスリムで機能的なデザインに移行し始めていた。とは言え、石が主な建築資材であったヨーロッパでは、美しい曲面やカーブの表現にはマネできないほどの優れたものがある。
いずれにせよ、世界的に見てもこの年代は工業デザインのトレンドも大きな曲がり角にあったと言える。
ヤフオクで目にとまったこのラジオは、オーソドックスでありながら、健康的で大らかなアメリカ女性の曲線美を思わせる流面加工されたキャビネット&フロントのスピーカグリルと、やや安っぽく見える大型周波数インジケータのコントラストに惹かれ、気付いたら入札ボタンを押していた。
今回、出品者のコメントには
『動作品。感度良く鳴ります。選局ダイヤルの動きが少しゆるい感じです。古いものですので汚れ、キズ、有ります。3枚目写真の裏蓋にヒビが有ります』
と書かれており、実直さが感じられる。
しかしアメリカ製真空管ラジオの場合、まず真空管からしても日本の製品にまったく使われていなかったような球(ロクタルはともかくGT管、メタル管のラジオは当時の米国ではごく普通)だし、中古部品だっておいそれとは手に入らないため一抹の不安を抱えつつ、いつもの居酒屋orキャバクラ1軒分の予算からややオーバーしたものの、外国人パブで1セット過ごした程度の価格で落札できた(笑)
数日後、宅急便で届いた段ボールを開梱し、まず外観からチェックを開始した。キャビネットはベークライトではなく耐熱プラスチック製だ。小傷はあるものの50数年前のラジオとしてはかなりキレイな部類だ。清掃の時に何らかの化学洗浄液を使われたのか、拭いた跡にそって薄っすらと白いシミができている。ここはオーソドックスに3種類の粒子別コンパウンドを使い、丹念に磨いて薄皮を剥ぐしかないだろう。
裏蓋に貼られた真空管配置図を見ると・・・OH No~!
不安は的中。GT管、メタル管、MT管混成トランスレスタイプじゃないですか。
メーカー:General Electric Co. (N.Y) Model135
サイズ : 高さ(約21cm)×幅(約32cm)×奥行き(約18cm)
受信周波数 : 中波 530KC~1650KC
使用真空管 :12SA7(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)
12SQ7(検波&低周波増幅)、50L6 GT(電力増幅)、35Z5 GT/G(整流)
電 源 : AC 105-125V/50-60cycles
スピーカ: Permanent Magnet Dynamic (PDyn) Loudspeaker (moving coil)
1 W / 10.2 cm = 4 inch
アメリカ製ラジオの定番であるループアンテナの巻かれた裏蓋を開けると、うっすら埃を被ったシャーシの上に、オリジナル真空管が並ぶ。GEロゴが印刷されたオリジナル真空管のため、ミーハーのボクとしてはつい嬉しくなってくる。
この大きさのキャビネットに取付けられた、わずか4インチのパーマネントスピーカが妙にアンバランスだが、あのパーマネント・ダイナミック・スピーカ独自の心地よい音の世界にいざなってくれるだろうか?
動作テストのために、コンセントへプラグを挿し込み、電源をON!
GT管のヒーターにオレンジ色の灯りが点り、スピーカーから静かに空電ノイズが聴こえてくる。向かって右側のチューニング用ツマミを回すと、ノイズから浮かび上がるように放送が聴こえてくる♪ 日本の電圧だと抑え気味になるためなのか、トランスレスラジオ特有のノイズは少なく、ループアンテナのおかげで、感度もよい。アメリカ製ラジオらしい優しい音が、疲れた心を癒してくれる。
いつものようにAFN-Tokyo 810kHzに周波数を合わせると、超保守派 Rush Limbaugh氏による、アメリカ政治に関するトーク番組に続いて、21時~24時までの間、Urban Musicの流行を聞かせてくれる“The Touch ”やカントリー好きにはたまらない“Country ”、このラジオが日常的に使われていた時代の音楽番組“Oldies Radio”、ちょっと懐かしいClassic Rockがふんだんに聞ける“Rock of Ages”といった曜日ごとにテーマの異なるアメリカン・ミュージックに耳を傾けながら、無心にキャビネットを磨く時間は、「男の至福の空間」でもある。
ボクはインダストリアルデザインにかかわる仕事柄、フランス人でありながら「アメリカを作った男」と称されるレイモンド・ローウィなど先端を行くデザインを生み出し、モダンアートと工業製品を融合させた象徴とその変遷を感じ取れることが、真空管ラジオに魅せられる理由である。
日本では昭和30年代('55~65年)に企業や一般社会に、やっとその必要性が認知された時代といっていいと思います。'50年当時のアメリカのデザインは戦前から続いたストリームライン(流線型)に加えて、時代の華であったジェット機がモチーフとされ、クルマでいえば長く低く幅広く、そしてジェットエンジンのエアーインテークをイメージさせるスピンナー(回転部分の尖んがり)や垂直尾翼をイメージさせるテールフィンといった、無駄は多いが伸び伸びとしたデザインに特長があった。
一方ヨーロッパでは、この時代には余計な飾りやムダを廃したスリムで機能的なデザインに移行し始めていた。とは言え、石が主な建築資材であったヨーロッパでは、美しい曲面やカーブの表現にはマネできないほどの優れたものがある。
いずれにせよ、世界的に見てもこの年代は工業デザインのトレンドも大きな曲がり角にあったと言える。
ヤフオクで目にとまったこのラジオは、オーソドックスでありながら、健康的で大らかなアメリカ女性の曲線美を思わせる流面加工されたキャビネット&フロントのスピーカグリルと、やや安っぽく見える大型周波数インジケータのコントラストに惹かれ、気付いたら入札ボタンを押していた。
今回、出品者のコメントには
『動作品。感度良く鳴ります。選局ダイヤルの動きが少しゆるい感じです。古いものですので汚れ、キズ、有ります。3枚目写真の裏蓋にヒビが有ります』
と書かれており、実直さが感じられる。
しかしアメリカ製真空管ラジオの場合、まず真空管からしても日本の製品にまったく使われていなかったような球(ロクタルはともかくGT管、メタル管のラジオは当時の米国ではごく普通)だし、中古部品だっておいそれとは手に入らないため一抹の不安を抱えつつ、いつもの居酒屋orキャバクラ1軒分の予算からややオーバーしたものの、外国人パブで1セット過ごした程度の価格で落札できた(笑)
数日後、宅急便で届いた段ボールを開梱し、まず外観からチェックを開始した。キャビネットはベークライトではなく耐熱プラスチック製だ。小傷はあるものの50数年前のラジオとしてはかなりキレイな部類だ。清掃の時に何らかの化学洗浄液を使われたのか、拭いた跡にそって薄っすらと白いシミができている。ここはオーソドックスに3種類の粒子別コンパウンドを使い、丹念に磨いて薄皮を剥ぐしかないだろう。
裏蓋に貼られた真空管配置図を見ると・・・OH No~!
不安は的中。GT管、メタル管、MT管混成トランスレスタイプじゃないですか。
メーカー:General Electric Co. (N.Y) Model135
サイズ : 高さ(約21cm)×幅(約32cm)×奥行き(約18cm)
受信周波数 : 中波 530KC~1650KC
使用真空管 :12SA7(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)
12SQ7(検波&低周波増幅)、50L6 GT(電力増幅)、35Z5 GT/G(整流)
電 源 : AC 105-125V/50-60cycles
スピーカ: Permanent Magnet Dynamic (PDyn) Loudspeaker (moving coil)
1 W / 10.2 cm = 4 inch
アメリカ製ラジオの定番であるループアンテナの巻かれた裏蓋を開けると、うっすら埃を被ったシャーシの上に、オリジナル真空管が並ぶ。GEロゴが印刷されたオリジナル真空管のため、ミーハーのボクとしてはつい嬉しくなってくる。
この大きさのキャビネットに取付けられた、わずか4インチのパーマネントスピーカが妙にアンバランスだが、あのパーマネント・ダイナミック・スピーカ独自の心地よい音の世界にいざなってくれるだろうか?
動作テストのために、コンセントへプラグを挿し込み、電源をON!
GT管のヒーターにオレンジ色の灯りが点り、スピーカーから静かに空電ノイズが聴こえてくる。向かって右側のチューニング用ツマミを回すと、ノイズから浮かび上がるように放送が聴こえてくる♪ 日本の電圧だと抑え気味になるためなのか、トランスレスラジオ特有のノイズは少なく、ループアンテナのおかげで、感度もよい。アメリカ製ラジオらしい優しい音が、疲れた心を癒してくれる。
いつものようにAFN-Tokyo 810kHzに周波数を合わせると、超保守派 Rush Limbaugh氏による、アメリカ政治に関するトーク番組に続いて、21時~24時までの間、Urban Musicの流行を聞かせてくれる“The Touch ”やカントリー好きにはたまらない“Country ”、このラジオが日常的に使われていた時代の音楽番組“Oldies Radio”、ちょっと懐かしいClassic Rockがふんだんに聞ける“Rock of Ages”といった曜日ごとにテーマの異なるアメリカン・ミュージックに耳を傾けながら、無心にキャビネットを磨く時間は、「男の至福の空間」でもある。
この2年あまりヴィンテージラジオに魅せられ、とりわけ東芝(マツダ)かなりやシリーズの蒐集を目的にヤフオクを徘徊していたが、多くの種類を手に入れることができた。そして最近、目に止まるのは、’40~50年代のアメリカ製ヴィンテージラジオである。
アメリカでは商業ベースに放送局とラジオ受信機が発展した永い歴史的また文化的な背景もあり、アメリカ製真空管ラジオは、その種類の豊富さや時代ごとにデザインも多種多様であり、ラジオ蒐集家に限らず、ヴィンテージ・ファンには魅力的なアイティムだ。
先日も日テレのドラマ“働きマン”主演の菅野美穂に似た(?)某女性雑誌の編集者女史と鍋を挟んで日本酒を一献酌み交わしていたとき、ヴィンテージ・ファッションの話題になり、ボクは50年前の真空管ラジオを蒐集し、レストアしていることを告げた。 彼女は一瞬、事情を飲み込めず戸惑った表情だったが、携帯電話に収めた写真を見せて説明すると、感嘆の声と興味津々の表情へと変貌した。
「へぇ~、こんな趣味があるんですか!店長、ちょっとカッコイイですね♪」
ん?カッコイイ?? ・・・ファッショナブルでアウトドア派のイケメンの俺様が、こんなオタクっぽくて、爺くさい趣味をやってるってキモイ!って皮肉ってるんじゃないの?
酔いも手伝って、そう詰問したところ、新潟産純米酒をぐい飲みに注ぎながら、彼女は目を輝かせて一気にまくしたてた。
「ファッションだってアンティークなエッセンスを今風にアレンジして、流行が生まれるんですよ!その繰り返し・・・ だからヴィンテージ物がこんなに人気あるんですよ。
それを分ってる人たちが増えてるから、ヴィンテージ ファッションやアンティーク小物、家具、それにアンティークをコンセプトにしたオシャレなレストランやカフェ、ショップが増えてるじゃないですか! 誰からも見向きもされないで、何十年もほっとかれたラジオを修理して、音楽を聴くなんて、すごくオシャレですよ♪」
国産、外国製を問わず、真空管ラジオは、筐体の大きな木製キャビネットより、比較的小型であるプラスチック製キャビネットに秀逸なデザインが多く、取扱いも楽そうなため人気は高い。
アメリカのスタンダード、デキシーランド・ジャズやビッグオーケストラ、オールディーズといった古い音楽を聴くのなら、なんといってもこの種の真空管ラジオを通して聴く音が、雰囲気も出て最高だ。音質の是非を含め、ミニコンポなどにCDを入れて聴くのとは「天と地」ほどの違いがある。
たぶん、そんな理由からだろう・・・最近ではヤフオクでの出品も増えてきたアメリカ製真空管ラジオをいろいろ眺めていると、パソコンのキーに手が伸びて、自分の意識とは無関係に、つい入札ボタンを押してしまっていたりする
ところが米国製ラジオを実際に入手してみると、いろいろ問題点があることもまた事実。
そこで実際にオークションで落札し、修理した経験や諸先輩方の話から気がついたことを次回から幾つか書いてみる。
アメリカでは商業ベースに放送局とラジオ受信機が発展した永い歴史的また文化的な背景もあり、アメリカ製真空管ラジオは、その種類の豊富さや時代ごとにデザインも多種多様であり、ラジオ蒐集家に限らず、ヴィンテージ・ファンには魅力的なアイティムだ。
先日も日テレのドラマ“働きマン”主演の菅野美穂に似た(?)某女性雑誌の編集者女史と鍋を挟んで日本酒を一献酌み交わしていたとき、ヴィンテージ・ファッションの話題になり、ボクは50年前の真空管ラジオを蒐集し、レストアしていることを告げた。 彼女は一瞬、事情を飲み込めず戸惑った表情だったが、携帯電話に収めた写真を見せて説明すると、感嘆の声と興味津々の表情へと変貌した。
「へぇ~、こんな趣味があるんですか!店長、ちょっとカッコイイですね♪」
ん?カッコイイ?? ・・・ファッショナブルでアウトドア派のイケメンの俺様が、こんなオタクっぽくて、爺くさい趣味をやってるってキモイ!って皮肉ってるんじゃないの?
酔いも手伝って、そう詰問したところ、新潟産純米酒をぐい飲みに注ぎながら、彼女は目を輝かせて一気にまくしたてた。
「ファッションだってアンティークなエッセンスを今風にアレンジして、流行が生まれるんですよ!その繰り返し・・・ だからヴィンテージ物がこんなに人気あるんですよ。
それを分ってる人たちが増えてるから、ヴィンテージ ファッションやアンティーク小物、家具、それにアンティークをコンセプトにしたオシャレなレストランやカフェ、ショップが増えてるじゃないですか! 誰からも見向きもされないで、何十年もほっとかれたラジオを修理して、音楽を聴くなんて、すごくオシャレですよ♪」
国産、外国製を問わず、真空管ラジオは、筐体の大きな木製キャビネットより、比較的小型であるプラスチック製キャビネットに秀逸なデザインが多く、取扱いも楽そうなため人気は高い。
アメリカのスタンダード、デキシーランド・ジャズやビッグオーケストラ、オールディーズといった古い音楽を聴くのなら、なんといってもこの種の真空管ラジオを通して聴く音が、雰囲気も出て最高だ。音質の是非を含め、ミニコンポなどにCDを入れて聴くのとは「天と地」ほどの違いがある。
たぶん、そんな理由からだろう・・・最近ではヤフオクでの出品も増えてきたアメリカ製真空管ラジオをいろいろ眺めていると、パソコンのキーに手が伸びて、自分の意識とは無関係に、つい入札ボタンを押してしまっていたりする
ところが米国製ラジオを実際に入手してみると、いろいろ問題点があることもまた事実。
そこで実際にオークションで落札し、修理した経験や諸先輩方の話から気がついたことを次回から幾つか書いてみる。
今回は、先輩&友人である“音響の匠”氏が入手されたZENITH社製mt管クロックラジオ Model K-515 (1953年製)の氏ご自身による修復工程を突撃レポートします。ちなみにこのラジオ、先にご紹介したL-518Wと酷似するデザインは、同機の廉価版と思われる。
久し振りのラジオの修復です。機種は前回と同メーカーのZENITHですが、型番は不明です。
今回も型番も判らず、配線図無しでの修復ですが、まぁ何とかなるでしょう・・・。
先に掲載されていたL-518Wの廉価機種と思われます。
ラジオの外観は経年変化の割にはいい方かも知れませんが、裏蓋割れ、電源コード切断等。
本体を逆さまにしたら、いきなり同調用掛け糸の切れたバネが落ちてきました。
時計部分は、ツマミが欠損し、キャビネットと時計のガラスカバーの合わせ部分も剥離しています。
キャビネット裏蓋を外し、内部を見ると明らかに素人が修理した痕跡の内容に、唖然!
コンセントの取り付け部の線材処理は、今にもショートしそうだし、電源コードは嗚呼何とセロテープで絶縁されています。危険きわまりない修理方法です。
真空管はすべてオリジナルではないメーカー製のものに交換されています。
ブロックコンデンサーはケースの上部に当たる位の大きな物と交換済。
これは、ラッキー♪ オーディオ好きな人ならご存知のスプラグ製です。但しこれで、音が良くなるとは思いませんが・・・(笑)
ケースからシャーシを取り出し各部を点検すると、各種コンデンサーも交換されていました。店長所持のModel L-518はゼニス名が印刷されているコンデンサーですが、この機種はオリジナルも他メーカーのパーツが使用されています。
よく見るとオリジナルから交換されている電解コンデンサーの回路部分は、配線がタッチしています。電源が入らないのでショートは免れているのは、不幸中の幸い?!
ブロックコンデンサー付近の配線の処理を済ませて、まず電源が入るようにしなくてはいけません。
スイッチは時計部分にあるので、時計を外さなければ点検もできません。簡単に外せるだろうと思っていましたが、アメリカ製品なのでインチネジ・・・すんなりと事は進みません。
ネジ山のあるタイプならプラスでもマイナスでも何とか回すことはできるのですが、写真のように狭いため、ラジオペンチは入っても回す事ができません。
インチネジ用のBOXセットを購入し、時計部を外して点検。スイッチの導通を確認しましたが案の定、ON/OFFしても導通がありません。接点は酸化して、真っ黒になっています。これでは電源は入りません・・・紙ヤスリで接点を磨き補修しました。
シャシー内部の回路を確認して、電源ON! この瞬間が一番緊張します。
真空管がほんのりと点灯したので、ホッとしましたが、暫く待っても、煙も出ないし、いやな臭いもしないので一歩前進です。ただし音も出ません(笑)
後は電源、出力回路の修理ですが、出力管グリッドに数ボルトの電圧がカップリングコンデンサーの交換で音出しはOKです。
ところが肝心なラジオ放送は聞こえません。やはり前回と同様、このラジオとも七転八倒、付き合うことになるのかと嫌な予感です。
キャビネットからシャーシを取外した時点の目視では分かっていたのですが、バリコンの真鍮部に青錆びがあります。
手でバリコンを回してみても、固着して指先では回りません。
バリコンを外して点検すると、ローター部のベアリングが錆びて動かないうえに、羽は曲がっていたため、この修理だけでも、一晩かかりました。
バリコン取り付け用ゴムブッシュは劣化してシャシーと当たっていたのですべて交換し、糸も掛けかえて正常(バリコン部)に復旧しました。
バリコンをはじめ、シャーシ上のパーツとクロック部は正常に復旧しました。
ついでにシャーシの外部・内部、真空管等に堆積している50年分の埃をコンプレッサーで吹き飛ばしてクリーニングすると、見違えるほど綺麗になりました。ちなみに発信コイルは蜘蛛の巣で真っ白。
クロック部のノブは、手持ちのジャンク品を流用し、それらしく仕上がりました。
次はシャーシ内部の修復です。コンデンサー類は、フィルムコンデンサに交換したほうが安全のためにはよいのでしょうが、自分で使用するため、何かあっても対処できます。
また当時の音を再現したいので、部品交換も今回は音声回路のカップリングコンデンサーだけに留めておきます。最近のコンデンサーでは今風の音になるので、いずれ手持ちのスプラグのコンデンサーかオイルコンデンサーに交換しようと思います。(注釈:このあたりが、音響の匠氏のこだわりっすね~)
真空管ソケットの足に半田不良が見受けられたので手直しを行い、修復の目途はつきました。
バリコン等を修正したので周波数帯域が変化し、また感度不良の為、トラッキング調整が必要です。これは手持ちの各種測定器を使って完了。
広大なアメリカでラジオを受信するには、受信感度の性能がもとめられるのでしょう・・・アメリカ製ラジオはループアンテナがあるので、調整すると感度は随分よくなりました。
あとは根気と体力勝負のケース磨きが残っています。
最近、腕が腱鞘炎ぎみなので、ケース修復のプロ?である店長に外注しました。
店長は、「直ったラジオをエージングテストしながらケースを磨く時間が、至福の時なんじゃないっすか~」と言います(笑)。
そんな訳で、以上、音響の匠氏の修復レポートを掲載させていただきました。
音響の匠氏の当時の『音』へのこだわりと、ラジオに対するある程度の『割り切り方』は、さすがこの道、ウン十年の音響機器エンジニアです。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ところで、このゼニスのラジオに民放ラジオの騒々しい番組は似合いません。
アタクシのお薦めは、在日米軍放送 AFN Tokyo / Eagle810 ( 810kHz)で、毎週日曜日の夜に放送されている「Oldies Radio」。
BGM代わりに聴いていると、この番組でよく流れるのは、ニール・ダイヤモンドです。
「Sweet Caroline(Good Times Never Seemed So Good)」のSweet Caroline~というサビの部分の後で、つい「ウォウォウ~」と口ずさんでいる自分に気付き、もう完全に’50年代の東海岸気分に浸かってしまってます。「Sweet Caroline」や「Cherry, Cherry」、「Craklin 'Rose」などもよく耳にします。
音響の匠氏は、例のサウンドシステムと’50年代のU.S ポップやジャズのレコードを山のようにお持ちなのに、あえて当時のラジオ音質を楽しむその余裕に、『男のロマン』を感じますね~♪
久し振りのラジオの修復です。機種は前回と同メーカーのZENITHですが、型番は不明です。
今回も型番も判らず、配線図無しでの修復ですが、まぁ何とかなるでしょう・・・。
先に掲載されていたL-518Wの廉価機種と思われます。
ラジオの外観は経年変化の割にはいい方かも知れませんが、裏蓋割れ、電源コード切断等。
本体を逆さまにしたら、いきなり同調用掛け糸の切れたバネが落ちてきました。
時計部分は、ツマミが欠損し、キャビネットと時計のガラスカバーの合わせ部分も剥離しています。
キャビネット裏蓋を外し、内部を見ると明らかに素人が修理した痕跡の内容に、唖然!
コンセントの取り付け部の線材処理は、今にもショートしそうだし、電源コードは嗚呼何とセロテープで絶縁されています。危険きわまりない修理方法です。
真空管はすべてオリジナルではないメーカー製のものに交換されています。
ブロックコンデンサーはケースの上部に当たる位の大きな物と交換済。
これは、ラッキー♪ オーディオ好きな人ならご存知のスプラグ製です。但しこれで、音が良くなるとは思いませんが・・・(笑)
ケースからシャーシを取り出し各部を点検すると、各種コンデンサーも交換されていました。店長所持のModel L-518はゼニス名が印刷されているコンデンサーですが、この機種はオリジナルも他メーカーのパーツが使用されています。
よく見るとオリジナルから交換されている電解コンデンサーの回路部分は、配線がタッチしています。電源が入らないのでショートは免れているのは、不幸中の幸い?!
ブロックコンデンサー付近の配線の処理を済ませて、まず電源が入るようにしなくてはいけません。
スイッチは時計部分にあるので、時計を外さなければ点検もできません。簡単に外せるだろうと思っていましたが、アメリカ製品なのでインチネジ・・・すんなりと事は進みません。
ネジ山のあるタイプならプラスでもマイナスでも何とか回すことはできるのですが、写真のように狭いため、ラジオペンチは入っても回す事ができません。
インチネジ用のBOXセットを購入し、時計部を外して点検。スイッチの導通を確認しましたが案の定、ON/OFFしても導通がありません。接点は酸化して、真っ黒になっています。これでは電源は入りません・・・紙ヤスリで接点を磨き補修しました。
シャシー内部の回路を確認して、電源ON! この瞬間が一番緊張します。
真空管がほんのりと点灯したので、ホッとしましたが、暫く待っても、煙も出ないし、いやな臭いもしないので一歩前進です。ただし音も出ません(笑)
後は電源、出力回路の修理ですが、出力管グリッドに数ボルトの電圧がカップリングコンデンサーの交換で音出しはOKです。
ところが肝心なラジオ放送は聞こえません。やはり前回と同様、このラジオとも七転八倒、付き合うことになるのかと嫌な予感です。
キャビネットからシャーシを取外した時点の目視では分かっていたのですが、バリコンの真鍮部に青錆びがあります。
手でバリコンを回してみても、固着して指先では回りません。
バリコンを外して点検すると、ローター部のベアリングが錆びて動かないうえに、羽は曲がっていたため、この修理だけでも、一晩かかりました。
バリコン取り付け用ゴムブッシュは劣化してシャシーと当たっていたのですべて交換し、糸も掛けかえて正常(バリコン部)に復旧しました。
バリコンをはじめ、シャーシ上のパーツとクロック部は正常に復旧しました。
ついでにシャーシの外部・内部、真空管等に堆積している50年分の埃をコンプレッサーで吹き飛ばしてクリーニングすると、見違えるほど綺麗になりました。ちなみに発信コイルは蜘蛛の巣で真っ白。
クロック部のノブは、手持ちのジャンク品を流用し、それらしく仕上がりました。
次はシャーシ内部の修復です。コンデンサー類は、フィルムコンデンサに交換したほうが安全のためにはよいのでしょうが、自分で使用するため、何かあっても対処できます。
また当時の音を再現したいので、部品交換も今回は音声回路のカップリングコンデンサーだけに留めておきます。最近のコンデンサーでは今風の音になるので、いずれ手持ちのスプラグのコンデンサーかオイルコンデンサーに交換しようと思います。(注釈:このあたりが、音響の匠氏のこだわりっすね~)
真空管ソケットの足に半田不良が見受けられたので手直しを行い、修復の目途はつきました。
バリコン等を修正したので周波数帯域が変化し、また感度不良の為、トラッキング調整が必要です。これは手持ちの各種測定器を使って完了。
広大なアメリカでラジオを受信するには、受信感度の性能がもとめられるのでしょう・・・アメリカ製ラジオはループアンテナがあるので、調整すると感度は随分よくなりました。
あとは根気と体力勝負のケース磨きが残っています。
最近、腕が腱鞘炎ぎみなので、ケース修復のプロ?である店長に外注しました。
店長は、「直ったラジオをエージングテストしながらケースを磨く時間が、至福の時なんじゃないっすか~」と言います(笑)。
そんな訳で、以上、音響の匠氏の修復レポートを掲載させていただきました。
音響の匠氏の当時の『音』へのこだわりと、ラジオに対するある程度の『割り切り方』は、さすがこの道、ウン十年の音響機器エンジニアです。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ところで、このゼニスのラジオに民放ラジオの騒々しい番組は似合いません。
アタクシのお薦めは、在日米軍放送 AFN Tokyo / Eagle810 ( 810kHz)で、毎週日曜日の夜に放送されている「Oldies Radio」。
BGM代わりに聴いていると、この番組でよく流れるのは、ニール・ダイヤモンドです。
「Sweet Caroline(Good Times Never Seemed So Good)」のSweet Caroline~というサビの部分の後で、つい「ウォウォウ~」と口ずさんでいる自分に気付き、もう完全に’50年代の東海岸気分に浸かってしまってます。「Sweet Caroline」や「Cherry, Cherry」、「Craklin 'Rose」などもよく耳にします。
音響の匠氏は、例のサウンドシステムと’50年代のU.S ポップやジャズのレコードを山のようにお持ちなのに、あえて当時のラジオ音質を楽しむその余裕に、『男のロマン』を感じますね~♪
ずっと憧れていたアメリカのゼニス社製クロック・ラジオを手に入れた。1920年に商業放送からスタートした「自由の国・アメリカ」では、ラジオ固有のデザインを持ちはじめ、'30年代には合成樹脂を使い、アールデコ・スタイルの魅力的なデザインの製品を世に送り出した。
ゼニス(ZENITH)は、1918年に創業されたシカゴに拠点を置く電器メーカーで、RCA、GE等と共にアメリカを代表する最も有名なラジオメーカーでもあり、’30年代からラジオのキャビネットへ積極的にプラスチックを採用し、多種多様なデザインのラジオを世に送り出していた。’50年代に入るとクロックラジオを開発し、多くの機種を発売しています。
当時のゼニスの雑誌のクロックラジオの広告には"New Clock Radio with a Host of Helping Hands" "Out here at Zenith we never forget that the big difference in clock radios is in the radio itself!"と、ラジオと時計機能を癒合したことによる新しい生活スタイルの利便性を謳っている。
'57年に発売されたゼニスのクロックラジオ Model L-518W は、正面右にラジオのダイアル、左に時計を配し、その内側中央に4インチ(10.2cm)のパーマネント・ダイナミックスピーカー、左右にボリュームツマミとチューニングダイアルツマミをレイアウトした、シンメトリーなデザインだ。このスタイルは、ZENITH社製クロックラジオの基本形であり、お馴染みのボクシーな立方体デザインを中心に、このL518のような流麗なデザインも含め、数々のバリエーションが発表されています。
▲ZENITH DELUXEの文字とエンブレムが高級感を醸し出すL-518
▲DELUXEの文字とエンブレムのない廉価版515(左)と5G03(右)
L-518Wの時計には3つのノブがあり、時計正面左のノブはラジオのON/OFF及びラジオのアラーム設定スイッチ、右側のノブはアラームON/OFF、正面下はスリープスイッチとなっている。
裏蓋に“FOR BEST RESULTS USE ZENITH QUALITY TUBES”と書かれた背面には、時刻あわせノブとタイマー機能に連動するAC出力コンセントがあり、タイマーと同期して卓上ランプ等をON/OFFする機能を備えているクロックラジオは、主にベッドサイドラジオとして使われていた。ちなみに時計は60Hzの交流モーターで駆動されているため、50Hzの東日本では遅れてしまい実用になりません。
電源の定格は115V.A.C/60Hz、検波&低周波増幅管に珍しい12AT6が使用されている。出力電圧は12AT6の方が高く取れるが、トランスレスの出力管は改善が進み、高いドライブ電圧を必要としなくなったため、12AV6が主流となった。
業者とおぼしき方が数万円の高値でオークションに出品されている、ピカピカに磨かれた“カッコいい” アメリカ製ヴィンテージラジオをポンっと買うのは、ボクの趣味ではない。これでは面白くないというか、趣味のプロセスとしての美しさがまったくない。ラジオを探し、そして手に入れるまでの「思い入れ」そのものが、ある種の物語になっていなければ意味はないのではないか。それはラジオという物語をめぐる、もうひとつの物語でもある。
出品者のコメントには「ラジオ動作確認済み、ちゃんと聞こえます。 時計は動きません」と書かれており、時計が不動品だったためか、いつもの予算内で落札できた♪
メーカー:ZENITH RADIO Co. (Chicago) Model L518W
サイズ : 高さ(約13cm)×幅(約33cm)×奥行き(約15.5cm)
受信周波数 : 中波 530KC~1650KC
使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BD6(中間周波数増幅)、12AT6(検波&低周波増幅)、50C5(電力増幅)、35W4(整流)
電 源 : AC 115V/60Hz
オークションで落札後、届いた段ボールを開梱しまず外観からチェックを開始した。キャビネットの塗装はオリジナルのままであり、艶もある。大きな傷、エンブレムや装飾部品等の欠損は見られない。小傷はあるものの50年前のラジオとしてはかなりキレイだ。
アメリカ製ラジオの定番であるループアンテナの巻かれた裏蓋を開けると、Zenithのロゴのついたオリジナル真空管がうっすら埃を被って並ぶ。
交流モータ駆動のタイマーユニットとともに一部分錆びの浮いているシャーシには、タイマーと連動するAC出力コンセント、RADIO/PHONO切替スイッチ、PHONO入力用RCAピンジャックが取付けられ、当時のベット・サイドラジオの機能をうかがい知ることができる。
時計が動かないのは、モーターの断線ならいいのですが、回転軸が錆びてロックされていると、モーターが発熱して発火の原因になりますので、導通を確認後、配線を切らないと危険です。その作業は、先輩&友人である“音響の匠氏”に依頼し、モーターコイルの断線処置を行っていただいた。
氏曰く、案の定、モーターに導通があり、真っ黒になっていたとのこと! 危ないところだった・・・。
モータコイルを断線処理してもらったL-518Wを持ち帰り、シャーシをキャビネットから取外し、目視点検を開始。真空管はすべてZenithブランドのオリジナル。バリコンの絶縁ブッシュも大丈夫だ。
シャーシ内部もマニアが修復した痕跡はまったく無く、Zenithロゴの入ったオリジナルのペーパーコンデンサが使われており、状態はかなりいい♪
キャビネット内部とシャーシを清掃後、100Vの家庭用コンセントから通電テストを行ってみた。時計正面左のラジオのON/OFFノブをON!
ヒーターの灯りが点り、しばらくするとスピーカーから静かな空電ノイズが聴こえ始めた。下の周波数から同調ダイヤルをゆっくり回すと、キャビネット正面右側の周波数表示盤も動く。夕方だったため、地元のNHK、民放中継局(出力1kW)以外にも数局の放送が聴こえてくる。 ループ型アンテナコイルのおかげで、感度はかなり良好だ。
ゼニス(ZENITH)は、1918年に創業されたシカゴに拠点を置く電器メーカーで、RCA、GE等と共にアメリカを代表する最も有名なラジオメーカーでもあり、’30年代からラジオのキャビネットへ積極的にプラスチックを採用し、多種多様なデザインのラジオを世に送り出していた。’50年代に入るとクロックラジオを開発し、多くの機種を発売しています。
当時のゼニスの雑誌のクロックラジオの広告には"New Clock Radio with a Host of Helping Hands" "Out here at Zenith we never forget that the big difference in clock radios is in the radio itself!"と、ラジオと時計機能を癒合したことによる新しい生活スタイルの利便性を謳っている。
'57年に発売されたゼニスのクロックラジオ Model L-518W は、正面右にラジオのダイアル、左に時計を配し、その内側中央に4インチ(10.2cm)のパーマネント・ダイナミックスピーカー、左右にボリュームツマミとチューニングダイアルツマミをレイアウトした、シンメトリーなデザインだ。このスタイルは、ZENITH社製クロックラジオの基本形であり、お馴染みのボクシーな立方体デザインを中心に、このL518のような流麗なデザインも含め、数々のバリエーションが発表されています。
▲ZENITH DELUXEの文字とエンブレムが高級感を醸し出すL-518
▲DELUXEの文字とエンブレムのない廉価版515(左)と5G03(右)
L-518Wの時計には3つのノブがあり、時計正面左のノブはラジオのON/OFF及びラジオのアラーム設定スイッチ、右側のノブはアラームON/OFF、正面下はスリープスイッチとなっている。
裏蓋に“FOR BEST RESULTS USE ZENITH QUALITY TUBES”と書かれた背面には、時刻あわせノブとタイマー機能に連動するAC出力コンセントがあり、タイマーと同期して卓上ランプ等をON/OFFする機能を備えているクロックラジオは、主にベッドサイドラジオとして使われていた。ちなみに時計は60Hzの交流モーターで駆動されているため、50Hzの東日本では遅れてしまい実用になりません。
電源の定格は115V.A.C/60Hz、検波&低周波増幅管に珍しい12AT6が使用されている。出力電圧は12AT6の方が高く取れるが、トランスレスの出力管は改善が進み、高いドライブ電圧を必要としなくなったため、12AV6が主流となった。
業者とおぼしき方が数万円の高値でオークションに出品されている、ピカピカに磨かれた“カッコいい” アメリカ製ヴィンテージラジオをポンっと買うのは、ボクの趣味ではない。これでは面白くないというか、趣味のプロセスとしての美しさがまったくない。ラジオを探し、そして手に入れるまでの「思い入れ」そのものが、ある種の物語になっていなければ意味はないのではないか。それはラジオという物語をめぐる、もうひとつの物語でもある。
出品者のコメントには「ラジオ動作確認済み、ちゃんと聞こえます。 時計は動きません」と書かれており、時計が不動品だったためか、いつもの予算内で落札できた♪
メーカー:ZENITH RADIO Co. (Chicago) Model L518W
サイズ : 高さ(約13cm)×幅(約33cm)×奥行き(約15.5cm)
受信周波数 : 中波 530KC~1650KC
使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BD6(中間周波数増幅)、12AT6(検波&低周波増幅)、50C5(電力増幅)、35W4(整流)
電 源 : AC 115V/60Hz
オークションで落札後、届いた段ボールを開梱しまず外観からチェックを開始した。キャビネットの塗装はオリジナルのままであり、艶もある。大きな傷、エンブレムや装飾部品等の欠損は見られない。小傷はあるものの50年前のラジオとしてはかなりキレイだ。
アメリカ製ラジオの定番であるループアンテナの巻かれた裏蓋を開けると、Zenithのロゴのついたオリジナル真空管がうっすら埃を被って並ぶ。
交流モータ駆動のタイマーユニットとともに一部分錆びの浮いているシャーシには、タイマーと連動するAC出力コンセント、RADIO/PHONO切替スイッチ、PHONO入力用RCAピンジャックが取付けられ、当時のベット・サイドラジオの機能をうかがい知ることができる。
時計が動かないのは、モーターの断線ならいいのですが、回転軸が錆びてロックされていると、モーターが発熱して発火の原因になりますので、導通を確認後、配線を切らないと危険です。その作業は、先輩&友人である“音響の匠氏”に依頼し、モーターコイルの断線処置を行っていただいた。
氏曰く、案の定、モーターに導通があり、真っ黒になっていたとのこと! 危ないところだった・・・。
モータコイルを断線処理してもらったL-518Wを持ち帰り、シャーシをキャビネットから取外し、目視点検を開始。真空管はすべてZenithブランドのオリジナル。バリコンの絶縁ブッシュも大丈夫だ。
シャーシ内部もマニアが修復した痕跡はまったく無く、Zenithロゴの入ったオリジナルのペーパーコンデンサが使われており、状態はかなりいい♪
キャビネット内部とシャーシを清掃後、100Vの家庭用コンセントから通電テストを行ってみた。時計正面左のラジオのON/OFFノブをON!
ヒーターの灯りが点り、しばらくするとスピーカーから静かな空電ノイズが聴こえ始めた。下の周波数から同調ダイヤルをゆっくり回すと、キャビネット正面右側の周波数表示盤も動く。夕方だったため、地元のNHK、民放中継局(出力1kW)以外にも数局の放送が聴こえてくる。 ループ型アンテナコイルのおかげで、感度はかなり良好だ。
アメリカの繁栄を象徴する1950年代初頭、すでにACモーターを使ったアラーム・クロックとmt管トランスレス真空管ラジオを融合したベークライト製キャビネットの小型クロック・ラジオが普及していたことには驚かされる。今回ご紹介するGE(General Electric)社のModel 518Fは、1951年製造のmt管クロック・ラジオです。
あのトーマス・エジソンを創業者の一人とする、今では世界最大のコングロマリット(複合企業)となったGE(General Electric)は、1920年代初頭にアメリカでラジオ放送が始まっていらい、多くの民生用ラジオを世に送り出したメーカーの一つである。
それにしても日本ではまだ、一家に1台、大きな木箱に組み込まれたST管ラジオが主流だった'50年代はじめ、すでにアメリカではACモーターを使ったアラーム・クロックとmt管トランスレス真空管ラジオを組合わせたベークライト製キャビネットのベッドサイド用小型クロック・ラジオが普及していたことには驚きです!
アメリカでは、1940~50年代にかけて、魅力的な造形美を持つミッドセンチュリーを代表する斬新で優れたデザインの真空管ラジオが発表され、’50年代後半から日本に導入されたプラスチック製キャビネットmt管ラジオのデザインにも影響を及ぼした。
Model 518Fのキャビネットの前面左半分にレイアウトされた時計には、3つのノブがあり、時計正面上のノブはアラームのON/OFF、右側のノブはスリープスイッチ、正面下はラジオのON/OFF及びラジオのアラーム設定スイッチとなっている。
またキャビネット中央上部に円盤状の選局ダイヤルを配置するスタイルは、後年、日本の東芝5LA-28や かなりやEなどに採用されている。
キャビネット背面には、時刻あわせノブとタイマー機能と連動するAC出力コンセントがあり、タイマーと同期して卓上ランプ等をON/OFFする機能も備えたクロックラジオは、主にベッドサイドラジオとして使われていた。ちなみに時計は60Hzの交流モーターで駆動されているため、50Hzの東日本では遅れてしまい実用になりません。
オークションに出品されているアメリカ製真空管ラジオは、日本国内には流通していないGT管やメタル管が使用されていることも多く、 また50年代のアメリカ製真空管ラジオは外観はキレイでもIFTに問題がある場合もあり、修復・レストアを行なうには難易度が高いため注意が必要です。。
今回、出品者のコメントには
『時計動作、 ラジオ部分ボリュームガリ無し。 受信状態大変良好ですが建物、地域条件に拠り変化しますのでご了承の上、入札ください。天板右側に9cm程にヒビ補修跡あり。(2枚目写真) スリープ機能つまみ割れ 修理要』
と実直なコメントが書かれており、他に入札者もなかったため、いつもの予算内で落札できました♪
メーカー:General Electric Co. (N.Y) ALARM CLOCK Model 518F
サイズ : 高さ(約16cm)×幅(約29cm)×奥行き(約15cm)
受信周波数 : 中波 530KC~1650KC
使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、50C5(電力増幅)、35W4(整流)
電 源 : AC 115V/60Hz
オークションで落札後、届いた段ボールを開梱しまず外観からチェックを開始した。キャビネットの塗装はオリジナルのままであり、艶もある。キャビネット上部の傷の補修後は目立たず、ツマミの欠損は接着剤で補修可能だ。小傷はあるものの50数年前のラジオとしてはかなりキレイな部類だろう。
キャビネット内部は年代相応の汚れはあるものの、シャーシの錆や手を加えられた様子はない。シャーシ上の真空管ソケットをとりまく凸状の構造物が気になる。
あのトーマス・エジソンを創業者の一人とする、今では世界最大のコングロマリット(複合企業)となったGE(General Electric)は、1920年代初頭にアメリカでラジオ放送が始まっていらい、多くの民生用ラジオを世に送り出したメーカーの一つである。
それにしても日本ではまだ、一家に1台、大きな木箱に組み込まれたST管ラジオが主流だった'50年代はじめ、すでにアメリカではACモーターを使ったアラーム・クロックとmt管トランスレス真空管ラジオを組合わせたベークライト製キャビネットのベッドサイド用小型クロック・ラジオが普及していたことには驚きです!
アメリカでは、1940~50年代にかけて、魅力的な造形美を持つミッドセンチュリーを代表する斬新で優れたデザインの真空管ラジオが発表され、’50年代後半から日本に導入されたプラスチック製キャビネットmt管ラジオのデザインにも影響を及ぼした。
Model 518Fのキャビネットの前面左半分にレイアウトされた時計には、3つのノブがあり、時計正面上のノブはアラームのON/OFF、右側のノブはスリープスイッチ、正面下はラジオのON/OFF及びラジオのアラーム設定スイッチとなっている。
またキャビネット中央上部に円盤状の選局ダイヤルを配置するスタイルは、後年、日本の東芝5LA-28や かなりやEなどに採用されている。
キャビネット背面には、時刻あわせノブとタイマー機能と連動するAC出力コンセントがあり、タイマーと同期して卓上ランプ等をON/OFFする機能も備えたクロックラジオは、主にベッドサイドラジオとして使われていた。ちなみに時計は60Hzの交流モーターで駆動されているため、50Hzの東日本では遅れてしまい実用になりません。
オークションに出品されているアメリカ製真空管ラジオは、日本国内には流通していないGT管やメタル管が使用されていることも多く、 また50年代のアメリカ製真空管ラジオは外観はキレイでもIFTに問題がある場合もあり、修復・レストアを行なうには難易度が高いため注意が必要です。。
今回、出品者のコメントには
『時計動作、 ラジオ部分ボリュームガリ無し。 受信状態大変良好ですが建物、地域条件に拠り変化しますのでご了承の上、入札ください。天板右側に9cm程にヒビ補修跡あり。(2枚目写真) スリープ機能つまみ割れ 修理要』
と実直なコメントが書かれており、他に入札者もなかったため、いつもの予算内で落札できました♪
メーカー:General Electric Co. (N.Y) ALARM CLOCK Model 518F
サイズ : 高さ(約16cm)×幅(約29cm)×奥行き(約15cm)
受信周波数 : 中波 530KC~1650KC
使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、50C5(電力増幅)、35W4(整流)
電 源 : AC 115V/60Hz
オークションで落札後、届いた段ボールを開梱しまず外観からチェックを開始した。キャビネットの塗装はオリジナルのままであり、艶もある。キャビネット上部の傷の補修後は目立たず、ツマミの欠損は接着剤で補修可能だ。小傷はあるものの50数年前のラジオとしてはかなりキレイな部類だろう。
キャビネット内部は年代相応の汚れはあるものの、シャーシの錆や手を加えられた様子はない。シャーシ上の真空管ソケットをとりまく凸状の構造物が気になる。