湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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マーラー:交響曲「大地の歌」

2007年09月11日 | マーラー
○フォレスター(CA)ルイス(T)ライナー指揮シカゴ交響楽団(RCA)1959・CD

SACDで復刻されているが、元の録音がどうしても旧く、前半楽章では所々に旧いなりの瑕疵が認められる。だがこの歌唱陣は反則だ。とくにライナーの珍しく心象的なものの入り込みすら感じさせる深い呼吸の中に暗く大きなマーラー世界を描き出し秀逸な「告別」の中で、囁くような、そくっと染み入るような非常に繊細なフォレスターの歌唱がもう素晴らしすぎる。これこそ絶唱というものだ。それは絶叫ではない。じつに自然に、じつに静かに、じつに美しく、注意深いヴィブラートのさまはびろうどのように滑らかで柔らかくしっとりと心に染み入る。そもそもライナーはわりとシェルヒェン的なマーラーというか、ややぎくしゃくした軋みを生じる彫刻を伴った、かなり解釈の感情的なマーラーをやっているが、いっぽうで醒めた感覚が聴取者と一定の距離を保つような感じもあり、各楽章のコントラストも余りはっきりしていないせいか歌唱は素晴らしく演奏は器用ではあるもののそれほど印象に残りにくい。けっこう過激なのにそう聞こえない悲しさがあるのである。だがやっぱり「告別」となると曲が線的で解釈の綾が目立ちやすく、歌謡に支配された室内楽的なアンサンブルなだけにワルター的なドライヴを余儀なくされるところもある。表面上は冷徹なライナーもワルターと化してしまう、そういう曲なのである。とにかくまあ、演奏も立派だが、それ以上にフォレスターの静かな絶唱に傾聴。○。



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