湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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TROYの音楽

2007年04月30日 | Weblog
THE BLOW MONKEYSのSPRINGTIME FOR THE WORLDを聴いていた。ロストロ先生というとどうしても、崩されるベルリンの壁の前でひとりチェロを弾いている場面が思い起こされる。あれはこの政治的バンドのイデーの一つが華々しく失われたときでもあり、民主主義の理想が手放しで喜ばれた時代に、あからさまに喜びを歌っているアルバムだ。スタカンに比べ珍妙なアマチュア臭、偽物臭がして、そこがイカモノ好きな私は好きだったのだが、今、80年代ダンスミュージックが見なおされている中で若年層に着目され始めたかれらを聴きなおすと、偽物臭はじつはかなり確信犯的、むしろ古さを感じさせない入念な曲作りが意外に思われた。ブルーアイド・ソウルの名に恥じないソウルフルな楽曲にいきなり電子音をつっこんできた当時は古いファンを引かせたが、今のソウル系ダンスミュージックなんてみんなその口であるから慣れたということもあるか。いや作り込まれた本物だったのだなあ、と感慨深く思った。バンドも巧く、大量生産的な今のシーンにあらわれる有象のアルバムにくらべ丁寧でゴージャスだ。しかし結局音マニアやミュージシャンしかついていかなくなり、ヴォーカルが今の親友ポール・ウェラーと足並みそろえアコースティックなソロ活動に転じたため解散したのは、奇しくも壁が壊れたお祭り騒ぎに暗雲がさしかかってきたころだった。ロストロ先生はうちの父より年下。やはり今の時世享年80才は若すぎる。日本国憲法制定の当事者関係者が90才に及んでまだカクシャクとNHKに出ているのを見ながら思った。

トロイは新しい映画だが懐かしい。ベン・ハーなどを彷彿とさせるテーマだ。憲法番組とかけもちで見ながら、こういうストレートな歴史叙事詩は久しぶりなので楽しめた。古代ギリシャはそのアルカイズムに魅せられた人々によりよく音楽の題材に編まれたものである。しかしおもしろいのはかつてのハリウッド大作を意識しているせいか、音楽も当時映画音楽を作っていた作曲家たちが影響された近現代の楽曲に似たものが断片として織り込まれていることだ。

ホルンの提示する重いテーマにショスタコの革命四楽章のテーマが織り込まれていたのは気付かれたかたは多いだろう。また、最後の悲劇的なシーンではテーマとオーケストレーションの一部にRVWのタリス・ファンタジーが織り込まれている。どちらもパクるのではなくうまく取り込んでいるので、闘争の無情さと戦士の諦念をアピールする映画にあっていて、よかった。
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