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湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

※旧ブログの一部コラム・記事、全画像は移植していません。こちらのコンテンツとして残します。

☆ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲

2017年07月16日 | ラヴェル
◎R.カサドシュ(P)オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団(COLUMBIA他)CD

まあ聞く時聞く状況によって印象なんていくらでも変わるものだ。今回この演奏とヴィトゲンシュタインの新盤を連続して聞いた感想としては、

すごすぎ。

ていうところか。まずフィラデルフィアのオケの力量といったら並外れており、この曲の演奏にありがちなオケ側のソリストの不備といったところが欠片も見つからない。そのすぐれた表現力と完璧な技巧にアンサンブルは、余りに豊穣すぎるがゆえに多少重たさも感じつつ、唖然とさせられるほどだ。戦後すぐのオーマンディ全盛期のフィラ管が如何に飛びぬけて凄かったかを実感させられる。録音のよさというのもあるだろうが、管弦楽がこれほどに雄弁に鳴って、また詩情あふれるソリストを一切邪魔しないというのも凄い。カサドシュに関して私は無機質ということをかつて言ったように思うのだが、この演奏においては細かいレベルではかなりテンポ設定を変えタッチを使い分けて、しかも全く不自然さを感じさせないという非常に高度なことをやりとげている。余りに自然で巧すぎるがゆえに引っかかりが無い、ということで無機質と感じたのだろう。よく聴けばこれほど詩情あふれる演奏はない。左手だけの演奏家であるヴィトゲンシュタインの不備はその隻腕が力を入れるバランスに影響している感じがするので、ヴィトゲンシュタインが下手とかいうことも言いたくはないのだが、それでもヴィトゲンシュタインは他の演奏家と並べて論じられる気がするのに、この演奏におけるロベール・カサドシュには他の「作曲家直伝とされる」者を含む演奏家たちとも、隔絶した高度なものを感じる。どこにも言い淀むところもごまかしもなく、その技巧の下で曲を完全に自己薬籠中のものとしている。大ピアニストならではの有無を言わせぬ完成度だ。軽やかなのに軽くは無い。力感にも一切欠けていず、完全にこの曲に適切な力加減である。いくらでも強くできる余裕があるのだが、ここでは「適切」な力感で最も効果をあげている。ロン全盛期に左手を弾いてもここまでのものにはならなかったろう(手があわないといって弾かなかったそうだが)。ざっぱくに言ってしまったが、とにかくモノラルであるのが惜しい。◎。

※2006/1/12の記事です
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ラヴェル:ボレロ

2017年07月14日 | ラヴェル
パレー指揮デトロイト交響楽団(SLS)1975/8/16liveミードウ・ブルック音楽祭

小気味いい!パレーの十八番、ラストはこれでカラッと突き進む。ポリトナルな響きの強調(これを違和感なく、しかししっかり聴かせられる人はそういない)気持ちよすぎるリズム、リズム、リズム!客席録音なのか冒頭から環境雑音が気になるものの、パレーのわりと毎回違う印象を与えるが毎回ワクワクさせること請け合いの「解釈」が、機能的で音にクセのないオケにより爽快に表現され、粋だ。素晴らしい終幕。大ブラヴォ。
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☆ラヴェル:道化師の朝の歌

2017年07月14日 | ラヴェル
伝パレー指揮モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団(SCRIBENDUM他)CD

どことなくだらしないというか、パレーの揺れない率直な解釈を実現しかねているやや技術的に不安のあるオケだが、アメリカオケに比べると温かみというかラテン風味がその音色に充ちており、かつてパレーがフランスで作曲家と交流を持ち活躍していたころの雰囲気を伝えることには成功している。リズムの感じはよくブランコやロザンタール系だが、いささか解釈にいびつさと直線的なところが目立ち、人工的で、大きく水をあけられている。テンポは珍しく遅い。中間部の印象派的な陶酔はなかなかいい。ただ、一部木管と弦のだらしなさはいかがなものか。発音の最後を切らずに伸ばすのは解釈かもしれないがラヴェルだけに気にしざるを得ない。無印。このスクリベンダム発掘盤は長らくプレミアものだったコンサート・ホール(頒布盤)録音の復刻シリーズの一部。

(後補)この演奏はどうやらル・ルー指揮ORTFのものらしい。オケのだらしなさにちょっと疑問はあるのだが、解釈はデトロイトとは全く違うので恐らくその推定は当たっていると思われる。スクリベンダムも信用いよいよ落ちまくりだな・・・。HMVは未だにパレーと称して売っているが大丈夫なのだろうか。

※2005/2/26の記事です
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☆ラヴェル:ボレロ

2017年07月03日 | ラヴェル
○モートン・グールド指揮ロンドン交響楽団(varese sarabande,JVC)1978/9/18-20,CD

これちょっと変なので持ってる方はスコアと比べて聴いてみてください。いじってるみたいです。
不良爺さんのボレロといったかんじで軽いんだけどリズムがやたら明瞭でカッコイイ。足踏みの音が聞こえてきそうだ。音は横に流れない完ぺきにリズム重視、でもラテンのあのリズム感とも違う、でもノリはすこぶるいい。アメリカ的派手さには事欠かない。低音のリズム系楽器が物凄く強調されるのでクライマックスなんてスペクタクルですがオーマンディのゴージャスなブヨブヨとは違う凝縮力を感じる。物凄い個性的とは言えないけど確かに個性の有る演奏、うーん、コトバでは言い表わしづらいな。モートン・グールド自身オーケストラを知り尽くした作曲家だけあってどうやれば最低限の力で最大限の効果を生み出せるか知っている。それが逆にここではただラヴェルの手の上でゴージャスな広がりを展開させるのではなく、割合と小編成のアンサンブルのように整理して組み上げる事でまるでコープランドのバレエ曲のような「軽い響き」を持たせ、そのうえでドガジャカタテノリ解釈を持ち込んで独自の舞踏音楽(これは踊れます!)を作り上げる事に成功している。佳演。ラヴェル指揮者ではないけれど、近代名曲選の中の思わぬ拾い物、といったところ。

※2005/3/5の記事です
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☆ラヴェル:ハイドンの名によるメヌエット

2017年06月13日 | ラヴェル
○ワイエンベルク(P)(DUCRET THOMSON)

ラヴェルの作品中でも極めて簡素でリリカルな美品だが、雰囲気のあるまるでペルルミュテールの新録のような演奏を作っている。タッチも柔らかく、乾いてはいるがそこはかとなく哀しい。音そのものから立ち上る雰囲気を聞き取る演奏。○。

※2008/6/13の記事です

ワイエンベルクについてはこちら
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☆ラヴェル:ボレロ

2017年06月05日 | ラヴェル
○デゾルミエール指揮チェコ・フィル(SUPRAPHON,EURODISC他)CD

流れるように軽快に進むボレロで、ピッチが若干高いのが気になるが、微妙に(音色的に)洒落たニュアンス表現がいかにもフランス風のエスプリ(の微温)を感じさせる。それにしてもテンポ的には一切揺れないラヴェルに忠実な演奏と言うことができよう。リズムセクションが極めて明瞭で引き締まった表現を見せており、水際立った演奏ぶりでダレを防いでいる。技術的には完璧に磨き上げられており凄い。ホルン以外は非常に上手いと言い切っていいだろう。最後まで律義で軽すぎて派手な歓興には欠けるが、清々しさでは他に類を見ないものだ。クライマックスで旋律の一音一音を短く切ってリズムを際立たせるのはいかにもリズム感重視のデゾならではの機知だろう。いかにもこの人らしいラヴェル、好悪分かつと思うが綺麗なので○。再掲。

※2005/3/2の再掲です
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☆ラヴェル:道化師の朝の歌

2017年05月19日 | ラヴェル
◎チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(VON-Z:CD-R)1994live

このトリッキーなリズムをオケという大部隊を相手にどう表現するか、指揮者の腕が試されるところだがチェリはまさしくその安定した技術をもって「正しいリズム」を刻みそこにエスパーニャな煌きを感じさせる音の輝きを持ち込む。最後の拍前で叫ぶチェリに「いつものアレかあ」とは思わせない真の迫力がありこれは、とくにすばらしい演奏といっていいのではないか。恐らく既出盤だと思うが正規と聞き惑うほどに音がいい。
Comments (6)
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☆ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ

2017年04月29日 | ラヴェル
◎ジャリ(Vn)プルデルマシェ(P)(EMI)CD

それほど押しの強くないさらっとした表現から始まるが実は非常に高度な技巧の裏づけが双方にうかがえ、とにかく細かい音符が全部粒だってきちんときこえてきて、さらにそのうえでけっこう大きな抑揚をつけていく、そこがまた自然。フランス派きっての手だれ、共に真骨頂である。2楽章からまったく音にジャジーさはないのにさらっとポルタメントをつけまくりブルーノートを一つのドビュッシー的な世界の表現手段として使いこなしている、ラヴェルが聞いたら納得の演奏だったろう。個人的に変な主題の1楽章で違和感をおぼえることの多い曲だが、この演奏は自然に入り、2楽章以降はあっというまに唖然と、聞きとおした。◎。
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☆ラヴェル:フォーレの名による子守唄

2017年04月28日 | ラヴェル
○C.ボナルディ(Vn)ノエル・リー(P)(ACCORD)1987・CD

ほとんどサティのようになってしまうピアノが美しい曲だ。ラヴェルは凝縮された時間の中で最も特質を発揮する作者のように思える。管弦楽法の大家というのはあくまで技術上の姿であるように。ラヴェルにとってはあくまで筆のすさび的な「~風に」に似た「遊び」の範疇にある曲にせよ、抽象的な思考と感傷的な表現を可能とするものだけに、センスが問われる。この演奏はピアノが素晴らしい。○。
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☆ラヴェル:ボレロ

2017年04月27日 | ラヴェル
○ストコフスキ指揮アメリカ交響楽団(SCC:CD-R)1969/5/4live

効果を狙った極端な音量操作が非常に気になる・・・とくにスネア以下パーカスの突発的表現。また、ラヴェルにたいする挑戦のような変更に近いものも散見され、ストコフスキ・クレッシェンドで極限まで引き延ばされる終止和音のあざとさはブラヴォを叫びたくなくても叫ばせるたぐい。オケミスは非常に多いし余り誉められたもんでもないが、不断のリズムはけっしてよれることなく迫力を積み上げていく、これは凄い。○。
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☆ラヴェル:ヴァイオリンとチェロのためのソナタ

2017年04月24日 | ラヴェル
○C.ボナルディ(Vn)シフォルー(Vc)(ACCORD)1987・CD

ちょっと技術的に厳しい感じがする。ヴァイオリンは技巧より表現をとる意図というには表現もムラがあり、感傷的な艶を出す場面と何か押しの弱いイギリス的な音を出す場面がちぐはぐである。解釈的には至極落ち着いていて、3楽章などピアノ的な静謐な抽象を描く配慮が行き届いていてラヴェルの意思を汲んだ名演だと思うが、アタックがきちっと決まらないので往年の演奏のような、ちょっとグズっとした感じに思えてしまう~無調的なパセージなどもっと硬質に整っているべきなのだ。4楽章などチェロがいきなり不安定なリズムで(難しいのはわかるけど)民族性を煽るまでいかないそれ以前の状況のように聴こえる。しかしフィンガリングはセンスに溢れた音を出す。ポルタメントなど美しくそつない。しかしやはり、ここはバーバリズムでいくべき楽章で、叙情的な美しさばかりに拘泥すると激しいリズムと先鋭な響きが阻害される。音程もリズムも怪しい・・・しかし部分的には美しく(ヴァイオリンはトリルが綺麗だ)無印にするには躊躇がある。テンポは冷静なのに技術イマイチ、というくらいか。ひどいいいよう。この曲はそもそも多面的で難しいのだ。
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☆ラヴェル:ラ・ヴァルス

2017年04月12日 | ラヴェル
○カンテルリ指揮NBC交響楽団(ASdisc)1954/2/7live・CD

即物的なカンテルリの芸風がよくあらわれた演奏で、ワルツ的な揺れの表現よりもしっかりしたテンポと浮き立つようなリズム表現がひたすら追求されている。オケのせいか生気がないというか醒めた感じのする演奏でもあり、そういう意味でけして「面白い」ものではないが、完成度は高いと言えるかもしれない。○。
Comments (4)
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☆ラヴェル:ラ・ヴァルス

2017年04月11日 | ラヴェル
○マルケヴィッチ指揮日本フィル(PLATZ)1968/2/29東京文化会館LIVE・CD

下品な音が崩壊寸前の爛熟ぶりを示しているようで、一つの見識ともとれる。重ったるく弦などはっきり言って余り巧くはないが、終盤のブラスとパーカスの無茶な破裂具合と終止形の大ルバートにはブラヴォが乱れとぶ。前半ぱっとしないがマルケらしいはじけっぷりでドイツ的なオケを無理して鼓舞し仕舞いには明瞭なワルツのリズム感を獲得させるさまが面白い。○。
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☆ラヴェル:ボレロ

2017年04月06日 | ラヴェル
○チラーリオ指揮ルーマニア放送交響楽団(ELECTRECORD)CD

ラテンっ!最初はおとなしく規律正しい演奏振りでむしろつまらないかもと思ったが、クライマックスは豪華なイタリアオペラの一幕を見るように派手でかつ威厳ある表現が無茶かっこいい。前半マイナスとしても十分後半だけで○はつけられる。録音は遠くあまりよくない。イタリア指揮者の面目躍如、オケも脂っこさがないため聞きやすい。ぐちゃぐちゃに歌うたぐいの演奏でも、がちゃがちゃに鳴り響かせるたぐいの演奏でもないが、かっこいいとだけ言っておく。若き王子の颯爽たる戴冠式行進曲。
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☆ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲

2017年03月27日 | ラヴェル
○ペルルミュテール(P)ミュンシュ指揮ボストン交響楽団(DA:CD-R/M&A)1958live・CD

ペルルミュテールはアーティキュレーションが繊細で非常に品がある。タッチが少し弱いしミスも散見されるのが惜しいが、この曲に最もふさわしいピアニストではないかと感じるほど「ラヴェルのイメージに近い演奏様式」を持っているように聞こえる。ホーレンシュタインのぎごちない指揮ではとうていその魅力に達し得ないところを、恣意的で大げさではあるものの強い推進力をもって曲をドライヴしていくラヴェル指揮者ミュンシュのしなやかさが、ソリストと不協和を起こすのではなく寧ろ巧くバランスがとれて秀逸だ。厚ぼったく迫ってくる方にも客観的に冷たくこなす方にも寄るのでなくまとまっている。ああこれでもっとペルルミュテールの指が回れば、スタジオでそれをやってくれていれば、と惜しい思いがする。ミュンシュなりの感興はしっかり織り込まれていて面白さも格別。このふたりのラヴェルに対する感覚の相性は余りよくないとは思うが、しかしお互いの弱い部分を補うというか、ああほんとに正規がホーレンシュタインじゃなくてミュンシュだったらなあ。録音は悪くはないがよくはない。○。
Comments (4)
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