今年も終わりということで、今年読んだ本のベスト10を選出してみた。
1位 エーリヒ・マリア・レマルク『西部戦線異状なし』
戦争という不条理な世界をクールに描ききったまぎれもない傑作。
臨場感溢れる戦場の風景は圧巻。また切羽詰った兵士たちの心理、現実世界とのずれなどなど、戦場に送られてしまった若者たちの苦痛が胸に迫る。
2位 J・M・クッツェー『恥辱』
重厚で暗い作風なれど、胸の中に確実に何かを残す。主人公にはまったく共感できないにもかかわらず、読ませる筆力はさすが。
虚無からの出発とも言うべきラストシーンは印象深い。
3位 森見登美彦『太陽の塔』
森見節とも言うべき語りが冴え渡っている。妄想炸裂の理系大学生の独白にひたすら爆笑。
それでいてラストに叙情とセンチメンタリズムに溢れたシーンを描くあたりが憎い。
4位 森見登美彦『新釈 走れメロス 他四篇』
センチメンタリズム、笑い、苦悩などいろいろな要素が注ぎ込まれた短編集。元ネタはあれど、森見登美彦の才能をまざまざと見せ付ける一品。
どの作品も個性が際立っているが、特に「桜の森の満開の下」がいい。
5位 カズオ・イシグロ『日の名残り』
何と言ってもラストの日の名残りのシーンが美しい。その中からにじみ出る老執事の悔恨が胸に迫る。
しかしそれでも最後の最後は前向きな予感をはらんでいたのが見事である。
6位 桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』
破天荒でハッタリの効いた物語を、笑いを交え、マジックリアリズム風に仕上げた力業にただただ脱帽。
戦後の価値観の変遷と併せて描き上げる構想力も含めて魅力に富んだ一品。
7位 アゴタ・クリストフ『昨日』
異国で生きざるをえなくなった男のアイデンティティを取り戻すための戦いにドキドキしながら本を読んだ。
ラストは苦みと悲しみと絶望がにじみ出ており、胸に突き刺さる思いがした。
8位 角田光代『対岸の彼女』
特筆すべきはナナコのキャラの魅力だ。特に逃避行に疲れた後ナナコが言葉を口にするシーンが忘れがたい。
爽やかな読後感もすばらしく、女ふたりの友情の姿を丹念に描出してたのが見事であった。
9位 いしいしんじ『ぶらんこ乗り』
つくり話の天才である弟の話がおもしろく、ストーリー全体も独特の世界観があって、胸に染み渡るものが多い。
その中で、姉弟のきずなが暖かな余韻を生んでいた。
10位 オルハン・パムク『わたしの名は紅』
本作に流れる哲学性が心地よく、浸るように読み進めることができる。それでいてエンタメの要素もある点が見事。
トルコという土地柄ゆえに起こる、伝統と革新、西洋とアジアといったせめぎあいが興味深い。
◎番外
村上春樹『アフターダーク』
村上春樹『海辺のカフカ』
テネシー・ウィリアムズ『ガラスの動物園』
3つとも初読ではないのでランキングからは除外したが、ベスト10に入っても文句のない傑作ぞろいである。
●総括
全体的には海外の純文学が強かった年といったところだろう。
そんな中、気を吐いたのが森見登美彦だ。すでに売れっ子作家だが、その理由がよくわかる。彼には今後も注目だ。
個人的にはミステリ作品で、強い印象を残すものがなかったのが残念だ。質はそろっていただけに、余計にその思いが強い。
来年も良い本と出会えるようにと、願うばかりだ。
過去の私的ランキング
2006年度 私的ブックランキング
2006年度 私的映画ランキング
1位 エーリヒ・マリア・レマルク『西部戦線異状なし』
戦争という不条理な世界をクールに描ききったまぎれもない傑作。
臨場感溢れる戦場の風景は圧巻。また切羽詰った兵士たちの心理、現実世界とのずれなどなど、戦場に送られてしまった若者たちの苦痛が胸に迫る。
2位 J・M・クッツェー『恥辱』
重厚で暗い作風なれど、胸の中に確実に何かを残す。主人公にはまったく共感できないにもかかわらず、読ませる筆力はさすが。
虚無からの出発とも言うべきラストシーンは印象深い。
3位 森見登美彦『太陽の塔』
森見節とも言うべき語りが冴え渡っている。妄想炸裂の理系大学生の独白にひたすら爆笑。
それでいてラストに叙情とセンチメンタリズムに溢れたシーンを描くあたりが憎い。
4位 森見登美彦『新釈 走れメロス 他四篇』
センチメンタリズム、笑い、苦悩などいろいろな要素が注ぎ込まれた短編集。元ネタはあれど、森見登美彦の才能をまざまざと見せ付ける一品。
どの作品も個性が際立っているが、特に「桜の森の満開の下」がいい。
5位 カズオ・イシグロ『日の名残り』
何と言ってもラストの日の名残りのシーンが美しい。その中からにじみ出る老執事の悔恨が胸に迫る。
しかしそれでも最後の最後は前向きな予感をはらんでいたのが見事である。
6位 桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』
破天荒でハッタリの効いた物語を、笑いを交え、マジックリアリズム風に仕上げた力業にただただ脱帽。
戦後の価値観の変遷と併せて描き上げる構想力も含めて魅力に富んだ一品。
7位 アゴタ・クリストフ『昨日』
異国で生きざるをえなくなった男のアイデンティティを取り戻すための戦いにドキドキしながら本を読んだ。
ラストは苦みと悲しみと絶望がにじみ出ており、胸に突き刺さる思いがした。
8位 角田光代『対岸の彼女』
特筆すべきはナナコのキャラの魅力だ。特に逃避行に疲れた後ナナコが言葉を口にするシーンが忘れがたい。
爽やかな読後感もすばらしく、女ふたりの友情の姿を丹念に描出してたのが見事であった。
9位 いしいしんじ『ぶらんこ乗り』
つくり話の天才である弟の話がおもしろく、ストーリー全体も独特の世界観があって、胸に染み渡るものが多い。
その中で、姉弟のきずなが暖かな余韻を生んでいた。
10位 オルハン・パムク『わたしの名は紅』
本作に流れる哲学性が心地よく、浸るように読み進めることができる。それでいてエンタメの要素もある点が見事。
トルコという土地柄ゆえに起こる、伝統と革新、西洋とアジアといったせめぎあいが興味深い。
◎番外
村上春樹『アフターダーク』
村上春樹『海辺のカフカ』
テネシー・ウィリアムズ『ガラスの動物園』
3つとも初読ではないのでランキングからは除外したが、ベスト10に入っても文句のない傑作ぞろいである。
●総括
全体的には海外の純文学が強かった年といったところだろう。
そんな中、気を吐いたのが森見登美彦だ。すでに売れっ子作家だが、その理由がよくわかる。彼には今後も注目だ。
個人的にはミステリ作品で、強い印象を残すものがなかったのが残念だ。質はそろっていただけに、余計にその思いが強い。
来年も良い本と出会えるようにと、願うばかりだ。
過去の私的ランキング
2006年度 私的ブックランキング
2006年度 私的映画ランキング
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