2009年も終わりということで、今年読んだ本のベスト10を選んでみた。
1位 川上未映子『ヘヴン』
哲学的なテーマ性、キャラクター、プロット、描写力、リーダビリティなど、どれをとっても一級の作品。
「僕」とコジマに個人的には激しく共感。ゆえに後半、二人の間に亀裂が入る展開に心がゆさぶられる。
2位 レベッカ・ブラウン『家庭の医学』
自分の愛する人間が苦しみながら、どんどん死に向かっていく様を、淡々と描写している点が印象的。
絶望的な状況にもかかわらず、作中には静けさが漂っており、それが深く胸を打つ。
3位 マリオ・バルガス=リョサ『楽園への道』
キュートで、うざくて、パワフルなフローラの姿に深く感動。野蛮なまでに情熱的な、ゴーギャンもすばらしい。
二人の主人公の存在感が、小説を魅力的なものにしていた。
4位 司馬遼太郎『国盗り物語』
前半の斎藤道三のピカレスクっぷりもすばらしいが、後半の明智光秀はそれ以上にいいキャラをしている。
心理描写も的確で、くそマジメな光秀が謀反を起こすに至った背景には、確かな説得力があった。
5位 村上春樹『1Q84』
まだ未完のようなので、少し順位を下げたが、エンタテイメント性も文学性も兼ね備えた春樹らしい作品。
ファンだからという贔屓目もあるが、BOOK 3が待ち遠しいと心から思う。
6位 吉田修一『悪人』
ある平凡な事件に関わることになった、各人物の状況を重層的に、心理を丁寧に描き出していて、好印象。
光代と祐一という二人の主人公の、愚かで不器用な姿が、あまりに悲しい。
7位 佐藤多佳子『一瞬の風になれ』
その迷いのない、まっすぐすぎるくらいの王道展開に、強く心を動かされる。
小説全体に疾走感が感じられ、登場人物の爽やかさには感動する。まさに一級の青春小説。
8位 角田光代『八日目の蝉』
前半の愛情をもって接する誘拐犯の話も、後半の自分の過去と向き合う少女の話も、どちらもすばらしい。
ラストからは人間の底力のようなものが感じられ、非常にポジティブな印象を受けた。
9位 スタニスワフ・レム『ソラリス』
エンタテイメント性と、哲学性が絶妙に融合した、優れたハードSF。
自分とは違う存在とコミュニケートすることの困難さを、イマジネーション豊かに語っている点に心惹かれる
10位 村上龍『半島を出よ』
北朝鮮のゲリラ兵が日本を統治するという、ハッタリに満ちた話を、想像力を駆使して描く筆致に感服。
ディテールの確かさ、プロットの運び方など、村上龍の力量を再認識させられた。
◎番外
金子みすゞ『金子みすゞ童謡集』
村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ『星の王子さま』
上記の作品は以前に読んだことがあるので、ランキングからは外した。
どれもすばらしいまでの傑作である。
◎蛇足
本つながりということでついでに書くと、今年の私的マンガランク1位は、大石浩二『いぬまるだしっ』だった。
ネタっぽく見えるが、ガチだったりする。
●総括
1位と2位の作品には、ほとんど差がない。
順位の違いは、『ヘヴン』の方が最近読んだため印象が強いこと。この一作で、川上未映子のファンになったからということ。そして作家の今後に期待を込めてのものである。
できれば『ヘヴン』は何かの賞をもらってほしいものだ。
目に見える形で、世間的にこの作品が評価されてほしい。
『家庭の医学』は小川洋子が誉めていたから読んだ作品。
本にしろ何にしろ、アンテナを張っておくと、いいものに出会えるという好例であり、僕にとって忘れがたい作品となった。
過去の私的ランキング
2006年度 私的ブックランキング
2007年度 私的ブックランキング
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2006年度 私的映画ランキング
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2009年度 私的映画ランキング
1位 川上未映子『ヘヴン』
哲学的なテーマ性、キャラクター、プロット、描写力、リーダビリティなど、どれをとっても一級の作品。
「僕」とコジマに個人的には激しく共感。ゆえに後半、二人の間に亀裂が入る展開に心がゆさぶられる。
2位 レベッカ・ブラウン『家庭の医学』
自分の愛する人間が苦しみながら、どんどん死に向かっていく様を、淡々と描写している点が印象的。
絶望的な状況にもかかわらず、作中には静けさが漂っており、それが深く胸を打つ。
3位 マリオ・バルガス=リョサ『楽園への道』
キュートで、うざくて、パワフルなフローラの姿に深く感動。野蛮なまでに情熱的な、ゴーギャンもすばらしい。
二人の主人公の存在感が、小説を魅力的なものにしていた。
4位 司馬遼太郎『国盗り物語』
前半の斎藤道三のピカレスクっぷりもすばらしいが、後半の明智光秀はそれ以上にいいキャラをしている。
心理描写も的確で、くそマジメな光秀が謀反を起こすに至った背景には、確かな説得力があった。
5位 村上春樹『1Q84』
まだ未完のようなので、少し順位を下げたが、エンタテイメント性も文学性も兼ね備えた春樹らしい作品。
ファンだからという贔屓目もあるが、BOOK 3が待ち遠しいと心から思う。
6位 吉田修一『悪人』
ある平凡な事件に関わることになった、各人物の状況を重層的に、心理を丁寧に描き出していて、好印象。
光代と祐一という二人の主人公の、愚かで不器用な姿が、あまりに悲しい。
7位 佐藤多佳子『一瞬の風になれ』
その迷いのない、まっすぐすぎるくらいの王道展開に、強く心を動かされる。
小説全体に疾走感が感じられ、登場人物の爽やかさには感動する。まさに一級の青春小説。
8位 角田光代『八日目の蝉』
前半の愛情をもって接する誘拐犯の話も、後半の自分の過去と向き合う少女の話も、どちらもすばらしい。
ラストからは人間の底力のようなものが感じられ、非常にポジティブな印象を受けた。
9位 スタニスワフ・レム『ソラリス』
エンタテイメント性と、哲学性が絶妙に融合した、優れたハードSF。
自分とは違う存在とコミュニケートすることの困難さを、イマジネーション豊かに語っている点に心惹かれる
10位 村上龍『半島を出よ』
北朝鮮のゲリラ兵が日本を統治するという、ハッタリに満ちた話を、想像力を駆使して描く筆致に感服。
ディテールの確かさ、プロットの運び方など、村上龍の力量を再認識させられた。
◎番外
金子みすゞ『金子みすゞ童謡集』
村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ『星の王子さま』
上記の作品は以前に読んだことがあるので、ランキングからは外した。
どれもすばらしいまでの傑作である。
◎蛇足
本つながりということでついでに書くと、今年の私的マンガランク1位は、大石浩二『いぬまるだしっ』だった。
ネタっぽく見えるが、ガチだったりする。
●総括
1位と2位の作品には、ほとんど差がない。
順位の違いは、『ヘヴン』の方が最近読んだため印象が強いこと。この一作で、川上未映子のファンになったからということ。そして作家の今後に期待を込めてのものである。
できれば『ヘヴン』は何かの賞をもらってほしいものだ。
目に見える形で、世間的にこの作品が評価されてほしい。
『家庭の医学』は小川洋子が誉めていたから読んだ作品。
本にしろ何にしろ、アンテナを張っておくと、いいものに出会えるという好例であり、僕にとって忘れがたい作品となった。
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