私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

2009年度 私的ブックランキング

2009-12-28 21:44:06 | 雑感
2009年も終わりということで、今年読んだ本のベスト10を選んでみた。


1位 川上未映子『ヘヴン』
  
哲学的なテーマ性、キャラクター、プロット、描写力、リーダビリティなど、どれをとっても一級の作品。
「僕」とコジマに個人的には激しく共感。ゆえに後半、二人の間に亀裂が入る展開に心がゆさぶられる。


2位 レベッカ・ブラウン『家庭の医学』
  
自分の愛する人間が苦しみながら、どんどん死に向かっていく様を、淡々と描写している点が印象的。
絶望的な状況にもかかわらず、作中には静けさが漂っており、それが深く胸を打つ。


3位 マリオ・バルガス=リョサ『楽園への道』
  
キュートで、うざくて、パワフルなフローラの姿に深く感動。野蛮なまでに情熱的な、ゴーギャンもすばらしい。
二人の主人公の存在感が、小説を魅力的なものにしていた。


4位 司馬遼太郎『国盗り物語』
  
前半の斎藤道三のピカレスクっぷりもすばらしいが、後半の明智光秀はそれ以上にいいキャラをしている。
心理描写も的確で、くそマジメな光秀が謀反を起こすに至った背景には、確かな説得力があった。


5位 村上春樹『1Q84』
  
まだ未完のようなので、少し順位を下げたが、エンタテイメント性も文学性も兼ね備えた春樹らしい作品。
ファンだからという贔屓目もあるが、BOOK 3が待ち遠しいと心から思う。


6位 吉田修一『悪人』
  
ある平凡な事件に関わることになった、各人物の状況を重層的に、心理を丁寧に描き出していて、好印象。
光代と祐一という二人の主人公の、愚かで不器用な姿が、あまりに悲しい。


7位 佐藤多佳子『一瞬の風になれ』
  
その迷いのない、まっすぐすぎるくらいの王道展開に、強く心を動かされる。
小説全体に疾走感が感じられ、登場人物の爽やかさには感動する。まさに一級の青春小説。


8位 角田光代『八日目の蝉』
  
前半の愛情をもって接する誘拐犯の話も、後半の自分の過去と向き合う少女の話も、どちらもすばらしい。
ラストからは人間の底力のようなものが感じられ、非常にポジティブな印象を受けた。


9位 スタニスワフ・レム『ソラリス』
  
エンタテイメント性と、哲学性が絶妙に融合した、優れたハードSF。
自分とは違う存在とコミュニケートすることの困難さを、イマジネーション豊かに語っている点に心惹かれる


10位 村上龍『半島を出よ』
  
北朝鮮のゲリラ兵が日本を統治するという、ハッタリに満ちた話を、想像力を駆使して描く筆致に感服。
ディテールの確かさ、プロットの運び方など、村上龍の力量を再認識させられた。


◎番外
 金子みすゞ『金子みすゞ童謡集』
 村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』
 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ『星の王子さま』

上記の作品は以前に読んだことがあるので、ランキングからは外した。
どれもすばらしいまでの傑作である。


◎蛇足
本つながりということでついでに書くと、今年の私的マンガランク1位は、大石浩二『いぬまるだしっ』だった。
ネタっぽく見えるが、ガチだったりする。


●総括
1位と2位の作品には、ほとんど差がない。

順位の違いは、『ヘヴン』の方が最近読んだため印象が強いこと。この一作で、川上未映子のファンになったからということ。そして作家の今後に期待を込めてのものである。
できれば『ヘヴン』は何かの賞をもらってほしいものだ。
目に見える形で、世間的にこの作品が評価されてほしい。

『家庭の医学』は小川洋子が誉めていたから読んだ作品。
本にしろ何にしろ、アンテナを張っておくと、いいものに出会えるという好例であり、僕にとって忘れがたい作品となった。



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