(2007年8月28日朝刊)
派閥会長そろって起用
安倍改造内閣が発足した。論功行賞と側近重用が目立った第一次安倍内閣と比べると、派閥均衡・安定重視の印象が強い顔ぶれだ。
キーワードは「お友達内閣からの脱皮」「挙党一致態勢」「地域格差是正」である。
何よりも目を引くのは派閥の領袖や党内実力者を要所に配置したことだ。内閣の重厚さを演出する人事だが、見方を変えれば、実力者を閣内に取り込むことによって批判を封じ、一蓮托生の挙党態勢をつくりあげたということだろう。がけっぷち内閣を象徴するような布陣といえる。
今回の組閣人事で注目されるのは、官房長官に政策通の与謝野馨氏を起用し、お友達内閣からの脱皮を印象付けたこと。選挙後、首相批判を繰り返してきた舛添要一氏を厚労相として処遇したこと。民間から前岩手県知事の増田寛也氏を総務相に起用し格差是正問題を担当させたことだ。
三人とも政策に詳しく知名度も高い。年金問題や地域格差問題に本腰で取り組むというメッセージを込めた人事なのかもしれない。
今度の組閣ではサプライズ(驚き)人事がなかった。強いて上げるとすれば実は、安倍首相の続投そのものが最大のサプライズであった。
この内閣の不安要素は何かというと、残念ながら安倍首相その人である、というほかない。
安倍晋三首相は選挙期間中、「私か小沢さん、どちらが首相にふさわしいか、国民に聞きたい」と大見得を切った。にもかかわらず、開票の真っ最中に早々と続投を宣言。歴史的惨敗の責任について党や国民に明確な説明をすることもなく、「改革の方向性が否定されたとは思えない」と強弁し続けたのである。
自民党の参院選総括委員会は、安倍首相への批判を盛り込んだ異例の最終報告書をまとめた。
多くの有権者が今、安倍首相の指導力に対して強い疑問を抱いている。それを解消して求心力を回復するのは容易なことではない。
ねじれ国会にどう対処
安倍改造内閣は、衆院で与党、参院で野党が多数を占めるという「ねじれ国会」を抱えてスタートした。麻生太郎新幹事長がいみじくも語ったように、この事態は「二〇〇七年体制」ともいうべきかつてない出来事だ。九月からの臨時国会にどのように対応していくか。「安倍―麻生」盟友体制がまず試されることになるだろう。
年金記録不備、政治とカネ、地域間格差、教育改革、公務員制度改革など待ったなしの課題が山積している。
参院選前までは数の力を背景に国会で強行採決を繰り返してきたが、もうその手は使えない。民主党と法案をすり合わせたり、修正協議を重ねたりという機会が増えるはずだ。
安倍首相はこれから先、ジレンマを抱え込む可能性がある。
「安倍カラー・保守思想」を前面に打ち出すことを求める従来の支持層に顔を向けるのか、それとも選挙の反省を踏まえ政策の軌道修正を求める人たちの声を優先的に聞くのか。
改革を継続していくのか、それとも改革の影の部分を取り上げ「地方の反乱」に答えていくのか。
「戦後レジーム(体制)からの脱却」という方針は変えていない。
改革を進めつつ地域格差是正も、というのが首相の基本姿勢だ。
要するに改造内閣の重点課題は何なのか、反省を踏まえた政策転換の中身があいまいで分かりにくいのである。
結果責任を取らずに続投することになった安倍首相の下で信頼を回復するのは並大抵でない。政権運営は思っている以上に厳しいと見るべきだ。
岸田氏の力量は未知数
沖縄担当相には古賀派のプリンス的な存在と言われる岸田文雄氏が起用された。沖縄との縁はほとんどない。
まずは沖縄各地を視察し、現場の人たちとひざを交えて話し合い、土地の歴史と風土、現在の課題を早くつかんでほしい。
沖縄応援団が急減している永田町の中で、先頭に立って沖縄の立場を主張しなければならないのが沖縄担当相の役割である。
普天間飛行場移設を含む米軍再編問題は、高村正彦大臣―増田好平事務次官の新体制に引き継がれた。辺野古移設をめぐっては防衛省の中で大臣と次官の間に微妙な温度差があっただけに新体制の今後の対応を注目したい。
沖縄タイムス
派閥会長そろって起用
安倍改造内閣が発足した。論功行賞と側近重用が目立った第一次安倍内閣と比べると、派閥均衡・安定重視の印象が強い顔ぶれだ。
キーワードは「お友達内閣からの脱皮」「挙党一致態勢」「地域格差是正」である。
何よりも目を引くのは派閥の領袖や党内実力者を要所に配置したことだ。内閣の重厚さを演出する人事だが、見方を変えれば、実力者を閣内に取り込むことによって批判を封じ、一蓮托生の挙党態勢をつくりあげたということだろう。がけっぷち内閣を象徴するような布陣といえる。
今回の組閣人事で注目されるのは、官房長官に政策通の与謝野馨氏を起用し、お友達内閣からの脱皮を印象付けたこと。選挙後、首相批判を繰り返してきた舛添要一氏を厚労相として処遇したこと。民間から前岩手県知事の増田寛也氏を総務相に起用し格差是正問題を担当させたことだ。
三人とも政策に詳しく知名度も高い。年金問題や地域格差問題に本腰で取り組むというメッセージを込めた人事なのかもしれない。
今度の組閣ではサプライズ(驚き)人事がなかった。強いて上げるとすれば実は、安倍首相の続投そのものが最大のサプライズであった。
この内閣の不安要素は何かというと、残念ながら安倍首相その人である、というほかない。
安倍晋三首相は選挙期間中、「私か小沢さん、どちらが首相にふさわしいか、国民に聞きたい」と大見得を切った。にもかかわらず、開票の真っ最中に早々と続投を宣言。歴史的惨敗の責任について党や国民に明確な説明をすることもなく、「改革の方向性が否定されたとは思えない」と強弁し続けたのである。
自民党の参院選総括委員会は、安倍首相への批判を盛り込んだ異例の最終報告書をまとめた。
多くの有権者が今、安倍首相の指導力に対して強い疑問を抱いている。それを解消して求心力を回復するのは容易なことではない。
ねじれ国会にどう対処
安倍改造内閣は、衆院で与党、参院で野党が多数を占めるという「ねじれ国会」を抱えてスタートした。麻生太郎新幹事長がいみじくも語ったように、この事態は「二〇〇七年体制」ともいうべきかつてない出来事だ。九月からの臨時国会にどのように対応していくか。「安倍―麻生」盟友体制がまず試されることになるだろう。
年金記録不備、政治とカネ、地域間格差、教育改革、公務員制度改革など待ったなしの課題が山積している。
参院選前までは数の力を背景に国会で強行採決を繰り返してきたが、もうその手は使えない。民主党と法案をすり合わせたり、修正協議を重ねたりという機会が増えるはずだ。
安倍首相はこれから先、ジレンマを抱え込む可能性がある。
「安倍カラー・保守思想」を前面に打ち出すことを求める従来の支持層に顔を向けるのか、それとも選挙の反省を踏まえ政策の軌道修正を求める人たちの声を優先的に聞くのか。
改革を継続していくのか、それとも改革の影の部分を取り上げ「地方の反乱」に答えていくのか。
「戦後レジーム(体制)からの脱却」という方針は変えていない。
改革を進めつつ地域格差是正も、というのが首相の基本姿勢だ。
要するに改造内閣の重点課題は何なのか、反省を踏まえた政策転換の中身があいまいで分かりにくいのである。
結果責任を取らずに続投することになった安倍首相の下で信頼を回復するのは並大抵でない。政権運営は思っている以上に厳しいと見るべきだ。
岸田氏の力量は未知数
沖縄担当相には古賀派のプリンス的な存在と言われる岸田文雄氏が起用された。沖縄との縁はほとんどない。
まずは沖縄各地を視察し、現場の人たちとひざを交えて話し合い、土地の歴史と風土、現在の課題を早くつかんでほしい。
沖縄応援団が急減している永田町の中で、先頭に立って沖縄の立場を主張しなければならないのが沖縄担当相の役割である。
普天間飛行場移設を含む米軍再編問題は、高村正彦大臣―増田好平事務次官の新体制に引き継がれた。辺野古移設をめぐっては防衛省の中で大臣と次官の間に微妙な温度差があっただけに新体制の今後の対応を注目したい。
沖縄タイムス
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