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大阪・関西万博や東京オリンピックがうやむやに始まりグダグダなまま進む…「ダメな日本」の致命的な弱点

2023年10月10日 | スクラップ

 

 

 

 2025年開催予定の大阪・関西万博は、会場建設費が当初の見込みよりも500億円多い最大2350億円と、大幅にオーバーする見通しであることが報じられた。

 

 多くの人が疑問に思うような公的なプロジェクトやイベントがずるずると進められてしまい、その結果、税金の無駄遣いというマイナス面が残った場合も誰も責任を取らないまま、いつのまにか皆が忘れてしまう……ということが日本では多々ある。

 

 論理的な思考を支える「モデル分析」を、慶應義塾大学で教鞭をとる栗田治氏が徹底的にわかりやすく解説した講談社現代新書『思考の方法学』。

 

 ここでは同書の「モデルと人間」より、日本社会が抱える弱点について述べた部分と、万博やオリンピックの計画の致命的欠陥について著者が分析した内容(書き下ろし)をあわせて公開する。

 

 (※本記事は『思考の方法学』から抜粋・編集したものに、著者による書き下ろしを加えたものです。)

 

 

 

■論理的なモデル? ちゃんとしたデータ?

 

 モデル分析によって目的合理的に思考するためには、モデル記述のために用いた論理が検証可能でなければなりません。それを支えるのは、既知の科学的な法則と、目前の現実の観察(統計データを含む)です。

 

 ですから、誰かが何かを主張している場合には、それを受け入れる前に、そこで用いられているモデルの内容はもちろんのこと、どのような現実観察によってモデル分析が行われたのかを確かめてください。

 

 平たく言えば、「論理的なモデルをこしらえたの? ちゃんとしたデータを用いたの?」という疑いの目で見てください、ということです。この部分で納得できなければ、相手の主張を信じるべきではありません。

 

 「僕が信頼する〇〇さんがそう言ってたから、これが正しいのです」などという主張に耳を傾けるべきではありません。特にネット動画のようなメディアを通じて語られるさまざまな見解は、何に立脚して得られたのかが不明な結論を、自信満々で紹介していることも多々あります。

 

 基本的には検証可能なモデル分析を伴う情報に耳を傾けましょう。また、主張されている結論が自分にとって大切だと思う場合には、その主張を支える書物や学術論文を入手して読み解き、自らその真偽を判定する習慣をつけましょう。これは氾濫する情報からの自己防衛の営みです。

 

 


■レビューとチェックに疎い日本社会

 

 このことについては、私たちの社会が抱える問題をひとつ紹介し、皆さんに考えていただきたいことがあります。

 

 政府や地方公共団体が進めるインフラ計画や財政計画は、多くの場合数学モデルに基づいて、その合理性が主張されています。事前の報告書作成には、その分野の識者ということになっている(つまり官僚から依頼された)各種機関の研究者や専門家が充てられています。それはよいのですが、出来上がった報告書のピアレビュー(査読。同一分野の専門家による論理的妥当性の確認のこと)というものの存在を聞いたことがありません。

 

 学者が専門学術誌に研究論文を掲載してもらうためには、必ずピアレビューを受けます。それをパスしなければ論文誌に掲載してもらえないのです。しかしながら……場合によっては一国の行く末を左右するかもしれない計画書や報告書に査読がないのはどうしたことでしょう。

 

 ましてや、公的なプロジェクトが完了したときに、事前の報告書が的を射た合理的なものだったのか、そこで用いられたデータには誤りや偏りはなかったのか、これらはほとんどの場合、見向きもされません。

 

 このことには理由があります。ひとつには、そのようなレビュー制度が存在しないからです。それに加えて、他の研究者がそうしたチェックを行う研究を自主的に行っても、学界で評価されないからです。だから、こうした報告書は、科学的な検証をなされないままです。筆者は、このことが日本の社会にとって、相当に大きな問題だと思っています。

 

 

 

■本来なら多くの人の「首が飛ぶ」事態

 

 近年の万博やオリンピックの様子を観察すると、

 

 1: 収支のモデルが粗雑(入り込み客数も客単価も、私企業が行うような幅をもたせた予測をしていないようです)

 2: 問題の所有者が不明確(いったい誰を喜ばせるためのプロジェクトなのかが常に曖昧)

 3: 公共事業の常で業者の定価で物品を仕入れているようだ(必ず支出が大幅に膨らみます)

 4: 関係者の利益はしっかりと事前に確定している(プロジェクトが成功しても失敗しても儲かる)といった問題を抱えています(1、3、4は今に始まったことではありませんが)、計画を後で本気で見直したら,多くの人の首が飛ぶような内容ばかりだと感じます。

 

特にスポーツと文化を背景にもつプロジェクトの場合は、関連する利益団体(かつ圧力団体)の圧力が強く、またマスコミも基本的には後押しするので、国民の疑念やサイレントマジョリティの反対意見を反映させる術もなく、あれよあれよという間に計画が実行に移されてしまいます。国民も国会議員も誰一人明確に賛成していないのに「日独伊三国同盟」が締結されてしまった、という日本の恐ろしい特質は、いまも全く変わっていないように思えます。

 

 

 

栗田 治
10/10(火) 6:04配信
現代ビジネス

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