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障害者虐待防止へ期待 超党派議員立法の動き、本格化

2009年03月19日 | スクラップ




 障害者虐待防止法が超党派による議員立法を目指してようやく動き出した。自民、公明両党の与党プロジェクトチーム(PT、座長・馳浩自民党衆院議員)が法案の骨子をつくり、初会合では他党へ協力を呼びかけることを確認した。90年代後半以降、報道などで次々と発覚した虐待問題を受け、何度か浮上しては消えていった法案の成立に関係者は大きな期待を寄せる一方、課題も指摘されている。【野倉恵、芳賀竜也】

 


■事件続きやっと本腰

 「午前7時から午後10時まで働いた」「休日は月2日で外出できなかった」「歯磨きはほとんどしていない。風呂は月2回」「里帰りは23年間で1回」--。07年6月、札幌市の食堂で住み込みで働いていた知的障害のある男女3人(31~51歳)が保護された。

 13~30年間も無報酬で働かされた上、障害年金も横領された「奴隷状態」だったなどとして、男女らは08年2月、食堂の経営会社などを相手取り、約4500万円の損害賠償を求めて提訴した。札幌市は01年、療育手帳更新の際に従業員と面談し「過酷な労働の疑いがある」と把握していたのに、弁護士に促され3人を保護する18日前まで一度も現場を調べなかった。

 「防止法があれば事件は起きなかったかもしれない」。食堂の元経営者を刑事告発した八木宏樹弁護士は、そう指摘する。

 障害者への殴打や拘束、年金搾取などは「しつけ」や「管理」などと説明されるケースが多く、以前はなかなか表面化しなかった。

 しかし、96年に水戸市の段ボール加工工場で社長が従業員に手錠をかけ地下に閉じ込めるなど虐待の実態が判明。翌年、福島県の知的障害者施設でも入所者への薬物過剰投与などが発覚した。

 さらに04年、福岡の知的障害者施設で施設長による入所者への暴行が明らかになったのを機に、05年には障害児を持つ議員らを中心に法制化の機運が高まった。虐待する側の「理由」がどうあれ、障害者への虐待を明確に禁じて通報を義務付ける法案の提出が自民、民主、公明各党で模索された。

 だが、同年の「郵政解散」で事情が一変。昨年も臨時国会への提出が検討されたが、福田康夫首相の退陣で露と消えた。

 今国会への提出の動きは「近づく選挙向け」との冷めた見方もあるが、札幌市の事例が判明したことなどから「もうこのまま放置できない」(与党議員)との声が強まったことも背景にある。

 


■擁護センター人材、職場調査の担当、学校での通報…課題多く

 判断能力にハンディがあり自ら訴えることが難しい人のため、周囲が虐待を早期に発見し救済する。そうした議員立法の先例が、00年に全会一致で成立した児童虐待防止法だ。同法は暴力や暴言、わいせつ行為、放置を虐待と定義。発見者に通報を義務付け、施設職員や教員などに早期発見の努力義務を課し、通報者を守秘義務違反に問わないとした。児童相談所の安全確認義務も明記した。

 こうした規定を引き継いで05年に同じく超党派の議員立法で成立した高齢者虐待防止法は、定義に経済的虐待を加え、通報先を市町村とし、市町村職員は立ち入り調査や一時保護ができるとした。

 障害者虐待防止法についても与党PTは12日の初会合で、超党派での成立を目指すことを確認した。

 法案には職場での虐待防止も加わった。「職場での虐待は『せっかく入れた会社だから』と埋もれがちだが、障害者の社会参加のためにこそ防止すべきだ」(高木美智代・与党PT副座長)との考えからだ。

 だが、法案に詰めるべき点は多い。障害者虐待への対応の核として都道府県に置かれる権利擁護センターは、虐待に精通した人材の確保が課題となる。

 職場への調査をどこが担うかも問題だ。知的障害者の元工員が社長を訴えた裁判では03年、元工員の窮状を聞きながら適切に対応しなかったとして、大津地裁が労働基準監督署の怠慢を認めたが、「逮捕権限を持つ労基署が直ちに調査に入るのは強権的。対応は職業安定所の方が望ましい」(与党議員)との意見も強い。その一方、調査経験の乏しい職安で対応できるかという懸念もある。

 また、法案は学校と病院での虐待には通報を義務付けず、学校は校長、病院では管理者に、防止や対応の「包括的義務」があると規定するにとどめた。「学校内での健常者へのいじめは通報せず、障害者への虐待だけを通報するのか、といった難しい問題がある」(同)うえ、精神科病院では精神保健福祉法で定められた病院内での細かい規定と調整が必要なのだという。

 

 


■障害者虐待防止法案骨子(与党PT案)


● 誰であっても障害者を虐待してはならない
● 虐待は身体的、心理的、性的、経済的なものと放置
● 家庭や施設、職場では、生命や身体に重大な危険がある虐待を受けたとみられる障害者を発見した場合は、誰にでも通報義務がある。しかし、学校や病院での虐待に通報義務はない
● 施設職員や教員、医師、事業主らに虐待早期発見の努力義務
● 通報による不利益扱いを禁止
● 都道府県に対応窓口の権利擁護センターを設置
● 家庭での虐待は市町村が立ち入り調査し一時保護も
● 施設の虐待は市町村から報告を受けた都道府県が調査
● 勤務先での虐待は都道府県から報告を受けた労働局が調査
● 学校での虐待は防止を学校長に、病院では管理者に義務付け
● 国と自治体に防止などの責務




毎日新聞 2009年3月18日 東京朝刊

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