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学力って何?

2009年01月28日 | スクラップ

学習指導要領改定/上 加速する私立志向 公立校の焦り


 意欲の低い子ども、多忙で余裕のない教員……。さまざまな不安や課題を抱えてきた教育現場は、学習指導要領改定によって、これまでの「ゆとり」から再び「学力」に重点を移す。本当の学力とは何か、「生きる力」は養えるのか。模索が続く学校から報告する。

 

■「5日制、誤りだった」 生徒減、対策は補習

 進学情報誌をめくる指が止まった。ライバルと思っていなかった私立高校が大学合格実績を伸ばし、自分の学校と肩を並べている。「いつの間に……」。埼玉県立所沢高校の小林清木校長はショックを受けた。

 学力アップのため3、4時間目をつなげて90分間授業にし、夏休みを2日間短縮した。昨秋から月1回、土曜日に4時間、全教科で授業を始め、今春からは月2回に増やす。「学校5日制は間違いだった。1日減って逆に平日にゆとりがなくなった」。小林校長は漏らした。

 この方針に保護者からも賛成の声が圧倒的に多い。

 埼玉県内では、一昨年公立高の一部が土曜授業を始め、10校に広がった。学校教育法は土曜授業を原則認めていないため、「公開授業の日」として、休日出勤扱いにしている。2年前に先陣を切った大宮高は「私立高の多くは週6日制を取っている。授業数の差を埋めたかった」という。現役生徒の進学率は75%から87%に増え、実際、効果も出始めた。

 公立高が焦るのも無理はない。受験情報の出版社「声の教育社」によると、土曜日に授業や補習をする1都4県の私立高は92%に上る。公立高は41%で、差は著しい。

  ×  ×

 ゆとり重視の学習指導要領があるにもかかわらず、公立校が授業を増やそうと血眼になる。

 「日本文化を英語で説明しよう」。大人でも苦しみそうな難題に、杉並区立和田中の生徒が挑戦する。大手進学塾「サピックス」が土曜日に開講する「夜スペシャル」の一こまだ。講師はすぐに全員の名前を覚え「優秀だね」とほめ言葉を繰り返す。

 和田中に先駆けて港区教委は05年度、区立中で月2回土曜日に大手進学塾「早稲田アカデミー」の講師による補習を始めた。私立中に進む小学生が6割近くになり「公立に魅力を」と決断した。国数英の3教科に無料で参加でき、進学塾に払う年間5800万円の費用は区が負担する。

 生徒減に悩む青山中はさらに月2回各3時間、教員が授業を行う。04年に新入生が12人に落ち込んだのをきっかけに導入した。昨春の新入生は51人と2クラスを編成できるまでに回復した。平林健校長は「公立でも十分な学力をつけられる。生き残りをかけている」と話し、毎年、新入生の数値目標を掲げる。

 加速化する私立志向に、公立は防戦に必死だ。「現場は数年前から、学力回帰にカジを切っている」。お茶の水女子大大学院の耳塚寛明教授は指摘する。学力低下の不安のもと、学校は「成果を出せ」との強い圧力にさらされている。「生きる力を伸ばすゆとり教育の理念は間違っていない。活用力を伸ばすため教員が指導力を高めなくてはいけない時期にきている」

 


毎日新聞 2008年2月16日 東京朝刊

 

 

 

学習指導要領改定/中 小学英語、目標どこに
 

■人材確保が急務

 「パンケーキを作ろう。材料は?」。大阪府池田市立細河小学校の辻公美子教諭が、なめらかな英語で5年生に問いかける。児童が「小麦粉」と答えると、続けて「英語では?」。横にいるニュージーランド人の外国人指導助手(ALT)が「フラワー」と手本を発音し、辻教諭が「ウィ ニード……」と短文を作って繰り返させ、授業は軽快に進んだ。

 4日、東京都内で開かれた日本教職員組合の教育研究全国集会で、辻教諭が報告した。留学経験を生かした先進的な取り組みに参加者たちはうなずいたが、「あそこまではなかなかできない」とのつぶやきも漏れた。

 文部科学省によると、06年度は96%の小学校が何らかの英語活動に取り組んだ。だが、わずか年3回の学校もあれば、授業を週1回行い児童向けの英検で高スコアを目指す自治体までさまざま。新しい学習指導要領では5、6年生を対象に週1回英語の授業が必修化され、英語を母国語とするALTによる指導も求める。取り組みのばらつきを是正するのが狙いだ。

  ×  ×

 北海道斜里町立川上小学校で7日、日系ボリビア人の伴井小百合さん(37)が最後の授業に臨んだ。町内の小中学校11校で3年半、全児童・生徒に英語を教えてきたがボリビアに住む親の病気で帰国することになった。後任は決まっていない。

 伴井さんは両親の母国・日本で働くため札幌市のホテルに就職。03年に斜里町に移り住み、翌年、英会話教室を開いた。伴井さんの母国語はスペイン語だが、英語も一通り使いこなせるため、町教委から声がかかった。

 町は国の仲介で外国青年を招致する事業「JETプログラム」を通じALTと契約していた。しかし、年間600万円の経費が負担になり渡航費用などのかからない地域の人材を探していた。授業は1校で年間5回ほど。内容も単語ゲーム程度だが、伴井さんは「子どもたちは私のような外国人との交流を楽しんでいる」と話す。

 ALTの確保は学校や自治体にとって大きな課題。経費を節減できる民間企業への委託の動きも広がるが問題も多い。大手業者と契約する茨城県のある市教委は「遊び感覚で日本に来て、きちんと英語を教えられない人もいる」と打ち明ける。神奈川県内の元ALTの米国人は「担任に英語がうまく通じず、つらかった」と漏らす。小学校では授業中、担任がALTに任せ切りにして、別の事務作業をするケースもあるという。

 学習指導要領改定案は小学校英語の目標について、英語力の向上ではなく、「英語に慣れ親しむ」にとどめており、一部の関係者からは「中途半端だ」との声も聞かれる。導入に反対する鳥飼玖美子・立教大教授は「親は『英語を早く始めればペラペラになる』という幻想を抱いているが、きちんと教えられる人材が不足している状態で始めても、かえって逆効果だろう」と指摘している。

 


毎日新聞 2008年2月17日 東京朝刊

 

 


学習指導要領改定/下 進む理科離れ、必修化する柔道
 

■教師底上げ課題

 「この実験は危ないから、本当は小学校ではやらないんだ」。山形県舟形町立舟形小の教室では、理科支援員、小国隆さん(62)が、にこやかに語りかける。蒸発皿の砂糖に濃硫酸と酸化剤を注ぐとバンという音とともに火柱が上がった。「すんげえ~」。児童たちが目を丸くした。

 理科支援員は理科に詳しい元教員らを小学校に派遣する制度で、今年度から文部科学省の外郭団体「科学技術振興機構」(JST)が始めた。実験のおもしろさを伝えるだけではなく「準備や片付けを手伝ってくれ、時間が半分で済む。先生の負担が減りありがたい」(井上洋子校長)というメリットもある。しかし、予算に限度があり実際に派遣されたのはわずか1割の約2600校にとどまる。

   ×   ×

 世界トップレベルだった日本の子どもの理科の成績が後退している。経済協力開発機構(OECD)の06年国際学力テスト「学習到達度調査」(PISA)で、科学的活用力は前回の2位から6位に落ち、科学への関心も最低レベルにある。

 原因の一つに教員の理科離れがある。JSTの05年アンケートで、小学校教員の51%が「実験に失敗するなど教科書通りに教えられない」と答えた。06年PISAでも実験や意見発表をさせる機会が少ないことが分かり、指導に問題があることが浮き彫りになった。

 新潟県内の男性教諭(35)は10年前、授業中に児童が口にした言葉が忘れられない。「その実験の結果は塾で習った」。文系の大学を出た教諭は理科にうとく、指導書にも実験方法と結果しか書かれていない。どうしたら子どもをひきつけられるか、いつも緊張しながら実験室に立った。児童を夢中にさせるまで3年かかった。

 教諭や校長を含め指導歴約40年の小国さんは「大学で理系の授業を増やすなどして教師の底上げをしないと理科離れを食い止めるのは難しいだろう」と話す。

   ×   ×

 「パン、パン」。敷き詰められた畳から大きな音が響く。岩手県洋野町立大野第二中学校の体育館では青いジャージーの上に柔道着をまとった2年生11人が2人1組で技を掛け合っていた。指導する外島明子教諭(49)は選手経験はないが有名な柔道家の三船久蔵氏に魅せられ県の講習会で指導法を学んだ。だが容易ではない。「柔道には特有の技や心構えがあり、短い研修では身に着かない」

 岩手県内の保健体育教員276人のうち、66%が初段以上の有段者。だが、全中学校をカバーできない。県は体育教師向けの講習会を毎年開いてきたが、国の「三位一体の改革」で補助金がなくなり、05年度から廃止された。文科省は柔道の必修化に向けて、指導者不足の地域で専門家による講習会を開くことにしており、予算5000万円を計上している。

 教育現場への柔道の普及を目指す全日本柔道連盟の浅野哲男さんは「行政は教員が持つ武道のレベルの実態を把握していない。今の予算では不十分で指導教員全員の研修を義務づけてほしい」と要望する。柔道の必修まであと3年。09年度にも新しいカリキュラムが始まる理科と同様、残された時間は少ない。

    ◇

 この連載は山本紀子、市川明代、永井大介、夫彰子、三木幸治が担当しました。

 

 

毎日新聞 2008年2月18日 東京朝刊

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1 コメント

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Unknown (ペット保険の保険料)
2009-06-08 14:35:15
20年前ぐらいは、土曜日に小学校ありましたよね。

それでも、たくさん勉強している~!とか、嫌だな~っていう気はありませんでしたが。

むしろ、土曜は午前だけで帰れると思って嬉しかった思い出があります。

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