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在日女性に対する「さっさと祖国へ帰れ」は差別的な言動、ブログ投稿者に賠償命令

2023年10月14日 | スクラップ

 

 

 

インターネット上に「日本国に仇なす敵国人め。さっさと祖国へ帰れ」と書き込まれたことは、不当な差別にあたるなどとして、川崎市在住の在日コリアン三世、崔江以子(チェ・カンイヂャ)さんが、投稿者の男性を相手取り、計305万円の損害賠償をもとめた訴訟の判決が10月12日、横浜地裁川崎支部であった。櫻井佐英裁判長は計194万円の支払いを命じた。(ライター・碓氷連太郎)

 

■被告側は争う姿勢を見せていた

 

判決などによると、小説の登場人物をもじった「ハゲタカ鷲津政彦」というアカウントが2016年6月14日、アメーバブログ上に「【川崎デモ】崔江以子、お前何様のつもりだ!」というタイトルで記事を投稿し、「日本国に仇なす敵国人め、さっさと祖国へ帰れ」などと記載した。

 

崔さんは同年9月16日、法務局にブログの削除を求める人権侵犯被害を申告した。同月27日に人権侵犯と判断されて、ブログの書き込みは削除された。しかし、投稿者はその後も「差別の当たり屋」「被害者ビジネス」などと、崔さんに対するヘイトスピーチと誹謗中傷を続けた。

 

崔さん側は2021年11月、これらの書き込みは差別にあたるとして、2016年6月のブログ投稿1本に対して慰謝料など165万円、その後のブログ5本、Twitter(現X)の投稿7本に対して併せて140万円、計305万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。

 

一方で、被告の男性側は、自身の発言は差別的言動にあたらず、「差別の当たり屋」や「被害者ビジネス」は造語で一般的に定まった意味合いはなく、多義的に解釈されるものであるなどと主張し、争う姿勢を見せていた。

 

 

 

■「不当な差別的な言動」と認定された

 

横浜地裁川崎支部の櫻井裁判長は、下記のように書き込みが不法行為にあたると認めた。

 

・「帰れ」などの書き込みは、原告を含むいわゆる在日コリアンは日本の敵であると何らの根拠なく断定する悪意ある表現を用いて、その出身地を理由として、日本国外へ排斥することを煽る表現であり、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動と解するのが相当である。ヘイトスピーチ解消法2条の「本邦外出身者に対する不当な差別的な言動」に該当し、投稿は不法行為を構成する。

 

・「差別の当たり屋」「被害者ビジネス」という表現は、原告の社会的評価を低下させるとはいえず、名誉毀損には当たらないが、原告を中傷するために用いられた表現であり、約4年間という長期にわたって執拗に中傷が繰り返されていたことなどを踏まえると、社会的通念上許される限度を超える侮辱にあたるというべきである。

 

 

 

■原告代理人「抑止効果が認められる判決だ」

 

この日の判決を受けて、原告代理人の神原元弁護士は記者会見で、「ヘイトスピーチを断罪するきわめて画期的な判決」と評した。また「さっさと祖国に帰れ」という書き込みについて、「日本の地域社会の一員として過ごした原告、崔さんの存在を否定する発言であり、崔さんの名誉感情や生活の平穏、個人の尊厳を毀損すると認められたことは大きい」と語った。

 

また、原告代理人の師岡康子弁護士も「『さっさと祖国へ帰れ』の一言で、100万円以上の賠償が認められたのは画期的だ。ブログの書き込み内容は、崔さんの存在自体を否定したものだと認めたもので、マイノリティに対する『帰れ』はネット上にあふれているが、匿名でも責任を負わされるということで抑止効果が認められる判決だと思う」と述べた。

 

 

 

■原告「想像した以上の大きな希望を示してくれた」

 

判決後の記者会見の場に拍手で迎えられた崔さんは安堵の表情を見せながら、次のように語った。

 

「助けてほしくて、これから先も差別をされたくなくて裁判をしました。今日の判決に向けて、川崎の桜本のハルモニ(おばあさん)たちが、一文字、一文字、心を込めて『さべつはゆるしません』と(垂れ幕に)記してくれました。これまで『ふれあい館』で出会ってきた『国に帰れ、出てけと言われるのは怖い。だから自分の名前も名乗れない』と語っていた子どもたちを思いながら、判決を聞く席につきました。今日は、想像した以上の大きな希望を示してくれました」

 

「2016年にヘイトスピーチ解消法ができてよかった。あの法律ができたことの喜びを思いました。差別の被害を止めるために法律が機能し、2016年から7年という長い時間がかかりましたが、解消法が支えになって、今日の良い判決が出てホッとしている」

 

崔さんは今年5月にあった本人尋問で、子どものころは在日であることを隠していたものの、高校3年生のときにルーツを隠さずにいこうと、本名を公表するようになったことや、2013年に川崎でヘイトデモが行われた際、最初は怖い思いをしたものの勇気を振り絞ってヘイトスピーチを止める運動に参加したことなどを告白した。

 

国会で参考人として発言して以降、勤め先に虫の死骸が送られるなど、電話や郵便での嫌がらせが続いていたことなどにも触れた。

 

また、「祖国へ帰れ」という言葉に対して、「私の命を繋いでくれた親、命を繋いだ子どもを無効化する言葉。これまでたくさん差別をされていきたけれど、『祖国に帰れ』という言葉はこの社会のメンバーではない、いらない人間だと無効化し、これまで出会って共に生きてきた人たちとの時間や信頼を無効化し、ともに生きることを奪うものでもある」という心情を吐露していた。

 

男性の書き込みはすでに削除されているが、崔さんが裁判を起こして、「差別は違法という判決を得たい」などと思いを語ったニュース記事がまとめサイトに転載されるたびに、Xなどに「嫌なら帰れ」「いつまで居座るつもりだ」といった投稿がされている。

 

崔さんの代理人は今年8月、まとめサイトやXへの投稿について人権侵犯被害を申告している。師岡弁護士によると、申告したうちの20件中11件は違法と認定され、削除要請をされたという報告があった。しかし、その多くが今も削除されずに残っているという。

 

「『国に帰れ』という書き込みは、差別にあたるだけではなく、違法である表現を放置していると責任をプロバイダに問いやすくなる。まずはプロバイダの責任を問わないと、被害者が訴えても変わらないのではないか。今回の判決が大きな力として、差別的な書き込みは違法だと、プロバイダに責任を負わせるための法改正への道を作っていきたい」(師岡弁護士)

 

 

 

2023年10月12日 19時21分

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