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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

根津公子の都教委傍聴記(2018年4月26日)

2018年04月30日 | 暴走する都教委
 ◆ 足立区性教育「不適切」見解を批判する委員はなし (レイバーネット日本)
 公開議案が①「運動部活動の在り方に関する方針」について、
 公開報告が①教科用図書選定審議会の答申について~教科書の採択方針について~
  ②オリンピック・パラリンピック教育における被災地等と連携したパラスポーツ体験交流の実施について
  ③中学校等における性教育への対応について
  ④昨年度指導力不足教員の指導の改善の程度に関する認定等及び条件付き採用教員の任用について。
 非公開議題は懲戒処分の議案及び報告。

 「中学校等における性教育への対応について」の報告に29名の傍聴者が駆けつけたが、傍聴定員20名を理由に、9名は傍聴できなくされた
 箱に入れた1~29の数字の書かれた番号票(紙)の中から担当職員がハズレとなる9枚を引き抜いてその番号を発表したのだが、私も含め、早い時刻に番号表を受け取った1~6番票が全てハズレ、傍聴できなくなった。普段の傍聴者は6人前後。この番号票は使い回しをしているので、普段使わない票(紙)とは手触りが違うことは容易に想像できる。担当職員が箱に手を入れたときに、ふわふわした使い古しの票をつかんだということに違いない。使ってない新しい紙は手にまとわりついては来ない。公平・公正ではない抽選だった、と私は思う。担当職員に苦言を呈したが、まったく反省する様子はなかった。私はHさんから傍聴券を譲り受けて傍聴できた。
 ■ 「中学校等における性教育への対応について」
 配布された報告資料はすでに都教委HPにアップされているので見てください。↓
 http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/press_release/2018/files/release20180426_03/taiou180426.pdf
 「『性交』『避妊』『人工中絶』といった中学校学習指導要領保健体育にないことばを使った授業は不適切。保護者の理解を必ずしも十分得ないまま授業が実施されていた。」というのが、授業に対する都教委の見解だ。
 そして今後は、「学習指導要領を基本とする。すべてを集団指導で教えるのではなく、集団指導で教えるべき内容と個別指導で教えるべき内容を明確にする。学習指導要領を超える内容を指導する場合には、事前に学習指導案を保護者に説明し、保護者の理解・了解を得た生徒を対象に個別指導を実施するなど」とする。
 この報告に教育委員たちの発言(要旨)は次の通り。

 北村委員:「今回、議論が起こったことが良かった。議論が大切。現場では萎縮せず、取り組んでほしい。性情報がいろいろある中、子どもには知る権利、自己決定する権利がある。専門家を講師にした教員研修をしたらどうか。授業について気になったのは、保護者への周知が十分だったかどうか。保護者には様々な考えがあり、イスラム教、カトリックの家庭もあるから、理解を得ることが大事。一斉指導と個別指導をし、子どもや保護者が選択できるようにするといい。授業で避妊の方法を生徒に述べさせる場面があったが、嫌な気持ちになった子どももいたかもしれない。都教委の役割として指導・助言があるが、上からではなく、対等なパートナーとして行なってほしい。現場が萎縮しないで子どもに寄り添うよう、性教育にあたってほしい。」
 遠藤委員:「性教育は、普遍性と家庭教育が大事。普遍性を担保するのは学習指導要領。生徒参加型の授業で、個別に答えを求める場面があったが、性教育は家庭教育の範ちゅう。保護者の了解が必要だ。ことの経緯についてだが、文教委員会で質問がなければ、都教委はこの授業に関して知らないままだったのか。」
 指導部長:「授業に問題があると提供があった上で、文教委員会で質問があった。」
 宮崎委員:「議論になったのはとてもいい。デリケートな問題だから、一斉授業と個別授業を。家庭の考えがあるから、家庭との連携が必要。正確な情報を子どもに与えるのが、子どもを守ること。家庭との連携はできていたのか。」
 指導部長:「保護者には学校だよりで知らせていたが、内容についてはよく伝わっていなかった。」
 秋山委員:「医療現場から見ると、個人差が大きい。集団授業ではなく、また、家庭の理解が大事。都教委作成の『性教育の手引き』(平成16年)は古いので、改定する予定はあるか。」
 指導部長:「今年度中に改定する。」

 山口委員:「時代の変化が早く、教育が追いついていけてない。個人差があること、センシティブな問題だから、時代に先駆けるのがベストとは言えない。慎重に。足立区教委と都教委が連携し共有できるか(語尾聞こえず)」
 北村委員:「一斉授業、個別授業が難しい。一斉授業で傷つけられる場合もある。」
 中井教育長:「今後も丁寧に取り組みを進める。」

 北村委員は4月16日の朝日デジタル版で、「大事なのは、子どもたちが考える材料をきちんと得ることができること」「性教育はセクシュアリティーの問題や健康の問題、人権の問題など、大きなくくりで考えれば、個人の権利や他者の尊重など、多様な人間関係を築くための能力を身につける『市民性教育』として位置づけることも不可欠ではないか」と発言していたので、都教委の見解に異論を提起するかもと多少の期待を持って聞いた。
 しかし、「子どもの知る権利・自己決定権、子どもに寄り添う性教育」と、言葉はきれいだけれど、都教委の見解及び全都の中学校校長に対する都教委の指導についての批判はなかった
 『性交』『避妊』『人工中絶』のことばを使った性の授業が、「子どもの知る権利・自己決定権、子どもに寄り添う性教育」であったのか、なかったのか、北村委員は意見表明すべきではなかったのか。それをしなければ、議論にならないではないか。
 また、「現場では萎縮しないで」と言うが、独裁都教委の見解を示し校長を指導すれば、現場は十分萎縮することが想像できないのか。この発言には、現場が萎縮するような教育行政を都教委が長年やってきたことへの認識が見られない。
 他の教育委員も、都教委の見解を良しとしたのか。批判は一切しなかったのだから、「不適切な授業であり、指導が必要」という考えということだろうか。遠藤委員の「性教育は家庭教育の範ちゅう」発言には、氾濫する性情報の社会に子どもたちが置かれているといった危機意識が感じられなかった。
 ◇「個人差があり、デリケートな問題だから一斉指導と個別指導を」は時代錯誤では?
 半世紀前に私の年代が受けた性教育では、女子だけを集めて初潮について教えられた。そして、「男子には話してはダメ」と口止めされた。
 女子だけを集めたこれは、都教委が言うところの個別指導だ。
 そうした性教育によって、私は初潮を喜んでいいのか、恥ずかしいことなのかが分からず悩んだ。
 労基法に生理休暇が保障されていても、その取得率が非常に少なかったことを考えると、生理休暇を男性管理職に告げることに抵抗のある女性が少なくなかったのではないかと思う。
 北欧では小学校入学段階から自分のからだを知る授業が行われていることは多くの人の知るところだ。その授業は当然、一斉授業
 隠さず教えることが当たり前となったこれらの国の人々の意識は、女性が性被害を告発したら二次被害が起きる日本の意識とは違うと聞く。
 「個人差、デリケート」を理由に個別指導をいう都教委及び教育委員の性意識に、偏見があるのではないかと思う。
 ◇「保護者の理解・了解」、なぜ性教育についてだけ言うの?!

 性教育に限らず、「日の丸・君が代」オリンピック・パラリンピック教育についても都教委は、「事前に学習指導案を保護者全員に説明し、保護者の理解・了解を得た生徒を対象に個別指導を実施する」を言ってみてはどうだろう。
 これらの問題についても、「保護者の理解を必ずしも十分得ないまま実施されていた」し、北村・宮崎両委員が言うように、「保護者には様々な考えがある」のだから。
 また、これらの問題についても、北村委員が言うように、「子どもには知る権利、自己決定する権利がある。」
 ◇ 足立区中学校の性教育

 4月16日の朝日デジタル版は、問題とされた性教育について、授業を現場の教員と連携して作ってきた、宇都宮大学の艮香織(うしとらかおり)准教授(保健学)の話を紹介する。当該の学校の校長や区教委から、都教委はこの内容を収集していたはず。なのに、これについての見解や論議は一切なかった。(以下は、朝日デジタル版の艮香織氏の話)
      *** *** *** ***

 6年前から足立区立中の教員と授業作りに取り組んできました
 総合的な学習の時間を使い、1年生では「生命誕生」や「女・男らしさを考える」、2年生では同性愛などの「多様な性」をテーマにしています。今回問題とされたのは3年生の「自分の性行動を考える」という授業で、その次は対等な関係を考える「恋愛とデートDV」となります。
 授業の目標は、正確な情報や科学的知識に基づき、リスクの少ない性行動を選択する力を養うことです。
 今回の授業では、最初に生徒同士で「高校生の性交は許されるか」を討論。そのあと、10代の人工妊娠中絶数や産んだ子どもを遺棄した事件の新聞記事などを紹介します。
 その上で、中絶可能期間や避妊方法について説明。性交をしないことが確実な避妊方法であること、困ったときには相談機関があることも伝えます。
 生徒にアンケートをすると、授業前は半数近くが「2人が合意すれば、高校生になればセックスをしてもよい」と回答しますが、授業後はその割合が10ポイント以上減少します。
 正しい知識を伝えることで、性行動に慎重になることがわかります。

 性教育をすることで「子どもが興味を持ってしまったら危険だ」と考える人もいますが、子どもたちをもっと信頼していいと思います。
 性はいやらしいものではなく、人権を基軸とした学びととらえるべきです。
 子どもたちの現実に向き合って、よりよい教育を模索していくことがなにより大切だと感じています。
 ほかの議題についての報告を今回はカットします。都教委ホームページに資料がアップされているので、そちらをご覧ください。
『レイバーネット日本』(2018-04-27)
http://www.labornetjp.org/news/2018/0426nedu
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