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医学系学術団体「日本医学会連合」が罰則付き感染症法改正に反対する声明

2021年01月20日 | 平和憲法
 ◎ 感染症法等の改正に関する緊急声明

2021年1月14日
一般社団法人日本医学会連合
会長 門田 守人

 現在、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下、感染症法)等の改正が検討されています。報道や政府与野党連絡協議会資料によれば、「新型コロナウイルス感染症の患者・感染者が入院措置に反したり、積極的疫学調査・検査を拒否したりした場合などには刑事罰や罰則を科す」とされています。
 日本医学会連合は、感染症法等の改正に際して、感染者とその関係者の人権と個人情報が守られ、感染者が最適な医療を受けられることを保証するため、次のことが反映されるよう、ここに声明を発します。
1) 感染症の制御は国民の理解と協力によるべきであり、法のもとで患者・感染者の入院強制や検査・情報提供の義務に、刑事罰や罰則を伴わせる条項を設けないこと。
2) 患者・感染者を受け入れる医療施設や宿泊施設が十分に確保された上で、入院入所の要否に関する基準を統一し、入院入所の受け入れに施設間格差や地域間格差が無いようにすること。
3) 感染拡大の阻止のために入院勧告、もしくは宿泊療養・自宅療養の要請の措置を行う際には、措置に伴って発生する社会的不利益に対して、本人の就労機会の保障、所得保障や医療介護サービス、その家族への育児介護サービスの無償提供などの十分な補償を行うこと。
4) 患者・感染者とその関係者に対する偏見・差別行為を防止するために、適切かつ有効な法的規制を行うこと。
 以下にこの声明を発出するにいたった理由を記します。
 現行の感染症法における諸施策は、「新感染症その他の感染症に迅速かつ適確に対応することができるよう、感染症の患者等が置かれている状況を深く認識し、これらの者の人権を尊重しつつ、総合的かつ計画的に推進される」ことを基本理念(第2条)としています。
 この基本理念は、「(前略)我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。このような感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ、感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている(同法・前文)」との認識に基づいています。
 かつて結核・ハンセン病では患者・感染者の強制収容が法的になされ、蔓延防止の名目のもと、科学的根拠が乏しいにもかかわらず、著しい人権侵害が行われてきました。
 上記のように現行の感染症法は、この歴史的反省のうえに成立した経緯があることを深く認識する必要があります。
 また、性感染症対策や後天性免疫不全症候群(AIDS)対策において強制的な措置を実施した多くの国が既に経験したことであり、公衆衛生の実践上もデメリットが大きいことが確認済みです。
 入院措置を拒否する感染者には、措置により阻害される社会的役割(たとえば就労や家庭役割の喪失)、周囲からの偏見・差別などの理由があるかもしれません。現に新型コロナウイルス感染症の患者・感染者、あるいは治療にあたる医療従事者への偏見・差別があることが報道されています。
 これらの状況を抑止する対策を伴わずに、感染者個人に責任を負わせることは、倫理的に受け入れがたいと言わざるをえません。
 罰則を伴う強制は国民に恐怖や不安・差別を惹起することにもつながり、感染症対策をはじめとするすべての公衆衛生施策において不可欠な、国民の主体的で積極的な参加と協力を得ることを著しく妨げる恐れがあります。
 刑事罰・罰則が科されることになると、それを恐れるあまり、検査を受けない、あるいは検査結果を隠蔽する可能性があります。結果、感染の抑止が困難になることが想定されます。
 以上から、感染症法等の改正に際しては、感染者とその関係者の人権に最大限の配慮を行うように求めます。
『日本医学会連合』(2021年1月14日)
https://www.jmsf.or.jp/news/page_822.html
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