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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

東京都は教員に国旗・国歌の指導を強制していないか

2016年10月30日 | 暴走する都教委
 ◆ "君が代強制"問題、明記した教科書を選定妨害する都教委
   ~「生徒が認識」を極度に警戒、秘密会資料開示で明らかに
(マスコミ市民)
永野 厚男(教育ライター)

講演する高嶋さん(9月18日、都教委を訴える会総会)

 東京都教育委員会は2003年10月23日、「国旗に向かって起立し国歌を斉唱する」など盛った通達を発出して以降、この文言通り卒業式等で校長に職務命令を出させ(音楽専科教諭には別途、ピアノ伴奏強制の職務命令を発出)、不起立・不伴奏の教職員を一律、懲戒処分にしている(被処分者には〝服務事故再発防止研修〟と称する懲罰研修も強制)。この〝君が代〟施策は「強制だ」と高校生が認識することを、都教委が極度に恐れている実態を明示する資料が、増田都子・元千代田区立中学校教諭の粘り強い情報開示請求で明らかになった。
 ◆ 情報開示請求で、権力による選定妨害の真の意図を暴く

 国旗国歌法を巡り、側注に「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記述した、実教出版『高校日本史A』(近現代史。以下『A』)教科書の都立高校等での選定を、都教委指導部は12年度から妨害し続けてきた。
 12年度は233都立高校中、翌13年度の新1年生用に『A』を選定する可能性のある学校が絞り込めたため、都教委は当時の増渕達夫・高校教育指導課長(現・都教職員研修センター研修部長)らが、17校の校長に対し電話で「留意点を個別に情報提供」とする圧力をかけまくり(最多校は4回)、採択をゼロにしてしまった。
 だが、採択対象が『高校日本史B』(通史。以下『B』)にも広がった13年は、電話作戦では対処し切れなくなり、都教委は同年6月27日の定例会で、「『一部の自治体で…』の記述は、『卒業式等の国歌斉唱適正実施は、児童・生徒の模範となるべき教員の責務』とする都教委の考え方と異なるものである」との理由で、『A』『B』の都立高校等での選定を実質禁じる議決を、1秒も審議せず強行し、全校長に通知。『A』に加え『B』も選定する都立高ゼロ、という異常な事態が続いてしまった
 (実教出版が自主的に『一部の自治体で…』を削除するなどした、17年度以降使用の『A』を都教委は今夏、選定妨害解除にしたが、『B』の選定妨害は未だに継続。【注】参照)。
 「文科省の検定に合格した教科書を、教育委員会が勝手に選定妨害するのは、いわば二重の検定となり、違憲・違法だ」。こういう思いを持つ父母や現・元教職員を含む市民たちが「都教委の行為は違法・不当だ」と集団提訴する(原告共同代表は高たかしま嶋伸のぶよし欣琉球大名誉教授と佐藤昭夫早稲田大名誉教授)に至るまで、選定(採択)妨害に対する怒りは拡大。
 この訴訟の事務局を担当する増田さんが「実質審議したウラ会議はないか」と情報開示請求すると、都教委は15年1月23日付で、「13年6月13日に定例教育委員会終了後、〝教育委員懇談〟と称する秘密会を開催していた事実」を伝えてはきたが、配布資料は全文非開示だった。これに対し増田さんは15年2月20日、異議申し立て。情報公開審査会に係っていた。
 都教委は、1年以上放置した挙げ句、今年2月29日、突然、「非開示決定処分の取消し」を行う、と連絡してきたが、増田さんが受け取りに行くと、肝心の部分は墨塗り(いわゆる〝一部開示〟)だった。
 増田さんは3月9日、この〝海苔弁〟文書を送り返し、「全文非開示決定処分は誤っていたことを認め、謝罪する文書」「何の説明もなく『全文非開示を(一部)取消し』た経緯・理由の説明を明記した文書」の送付を求めたが、都教委は誤りを認めず謝罪せず、経緯・理由も回答しなかった。
 この後、前記・実教出版による自主的な『A』の記述削除の判明や、都知事選を経て、増田さんは9月16日、〝海苔弁〟文書を再度添付し、墨塗りなき文書を開示請求。すると都教委は10月7日、突如〝自主的〟に全文開示してきた。
 全文開示により明らかになった事実は、以下の2点。

 ① 「これまでの経緯」という欄で、12年9月13日開催の〝教育委員懇談〟(秘密会)において、都教委指導部が「これまでの経緯と今後の対応について」という議題を出していた事実が露呈。
 →前記・増渕氏らが電話作戦で選定ゼロにした12年時点で既に、翌13年に「全校での選定禁止議決」する〝対応策〟まで、用意周到に話し合っていた可能性がある。
 ② 「『相容れない記述』である理由」という欄に、「(『A』の)該当の記述は、生徒に対し、教員は国旗・国歌の指導を強制されているという誤った認識をもたせるのものである」と明記。
 →「10・23通達以降の〝君が代〟施策を、『強制だ』と高校生が認識する」のを、都教委が極度に恐れている実態が浮き彫りになった。
 10月16日、増田さんに「今回、都教委が全文開示に踏み切った理由をどう考えるか」と取材すると、
 「第1には『A』が該当部分を削除し、(現在、文科省が検定中で、17年3月に検定結果が公表される)『B』も削除する内容になっているだろうから。第2には情報公開を謳うたう小池知事の顔色を伺った可能性がある。もし情報公開審査会から『全面開示せよ』と勧告が出ることにより、全文開示に追い込まれる事態になったら、都教委の面子は丸まるつぶ潰れとなるから」と語った。
 ところで、13年6月の選定禁止議決時、その文案を読み上げた指導部長で、都教委ナンバー3の教育監を経て今年4月、東京学芸大教授になった金子一彦氏は、同大が8月20日開催した教職大学院フォーラム「実践からみた学校の組織づくりとミドルリーダーの育成~次世代型ミドルリーダーの育成と学校組織の機能強化に向けて」の分科会で、学校組織のトップダウンが話題になった時、「教委は服務(注、この用語は校長の職務命令に教職員が服従する等、地方公務員法上の規定を指すと思われる)では譲れない。盲目でやって頂く」と明言した。「都教委は〝君が代〟問題では強制をやっているんだ」と自ら認めるような発言だ。
 【注】今年3月18日、文科省が公表した検定結果により、実教出版は検定前から自主的に、側注の当該記述を削除する一方で、本文には「教育現場に日の丸掲揚、君が代斉唱を義務づけることに対する反対運動もおきた」と加筆した、という事実が判明した。
『マスコミ市民』2016年11月号

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