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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

東京都の「教育改革」の破綻ぶり(中)

2010年06月10日 | 暴走する都教委
 ◎ 東京都の「教育改革」の破綻ぶり(中)
若杉倫(都立高教員)

 2,役立たずのお仕着せ「改革」

 実績を上げるため、目先を変えただけの「やったふり改革」を押しつけてくる。思いつきばかりだから効果がないどころか混乱ばかり招いてしまう。ワンパターンのお仕着せで、せっかくうまく回っていた現場が無意味にグチャグチャにされている。単に教員の主体的・自主的な学校運営を目の敵にしいるだけではないのか。
 (1)授業時数は増やせばよいものか。
 a,「2学期制」にすれば、定期考査が1回分減るので授業時数は増え学力が向上するはずだった。
 b,「世田谷授業時間(52分)」とは、区立中学の休み時間を2分削ることで年間39時間授業時数を増やそうとする目論見であった。
 c,都立高の期末考査後の「試験休み」に全部授業を組み入れる。
 d,「長期休業の弾力的運用」。要するに夏休みを早く切り上げて、8月下旬から2学期の授業を始める。
 e,「土曜授業」。週5日で収まりきらないカリキュラムを週6日拡散して授業時数も多く取る。
 等々。さて、これらの「改革」はどれだけ効果を上げたのか。
 a,「2学期制」は、本校の例をあげるなら4年間やって「3学期制」に戻してしまった。なぜなら試験前しか勉強しない本校生徒とっては年間の勉強時間が1週間減ったようなもので、学力低下が明らかになったからだ。
 b,世田谷区の「休み時間2分削って授業する」は、1~2年でほとんどの区立中が撤退した。
 c,「定期考査後の授業」は、生徒・教員双方に「消化試合」のような学習意欲の低下が否めず、教員が成績処理や個別指導の時間が取れずきめ細かい仕事の放棄に追い込まれてしまうという弊害もはっきりしてきて、都教委も来年から半減することを認めた。
 d,e,は、今も一部進学校で続いているが、際立った効果が確認できたわけでもなく、生徒のためと言うより教員の労働条件の締め上げにしかなっていない。
 「数値目標」を一人歩きさせずに、「Plan do See」でしっかり検証してみてはどうだろう。どれも失敗だと分かるはずだ。「実験台」にされる生徒たちこそたまったものではない。
 (2)「新しいタイプの高校」と「入試方法の改善」は、実は「改悪」だった
 種類が多すぎて現場の教員にも分からなくなっているのが、2000年から10年がかりで119校を50校に統廃合してできた「新しいタイプの高校」だ。ところが莫大な税金を投入したのに、都民のニーズがからかけ離れているのは入試倍率の推移を見れば明らかだ。今年1月の中学校長会進路対策委員会による志望調査にでも、従来の普通科平均倍率が1.38倍なのに、「新しいタイプ」は1.29倍。出来たばかりで定員割れもある不人気ぶり。この傾向は当初から一貫して変わらない。来年の臨時増学級44クラスは、全部人気の「普通科」に割り当てられていることも、統廃合がいかに無責任であったかを示している。
 「入試方法の改善」と称して2003年から4年間全校強制された「自己PRカード」「観点別評価の導入」は、労多くして功少なしとの現場の声で、今ではほとんどの高校で元に戻している。それなのに都は「改悪」だったことを認めたことがない。
 (3)進学実績は一部に片寄っただけ
 進学重点校の進路実績が向上したことをさも「成果」のように誇るが、学区撤廃でデキのいい生徒を広く集められるようになっただけのことで、都立高全体が向上しているわけではない。都教委はHPで進学重点校だけでなく、全都立の進学実績の推移を公表してみてはどうか。1960年代まで東大に100人受かった都立の再現を夢見ているとしたら時代錯誤の誇大妄想も甚だしい。それに当時はちゃんと学区だってあったのだ。
 「部活動ばかりしていないでもっと勉強しろ」と壇上から生徒を叱咤して反発を買った日比谷の校長のようなタイプの管理職ばかりが配置され、一般教員は異動したがっていない。
 (4)東京都学校設定必修科目「奉仕」と新たな日本史必修(「江戸から東京へ」)
 現場が必要に感じていないものを、上から押しつけても嫌々「こなすだけ」の醒めた時間になる。本校学年主任の「奉仕をやる度に生徒が悪くなっていく」という感想を紹介するに留めておく。
 受験には奉仕1単位必修だけでもカリキュラム編成上の大きな足かせとなっているのに、この上「江戸と東京」2単位押しつけられてどう進学実績上げろというのか。「本気かよ?」が現場の声である。特定のイデオロギーでカリキュラムをいじるのはやめてほしい。
 (5)役立たずの一人1台パソコン
 今年1月から、都立校もパソコン一人1台体制が整い、やっと人並みの仕事が出来るようになるかと思いきや・・・これが使い物にならないばかりか仕事の妨げになる代物だった。
 "TAIMS"と称する都教委サーパーの端末なのだが、インターネットにはきついフィルターがかかっており、まともに閲覧・検索ができない。教材用に画像映像をダウンロードできないし、DVD加工もできない。しかも外部記憶媒体は使用禁止。USBをつないだ瞬間サーバー「警告」が送られてくる。マイパソコンは持ち込み禁止。要は、都教委・校長の指令を一方的に伝達するだけの「受信専用端末」である。これこそ今の都教委の創意工夫や自主性を認めない画一的上意下達中央集権体質をそっくり体現した骨董品的戯画である。
 (続)

 『科学的社会主義』(2010年4月号)

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