《Peace Philosophy Centreから》
◆ 朝日新聞への要望書:「第3者委員会」は「慰安婦」問題専門家不在
/女性は1人だけ/問題のある御用学者がいるので再考を!
朝日新聞社/代表取締役社長 木村伊量様/常務取締役(大阪本社代表)持田周三様/取締役(編集担当)西村陽一様/取締役(西部本社代表)町田智子様
前略
去る8月5、6日、貴紙は、吉田清治の虚偽証言に基づいて貴紙が1982年9月以来たびたび記事を発表したことに対して訂正記事を発表し、最終的に謝罪を行われましたが、10月2日には、今度は「慰安婦」報道を検証する第3者委員会なるものを設置したことを発表されました。この第3者委員会の委員7名の顔ぶれを見ますと、委員会が客観的かつ公明正大に「慰安婦」報道を検証することができるとは私たちにはとうてい思えません。したがって、私たちは朝日新聞の運営にあたり最終的責任を負っておられる役員であられる皆様に、第3者委員会の委員選考と今後の「慰安婦」報道のあり方に関して真摯に再考されるよう、ここに強く要望いたします。
貴紙が吉田清治虚偽証言に関する訂正記事を発表するや、あたかも河野談話は吉田清治証言にのみ依拠して作成されたかのような発言が、安倍晋三首相をはじめ安倍支持派の政治家たち、ならびに諸右翼団体から次々に出され、「強制」はデッチアゲであるという非難の声があがりました。
しかし、あらためて言うまでもなく、河野談話には吉田清治証言は一切使われていません。当時の官房副長官であった石原信雄氏も、最近のテレビ・インタヴューで、吉田証言には虚偽の疑いがあったため河野談話作成のための資料としては使わなかったことをはっきりと認めています。
一方、当時、同じように吉田証言を信じて報道していた産経、読売、毎日新聞や共同通信はほとんど非難を受けず、貴紙だけが攻撃のマトになったことに私たちは深い違和感を感ぜずにはいられません。貴紙がこの件で「訂正記事」とそれに続く「謝罪記事」を出されたことは、誰の目にも極めて唐突に映り、背後で読者たちが知りえない政治的操作が行われた結果であろうという疑いを持っている市民が多くいることは、皆様もすでによく承知しておられるものと思います。
これは、「河野談話検証」と連結した「河野談話空洞化作戦」の一つであり、その最終目的は、河野談話を正式に無効とし、新しく「安倍談話」なるものを発表し、それを日本政府の公式見解としてしまうことにあるものと私たちは深く憂慮しております。
そして今度は、「慰安婦」報道検証のための7名の委員からなる第3者委員会を貴紙は設置されました。しかし、この7名の中には、「慰安婦」問題に関して長年研究を続けてきた専門家は1名も含まれていません。
さらに、「慰安婦」問題は「女性の人権侵害」という重大な問題を含むものであるにもかかわらず、委員の中には女性は1名しか含まれていません。
本来ならば、この類いの委員会には、「慰安婦」問題に関して豊富な知識を持つ歴史家、ならびに、女性人権問題、とりわけ女性の戦争被害者の人権問題に詳しい(例えば国際人道法専門家の)女性が委員として数名加わっているのが当然です。
ご承知のように、国連の諸人権関連委員会はたびたびこの問題で日本政府に対して厳しい勧告を出してきました。そうした国連の女性人権専門家の目から見ても、今回の貴紙の委員選考は、ジェンダー・バランスという点であまりにも世界の常識を欠いており、女性差別的選考と非難されるでありましょう。
「女性が活躍する社会を」というかけ声を首相があげている国の主要新聞社の委員会が、しかも女性の人権問題にかかわる委員会がこのような委員構成では、委員会の検証結果がどのようなものであろうと、国際的信用を勝ち取ることはおそらく無理でありましょう。
さらに、私たちがとりわけ憂慮するのは、委員の中に北岡伸一氏が含まれていることです。ご承知のように、北岡氏は安倍晋三氏ならびにその他の自民党保守有力政治家とひじょうに親しい関係にあり、これまで様々な日本政府の調査委員会に携わってきました。しかし、そのような公的委員会の委員としての彼のこれまでの言動を検証してみると、彼が真に学問的客観性に基づいて意見を述べているとは到底思えません。
例えば、2009年9月、一連の日米核密約について外務省調査班は「有識者委員会」なるものを立ち上げて調査を行ったさいには、北岡氏は座長を務めました。2010年3月9日、この有識者委員会は「報告書」を発表。この報告書は、明文化された日米密約文書は存在しないとしながらも、日本の政府高官が「核持ち込み」の定義が日米間で不一致であることを知りながらも米国に「核持ち込み」の定義の変更を要求していないことから、「核持ち込み」について「広義の密約」があったと結論づけました。しかし「広義の密約」は「必ずしも密約とは言えない」と、ゴマカシの論理を使って、責任をうやむやにしてしまいました。
さらに、北岡氏は、「集団的自衛権行使と憲法の関係を研究する」と称する安倍首相の私的諮問機関である安保法制懇(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)の座長代理も務めましたが、彼は、「当然であるが、懇談会は集団的自衛権の行使を主張しているのでなく、いざという時のために行使できるようにしておくべきだと主張したのだ」と、ここでもペテン師まがいの発言をしています。
このようなゴマカシ発言を公然と行う人物を、私たちは、学者としてのみならず一個の人間としてすら信用することは決してできません。よって、私たちは、貴紙が当該委員会から北岡氏を外されるよう強く要望いたします。
このような委員会のメンバー構成を見ますと、安倍政権に媚を呈するために朝日新聞はこの第3者委員会を立ち上げたのではないかという疑念を私たちは持たざるをえません。もしそうであるとしたら、これは明らかに朝日新聞の自殺行為であることはもちろん、日本の報道界の自殺行為ともよぶべき由々しい事態です。それは同時に、メディアの市民に対する背信行為と厳しく非難されるべき行為でもあります。いずれにしても、今ひじょうに恐ろしい現象が日本を席巻しつつあることは間違いありません。
「慰安婦」すなわち日本軍性奴隷問題での自分たちの長年にわたる「虚言」と「ごまかし」を隠蔽しつつ、自分たちに異を唱える人間あるいは特定のメディア組織が非意図的におかした間違いを「虚言」、「ごまかし」と激しく徹底的に非難攻撃し、潰してしまうことで、自分たちの「虚言」があたかも「真実」であるかのように国民に思い込ませる、危険きわまりない大衆心理操作が大々的に行われています。
しかも多くのメディアと知識人が、その卑劣で不当な大衆心理操作に自ら加担することで権力に媚びていることを恥とも思わない状況。これは第2次世界大戦中に日本の軍事政権やナチス政権が行ったメディア支配と大衆心理操作を彷彿させるものです。
今、日本がこのような危機的な社会状況にあるからこそ、貴紙がいかなる政治的抑圧に対しても毅然とした態度をとり続け、市民に真実を伝え、新聞報道機関としての重大な社会的責任を全うされんことを強く要望いたします。それが、日本の報道機関としての貴紙が、国際的信用を獲得する最も堅実な方法であるとも私たちは確信します。
貴紙のみならず、かつて日本の新聞社は、こぞって軍事ファシズム政権の政治圧力に伏して戦争加担という大きな過ちを犯しました。貴紙が再びこのような大きな過ちを繰返されることがないことを祈ってやみません。
なお、この要望書は、できるだけ多くの市民にも読んでいただき考えていただくために、公開要望書とさせていただくことをご了解下さい。
2014年10月9日
日本軍「慰安婦」問題解決ひろしまネットワーク・共同代表
足立修一、高雄きくえ、田中利幸、土井桂子
通信連絡先
730-0036
広島市中区袋町6-36 広島市まちづくり市民交流プラザ気付mb132
『Peace Philosophy Centre』(2014年10月9日)
http://peacephilosophy.blogspot.jp/2014/10/blog-post_9.html
◆ 朝日新聞への要望書:「第3者委員会」は「慰安婦」問題専門家不在
/女性は1人だけ/問題のある御用学者がいるので再考を!
朝日新聞社/代表取締役社長 木村伊量様/常務取締役(大阪本社代表)持田周三様/取締役(編集担当)西村陽一様/取締役(西部本社代表)町田智子様
前略
去る8月5、6日、貴紙は、吉田清治の虚偽証言に基づいて貴紙が1982年9月以来たびたび記事を発表したことに対して訂正記事を発表し、最終的に謝罪を行われましたが、10月2日には、今度は「慰安婦」報道を検証する第3者委員会なるものを設置したことを発表されました。この第3者委員会の委員7名の顔ぶれを見ますと、委員会が客観的かつ公明正大に「慰安婦」報道を検証することができるとは私たちにはとうてい思えません。したがって、私たちは朝日新聞の運営にあたり最終的責任を負っておられる役員であられる皆様に、第3者委員会の委員選考と今後の「慰安婦」報道のあり方に関して真摯に再考されるよう、ここに強く要望いたします。
貴紙が吉田清治虚偽証言に関する訂正記事を発表するや、あたかも河野談話は吉田清治証言にのみ依拠して作成されたかのような発言が、安倍晋三首相をはじめ安倍支持派の政治家たち、ならびに諸右翼団体から次々に出され、「強制」はデッチアゲであるという非難の声があがりました。
しかし、あらためて言うまでもなく、河野談話には吉田清治証言は一切使われていません。当時の官房副長官であった石原信雄氏も、最近のテレビ・インタヴューで、吉田証言には虚偽の疑いがあったため河野談話作成のための資料としては使わなかったことをはっきりと認めています。
一方、当時、同じように吉田証言を信じて報道していた産経、読売、毎日新聞や共同通信はほとんど非難を受けず、貴紙だけが攻撃のマトになったことに私たちは深い違和感を感ぜずにはいられません。貴紙がこの件で「訂正記事」とそれに続く「謝罪記事」を出されたことは、誰の目にも極めて唐突に映り、背後で読者たちが知りえない政治的操作が行われた結果であろうという疑いを持っている市民が多くいることは、皆様もすでによく承知しておられるものと思います。
これは、「河野談話検証」と連結した「河野談話空洞化作戦」の一つであり、その最終目的は、河野談話を正式に無効とし、新しく「安倍談話」なるものを発表し、それを日本政府の公式見解としてしまうことにあるものと私たちは深く憂慮しております。
そして今度は、「慰安婦」報道検証のための7名の委員からなる第3者委員会を貴紙は設置されました。しかし、この7名の中には、「慰安婦」問題に関して長年研究を続けてきた専門家は1名も含まれていません。
さらに、「慰安婦」問題は「女性の人権侵害」という重大な問題を含むものであるにもかかわらず、委員の中には女性は1名しか含まれていません。
本来ならば、この類いの委員会には、「慰安婦」問題に関して豊富な知識を持つ歴史家、ならびに、女性人権問題、とりわけ女性の戦争被害者の人権問題に詳しい(例えば国際人道法専門家の)女性が委員として数名加わっているのが当然です。
ご承知のように、国連の諸人権関連委員会はたびたびこの問題で日本政府に対して厳しい勧告を出してきました。そうした国連の女性人権専門家の目から見ても、今回の貴紙の委員選考は、ジェンダー・バランスという点であまりにも世界の常識を欠いており、女性差別的選考と非難されるでありましょう。
「女性が活躍する社会を」というかけ声を首相があげている国の主要新聞社の委員会が、しかも女性の人権問題にかかわる委員会がこのような委員構成では、委員会の検証結果がどのようなものであろうと、国際的信用を勝ち取ることはおそらく無理でありましょう。
さらに、私たちがとりわけ憂慮するのは、委員の中に北岡伸一氏が含まれていることです。ご承知のように、北岡氏は安倍晋三氏ならびにその他の自民党保守有力政治家とひじょうに親しい関係にあり、これまで様々な日本政府の調査委員会に携わってきました。しかし、そのような公的委員会の委員としての彼のこれまでの言動を検証してみると、彼が真に学問的客観性に基づいて意見を述べているとは到底思えません。
例えば、2009年9月、一連の日米核密約について外務省調査班は「有識者委員会」なるものを立ち上げて調査を行ったさいには、北岡氏は座長を務めました。2010年3月9日、この有識者委員会は「報告書」を発表。この報告書は、明文化された日米密約文書は存在しないとしながらも、日本の政府高官が「核持ち込み」の定義が日米間で不一致であることを知りながらも米国に「核持ち込み」の定義の変更を要求していないことから、「核持ち込み」について「広義の密約」があったと結論づけました。しかし「広義の密約」は「必ずしも密約とは言えない」と、ゴマカシの論理を使って、責任をうやむやにしてしまいました。
さらに、北岡氏は、「集団的自衛権行使と憲法の関係を研究する」と称する安倍首相の私的諮問機関である安保法制懇(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)の座長代理も務めましたが、彼は、「当然であるが、懇談会は集団的自衛権の行使を主張しているのでなく、いざという時のために行使できるようにしておくべきだと主張したのだ」と、ここでもペテン師まがいの発言をしています。
このようなゴマカシ発言を公然と行う人物を、私たちは、学者としてのみならず一個の人間としてすら信用することは決してできません。よって、私たちは、貴紙が当該委員会から北岡氏を外されるよう強く要望いたします。
このような委員会のメンバー構成を見ますと、安倍政権に媚を呈するために朝日新聞はこの第3者委員会を立ち上げたのではないかという疑念を私たちは持たざるをえません。もしそうであるとしたら、これは明らかに朝日新聞の自殺行為であることはもちろん、日本の報道界の自殺行為ともよぶべき由々しい事態です。それは同時に、メディアの市民に対する背信行為と厳しく非難されるべき行為でもあります。いずれにしても、今ひじょうに恐ろしい現象が日本を席巻しつつあることは間違いありません。
「慰安婦」すなわち日本軍性奴隷問題での自分たちの長年にわたる「虚言」と「ごまかし」を隠蔽しつつ、自分たちに異を唱える人間あるいは特定のメディア組織が非意図的におかした間違いを「虚言」、「ごまかし」と激しく徹底的に非難攻撃し、潰してしまうことで、自分たちの「虚言」があたかも「真実」であるかのように国民に思い込ませる、危険きわまりない大衆心理操作が大々的に行われています。
しかも多くのメディアと知識人が、その卑劣で不当な大衆心理操作に自ら加担することで権力に媚びていることを恥とも思わない状況。これは第2次世界大戦中に日本の軍事政権やナチス政権が行ったメディア支配と大衆心理操作を彷彿させるものです。
今、日本がこのような危機的な社会状況にあるからこそ、貴紙がいかなる政治的抑圧に対しても毅然とした態度をとり続け、市民に真実を伝え、新聞報道機関としての重大な社会的責任を全うされんことを強く要望いたします。それが、日本の報道機関としての貴紙が、国際的信用を獲得する最も堅実な方法であるとも私たちは確信します。
貴紙のみならず、かつて日本の新聞社は、こぞって軍事ファシズム政権の政治圧力に伏して戦争加担という大きな過ちを犯しました。貴紙が再びこのような大きな過ちを繰返されることがないことを祈ってやみません。
なお、この要望書は、できるだけ多くの市民にも読んでいただき考えていただくために、公開要望書とさせていただくことをご了解下さい。
2014年10月9日
日本軍「慰安婦」問題解決ひろしまネットワーク・共同代表
足立修一、高雄きくえ、田中利幸、土井桂子
通信連絡先
730-0036
広島市中区袋町6-36 広島市まちづくり市民交流プラザ気付mb132
『Peace Philosophy Centre』(2014年10月9日)
http://peacephilosophy.blogspot.jp/2014/10/blog-post_9.html
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます