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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

大阪はなぜあえて特別区を目指すのか?東京都の特別区長の疑問

2012年10月16日 | 平和憲法
 ■ 特別区長が見る「都」法案
   「自治権拡充運動に逆行」


 橋下徹大阪市長の「大阪都構想」を後押しするための大都市地域特別区設置法が8月末、参議院本会議で可決・成立した。東京都以外の道府県でも、人口200万人以上などの要件を満たせば特別区を設置できるようにする内容だが、実際の移行には事務分担や区割、財源などの難題が山積している。長年、自治権拡充運動に取り組み、特別区の実務を全国で最もよく知る特別区長たちには、大阪都構想はどう映ったのか
 ■ 「都制理解していない」 「財政調整できるのか」
 「都区制度はパーフェクトではない」。多くの区長が同じ感想を持ったかもしれない。都区で事務分担の議論が続き、毎年、財政調整の交渉をする中で、なぜあえて特別区を目指すのか、不思議で仕方がないだろう。
 ■ 財政の裏付け
 山崎孝明江東区長は12日の記者会見で、「行政の無駄が生じると思わざるを得ない」と指摘した。公選の区長、区議会を新たに作り、それに対応する区庁舎も必要になるからだ。「東京都制度をどこまで理解しているのか、首をかしげるところだ」と話す。
 財源の中でも、制度の根幹とも言うべき都区財政調整制度をどうするかは不透明だ。都区財調は市町村税である固定資産税など3税を都が徴収し、その一部を区に配分している。
 田中大輔中野区長は13日の記者会見で、「急ごしらえで枠組みだけ作った(印象)。財調の仕組みや仕事の分担はこれから考えてということになっている」。その上て、「政令指定都市でも財政力指数が1に満たない所が多い。地方交付税をもらいながら、どうやって財政調整を行えるのか」と疑問を呈す。
 武井雅昭港区長も「財政的な基盤を整備することは大変重要」という認識。5日の記者会見で、「いろいろな自治の形の選択肢が増えることはいいこと」としつつ、財政的な裏付けの重要性を強調した。
 都区財調で約630億円の交付を受けている葛飾区。青木克徳区長は12日の記者会見で、「財源をどうするか。仕事の配分と財源は課題」という認識を示し、「一定のエリアの中でどういう役割分担をしたら区民・都民によい環境ができるのか、よく議論して進めるべき」と話した。
 ■ 不安定な制度
 自治権拡充運動に取り租んできた特別区総体としては、「逆行している」という思いも強い。
 濱野健品川区長は13日の記者会見で、「時の社会状況によって、特別区制度は変わりやすい。自治権が狭められる可能性もある」と語った。東京都制は戦時中、本土決戦を想定して作られたから「普通の時代にフィットするかは疑問」というのだ。「都市部こそ、基礎自治体には十全な権限を付与すべきだ」
 花川與惣太北区長は11日の区議会本会議で「特別区が長きにわたり行ってきた自治権拡充運動や基礎自治体優先の原則に逆行するのではという懸念も抱いている」と答弁した。
 田中中野区長も「今まで市レベルで政策決定できたものが、小さい単位の区になって、いい部分もあるかも知れないが、府県になることで身近だった自治が遠くになることが出てくる」と指摘。「これからの足取りは長いものにならざるを得ないのでは」と話す。
 青木葛飾区長は清掃移管を例に、「ごみ収集でうまく行っているケースもある」とした上で、都が消防を一体的に担う点に触れ、「大都市特有の状況を踏まえながらうまく活用すれば、街にとっては発展の要素になるのでは」と話した。
 ■ 特別区が全国に
 どのような特別区ができるかは未知数だが、大阪府市の進め方によっては、東京都区制度の「コピー」になる可能性も。
 山崎昇墨田区長は7日の記者会見で、「市民と行政の距離が短くなる」という観点で、一定の理解を示した。ただ、「これまで我々が築き上げてきた都区制度に、悪い影響が出ないか、先行きが心配」とも。特別区を持つ自治体が全国に波及した時に、国が揺さぶりをかけて来ないとも限らないからだ。
 武井港区長は、「特別区を市にする規定はない。一般的な自治制度となるのであれば、一方通行ではなくて、特別区が一般市になる規定も併せて整備することが望ましいのでは」と語る。
 世田谷区の保坂展人区長は7日、「地方分権の流れの中で、法案が何を作ろうとしているのか見えない」と言う。「日本は変わっていかなければいけない。具体の議論に入っていくのを見ながら意見を言っていきたい」。
 足立区の近藤やよい区長は12日、都区のあり方の議論に結論が出ない中、「向こうが進めている考えにどうこう言える立場ではない」と話した。
 【MEMO】 大都市地域特別区設置法
 人口200万人以上の政令市と隣接自治体に特別区の設置を認める「手続法」。要件を満たすのは、札幌、さいたま、千葉、横浜・川崎、名古屋、京都、大阪・堺、神戸の8地域。
 特別区への移行には、法定協議会で特別区の区割や事務分担などを協議した上で、住民投票で過半数の賛成が必要になる。特別区の区長や区議会議員は公選になる。
『都政新報』(2012/9/18)

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