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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

最初の国家規模でのベイシック・インカムの導入実験

2017年02月25日 | 格差社会
 ◆ フィンランド 基本所得制度を試験的に導入 (労働情報 アジア@世界)
 フィンランドでは1月1日から、25歳以上58歳未満の失業者から無作為に抽出された2千人を対象に、ベーシックインカム(基本所得・BI)制度が試験的に導入されている。
 対象者は従来の失業手当の代わりに月560ユーロ(約6万8千円)をBIとして無条件に受け取る。
 試験期間は2年間(18年末まで)で、BIはこの期間中の就労の有無や求職活動に関わりなく支給される
 KELA(フィンランドの社会保障機関)によると、この実験は失業手当の煩雑な手続きを簡素化し、貧困と失業(現在は8・1%)を減らすことを目的としている。
 英国「ガーディアン」紙1月3日付は次のように報じている。
 「(この制度は)1797年にトーマス・ペインがすべての個人に対する『基本資本給付』を提唱して以来、経済学者や政治家の間で流布されていた構想の最初の国家規模での実験である」。
 同紙によると、人工知能・ロボットなどの技術の普及によって将来における雇用の不安が広がる中で、ヨーロッパ各国でBIをめぐる議論が活発化しており、フィンランドでは左派は貧困削減の観点から、右派は社会福祉制度の合理化の観点からこの実験に注目している。
 オランダのユトレヒトなど5つの都市、カナダのオンタリオ、英国のスコットランドのいくつかの都市でも17年度中にBIの試験的導入が計画されている。
 ユトレヒトの実験では、給付対象を、
  ①求職活動を条件に給付、
  ②無条件で支給、
  ③地域のボランティア活動に参加した場合に加算、
  ④加算するがボランティア活動に参加しなかった場合は加算分を返済
 の4つのグループに分けて、それぞれの効果を比較する。

 英国のウォーウィック大学のロバート・スキデルスキー教授(政治経済学)は次のように述べている。
 「信頼できる予測によると、西側世界では今後20年以内に既存の全雇用の4分の1ないし3分の1をオートメーション化することが技術的に可能である。生産性向上に連動して一律基本所得(ユニバーサル・ベーシック・インカム、UBI)を引き上げていくことによって、オートメーション化の成果が少数の人だけではなく多くの人々に共有されるようにできるだろう」
 経済学者のハワード・リードスチュワート・ランズリーはUBIが安定的な所得を保証するだけでなく、「各個人の金銭的な独立性と、仕事と余暇、教育、ケアの選択の自由を拡大し、無報酬の労働の巨大な価値を認識させる」と指摘している。
 英国でBI制度導入のためのネットワークを設立したガイ・スタンディング教授は、「ガーディアン」紙1月12日付の投稿で次のように述べている。
 「20世紀の所得分配システムは回復不可能なほど崩壊している。グローバル化、技術革新、フレキシブル雇用への移行はますます多くの所得を金融資産やいわゆる知的財産を保有する不労所得者へ集中させ、労働者の実質賃金は停滞している。プレカリアートの所得は低下し、不安定さを増している。慢性的な不安定さは最低賃金法や税控除や収入調査に基づく給付によっては克服されない」
 「(これらの試験的導入では)BIを支給した時の人々の行動の特定の側面(訳者注・労働意欲がなくなるかどうか等)についてのみを評価できるが、(UBI)の提唱者たちはより根本的な側面、すなわち社会的公正、自由、経済的安定を論拠としている。短期間で、比較的少数の人々を対象とした試験ではこれらの側面については評価できないだろう。……しかし、結果が報告されるようになれば、UBIが実現可能であり、指摘されてきた否定的な影響は起こらないことが証明されるだろう」
 (喜多幡佳秀 APWSL日本)

『労働情報 952号』(2017.2.1)

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