☆ 回帰の逆流止めなければ (『週刊新社会』)
ドイツが昨年4月15日に原発を全停止して1年になる。一方、世界は脱炭素を口実に原発回帰の流れ。岸田政権も、福島原発事故による緊急事態宣言下にありながら平然と原発推進路線を暴走する。
☆ 独の全廃見習おう
福島第一原発の事故を見てドイツは原発廃止を決め、最後に残った3基を昨年4月停止した。
メルケル首相(当時)が11年に全17基の運転を22年度末に停止すると脱原発を宣言して12年目だった。
廃炉作業を進めるドイツだが、日本と段違いに地震の危険性が低くても、いまだ中間貯蔵施設は16カ所、最終処分場はゼロだ。
ドイツではウクライナ戦争で燃料の高騰がありながらも脱原発は揺らいでいない。原子力法は原発の新規建設を認めていない。2035年までに再生可能エネルギーのみによる電力供給を目指す。電気事業者は再生可能エネルギーに投資する経営戦略に転換している。
地震国のイタリアは、かつて4原発が稼働していたが、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故後の1987年、国民投票で脱原発を決めた。
その後、政府は原発再稼働を目指したが、福島事故の後、再び国民投票で否決された。4原発すべてが廃炉作業中で、2042年の廃炉完了を目指している。政府の原発回帰を国民が拒否する構造となっている。
☆ 脱炭素に便乗して
一方、気温上昇を産業革命以前に比べ1・5℃以内に抑制しようとの地球温暖化対策を口実に、原発を3倍化しようとの動きが表面化している。
昨年12月、アラブ首長国のドバイで開かれた国連気候変動会議(COP28)にあわせて米国が「原発3倍化宣言」を提案し、日本や韓国、フランス、カナダなど22力国が賛同した。
現在運転中や建設中、計画中から廃炉見通しを除く約450GW(ギガワット)を2050年に約1200GWにしようというものだ。
このほかにも宣言の賛同国となっていないが、原発大国の中国やロシア、インドの動きも要注意だ。
☆ 原発反対の声こそ
原発推進の岸田政権は、昨年の通常国会で「GX脱炭素電源法」を強行した。地球温暖化防止に便乗した原発産業への利益供与だ。そして、業界の利益の一部は自民党の政治資金・裏金となっている。
能登半島地震でも志賀原発が大きな被害を受け、道路寸断や空港、港湾の被害で避難できない現実が露呈した。
原発全廃こそ命と暮らし、人権を守る道だ。
『週刊新社会』(2024年4月10日)
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