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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

尖閣諸島をめぐる日中米の関係

2013年03月15日 | 平和憲法
 『子どもと教科書全国ネット21ニュース』から
 ◆ 東アジアの状況と日本の未来~中国の大国化とそれに対抗する米国の戦略
孫崎 享 元外務省国際情報局局長

 ◆ なぜいま、尖閣諸島の問題なのか
 1971年、沖縄を米国が日本に戻すときに、米国は日本と中国のどちら側にも付かないということを言いました。
 ごく最近、中国の陳健大使が、尖閣諸島は米国によって埋め込まれた時限爆弾であると書いています。そしてこの時限爆弾が今爆発しそうになっているということを言っています。
 最近、ヘリテージ財団から1つの研究論文が発表されています。
 「今、日本はたいへんな右傾化にあって、ナショナリズムが勃興している。そしておもしろいことに、このナショナリズムは中国にだけ向いている。これを利用して日米関係を強化する方向に行ったらいい。具体的に何をすべきか。1つは、日本に軍備力の予算を増やすこと。そして普天間の辺野古移転を促進させること。そして集団的自衛権を日本に容認させること」このように書いています。
 私は、この尖閣諸島問題は単に領土問題だけではないと思っています。
 中国が軍事力を付けてきていますが、この中国の軍事力というのは他国を占領したりするものではないと思っています。しかし、米国はこれにどう対応するか考えています。
 そのなかで米国の財政を見れば、国防予算は増やせません。
 どのように対中軍事力を作っていくのかというと、日本に軍事力を付けさせ日本と米国の戦略を一体化させ、ある意味で日本を傭兵化していくことだろうと思います。
 いまグアムで自衛隊とアメリカの訓練が行われている。これの重要性に着目している人はほとんどいない。
 しかし、グレグソン元国防次官補が、これは将来米国の作戦、戦略の中に日本が入っていく重大な第一歩であると言っています。いま日本の選択は、米国の戦略の中にいかに組み込まれて進んでいくかであります。
 ◆ 国民の感情を煽るために行なわれている
 集団的自衛権という言葉が作られています。この言葉は、国連で認められている権利だからと言われます。国連だれかに攻撃されたときにどのように対応するか、ということで集団的自衛権が出てきます。
 いま米国がやろうとしているのは、サダム・フセインとかイランとかアフガニスタンであるとか、こちらから相手のところに出かけていって体制を変革しようとする流れです。国連でいう集団的自衛権と安倍首相が言うそれはまったく違うのです。
 その中で尖閣諸島がまさに国民の感情を煽るために行なわれているということです。最先端は2010年の衝突事件です。
 多くの人は、これを仕掛けたのは中国だと思っています。
 私は中国ではなく、仕掛けたのは日本だと思っています。こう言うとびっくりされると思います。
 実は尖閣諸島の漁業問題にどう対応するかには日中漁業協定というのがあります。
 日中漁業協定とは、相手の国の漁船に対してこちらの公権力を使わないということなのです。公権力を使えば当然相手の船は防衛しようとします。これは日中だけでなく、中国と韓国の間でもそうです。
 以前、韓国で何人か殺された事件が起こりました。これを避ける一番いい方法は、現場での衝突をどう抑えるかより、そのような事態を繰り返して起こさないことが重要です。
 ということで、日中の漁業協定はお互いに公権力を使わない。そして、もし違反した船があれば違反を止めさせ、帰ってもらうということになっています。
 しかし、2010年9月と10月、日本は国内法で対応するとしました。
 国内法で対応すれば違反なので拿捕しようとします。拿捕しようとするからむこうが反発するのです。
 ◆ 緊張関係から日米の軍事協力を促進させる
 前原誠司さん(国土交通大臣=当時、編者注)が、海上保安庁の船の行動パターンを変えたのだと思います。
 沖縄の知事選挙があり、思いやり予算が5年間減額なしになりました。アフガニスタンに日本の尉官を派遣し、武器三原則が緩和されました。
 日米関係でのすべての問題点が、このように進んでいったのです。
 そこでものごとを考える人がいたら、尖閣諸島周辺で事件を起こすことにより、日本の国民の考え方を変えることが望ましいと思う。十分に米国が仕掛け、そして米国の忠実な実施者である前原さんが行動を起こしたとしても何らおかしくない。
 私がこんなことを言うものだから、陰謀論者だと言われる。だけど、孫子の兵法に一番大切なのは相手の陰謀を破ることだと。城を奪うように戦うのは下の下である。重要なのは相手の陰謀を、企みを絶つことだ。国際関係はそういうものだと思います。
 例えばベトナム戦争で北爆開始というのがありました。北爆を開始する前にトンキン湾で北ベトナムが米国の船を攻撃したということが口実になって、トンキン湾事件を発端として北爆が開始されました。
 しかし、3~40年後、マクナマラは自分の著書の中で、あの事件は北ベトナムが攻撃したものではないと言っています。歴史的に考えてみると、ある方向に持っていくために意図的に事件を巻き起こすことがよくあります。
 尖閣問題はすべての歴史的な事実が出ているわけではないので、いろいろ検証しなければなりません。
 しかし、考えなければならないことは、この尖閣問題を利用して日中の緊張関係を作り、それを日米関係に利用しようとする考え方があることは間違いないでしょう。少なくともこの緊張関係から日米の軍事協力を促進させようという人たちがいるということです。
 その事実をよく知って、この尖閣をめぐる緊張をどのように避けるかということを真剣に考える必要があると思います。
 ◆ 尖閣諸島で米国が軍事的な行動をとるか
 安保条約の第5条に日本の管轄地に対して攻撃があったときには、米国は自国憲法に従って行動をとると書いてあります。
 NATO条約は同じように攻撃を受けたときに直ちに軍事行動を含めて行動をすると書いてあります。
 しかし、2005年の「2プラス2」という日米合意文書の中で、役割分担で島嶼部の防衛は日本が行うとあります。
 したがって何が起こるかといえば、まず中国が攻めてきたときに最初に対応するのは自衛隊です。自衛隊が守りきればそれでいい。
 自衛隊が守りきれなかったらどうなるかというと、管轄地が中国になる可能性があります。そのときには安保条約の対象外になります。このことをアーミテージが自分の著書『日米同盟VS中国・北朝鮮』で、もし日本が防衛しないとなれば管轄地でなくなり安保条約の対象でなくなる、ということを言っています。
 それよりも重要なことは、今アメリカにとって東アジアでいちばん重要な国は日本ではなく中国になっています。そのことを考えるとき、より重要でない国のためにより重要な国と戦争するか。
 そういう意味で、私たちは常にアメリカが助けてくれるという幻想から脱するべきだと思います。
 ◆ 相手国の論理をほとんど顧みない
 日中韓の三国は残念ながら相手国の論理をほとんど顧みない。そして、それを自分の国で相手国の論理を説明することもしない。
 例えば尖閣問題で中国がどのような主張をしているのか、私は講演会でいろいろ聞きます。200人ぐらいの方に中国が尖閣問題でどう言っているか知っている方は手を挙げてくださいと言うと、二人ぐらいしかいません。
 何も知らないけれど喧嘩しようという気分だけは持っている。個人的に喧嘩することはしばしばあるが、相手がどう言うかということを考えないで喧嘩することはない。また、喧嘩がどのような結末を迎えるかということを予想しないで喧嘩することもない。
 いま、国と国との関係において尖閣でまさにそのようなことが起こっているのです。
 今まで以上に歴史を見つめ、われわれの主張に客観性があるのか。そしてこの紛争をどのようにしたら避けることができるのか、今求められている。放っておいたら紛争になります
 紛争を喜ぶ人たちがたくさんいるということを了解しなければならない。
 紛争が起こって困るのは、日本と中国と韓国なのです。
 いかに紛争を避けるかということを真剣に考える時期にきているのではないかと思います。
 (まごさきうける)

※第11回「歴史識と東アジアの平和」フォーラム・東京会議での孫崎享さんの発言をニュース編集部でまとめ、ご本人の了解をえ掲載しました。
 「子どもと教科書全国ネット21ニュース」88号(2013.2)

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