「十六むさし」という対戦ボードゲームをご存知だろうか。下のような盤に武蔵の駒一と、捕り手十六を配し、線に沿って交互に動かしながら武蔵が捕り手二つの間に入ったら両方を取り除き捕り手は武蔵を動けないように追い詰めていく。捕り方が囲みきれないほど駒数が無くなれば勿論捕り方の負けとなる。
歌川国彦
豊国の絵はゲームそのものとは関係なく「何々さし」となる女性を描いたものである。16枚一組が揃いのはずだろうが二点だけどうしても見つからず、やっと見つけた「簪」は半分だけのものだった。
タイトルは文字や意味の分らないもの、分っても絵との関連が分らぬもの等ある。
心ざし ・ 銭さし ・ 鳥さし
中央の銭差しというのは一文銭を百枚纏めるための紐のことだが、上の小間絵は社寺の手水舎と賽銭箱の絵で、女性は何をしているのだろうか。「賽銭箱の小銭を集計している」、のではなく、「お百度参り」をしているのだろう。「お百度参り」というのはある大きな願いの神仏祈願のため百回お参りするのだが、自宅からではなく社寺の門前と本堂の間を往復する形で百回の参拝とするわけで゛、その時この銭差し百本を持ち礼拝の度に一本ずつ置いてきて数とりをするのである。
針さし ・ 水差し ・ ばかのめざし
最後の「ばかのめざし」は、「ばか貝」の剥き身いわゆる「青柳」を串に刺して乾燥させたもののことらしい。