日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(115)「馬の頭」と「象の鼻」と「述語論理」。

2018-12-01 14:47:04 | 「は」と「が」
(01)
① ∀x(馬x→動x)。
② ∀x{∃y(馬y&頭xy)→∃y(動y&頭xy)}。
といふ「述語論理」は、それぞれ、
① いかなるxであっても{xが馬であるならが、xは動物である}。
② いかなるxであっても{xが馬である所のあるyの頭であるならば、xは動物である所のあるyの頭である}。
といふ「日本語」に、対応します。
然るに、
(02)
① いかなるxであっても{xが馬であるならが、xは動物である}。
② いかなるxであっても{xが馬である所のあるyの頭であるならば、xは動物である所のあるyの頭である}。
といふことは、要するに、
① すべての馬は動物である。
② すべての馬の頭は動物の頭である。
といふことです。
然るに、
(03)
ド・モルガンが明らかに健全であるにもかかわらず、伝統的論理学のなかでは取り扱うことができなかった論証として挙げた、有名な、また簡単な論証がある。
(1)すべての馬は動物である。故にすべての馬の頭は動物の頭である。
― 10行、中略、―
123 ∀x(馬x→動x)├ ∀x{∃y(馬y&頭xy)→∃y(動y&頭xy)}
1  (1)   ∀x(馬x→動x)               A
 2 (2)   ∃y(馬y&頭ay)              A
  3(3)      馬b&頭ab               A
  3(4)      馬b                   3&E
  3(5)         頭ab               3&E
1  (6)      馬b→動b                1UE
1 3(7)         動b                46MPP
1 3(8)      動b&頭ab               57&I
1 3(9)   ∃y(動y&頭ay)              8EI
12 (ア)   ∃y(動y&頭ay)              239EE
1  (イ)   ∃y(馬y&頭ay)→∃y(動y&頭ay)   2アCP
1  (ウ)∀x{∃y(馬y&頭xy)→∃y(動y&頭xy)}  イUI
(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、167頁改)
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
(1)All horses are animals; therefore all horses' heads are animals' heads.
(〃)すべての馬は動物である。故にすべての馬の頭は動物の頭である。
といふ「論証」は、「英語」としても、「日本語」としても、「述語論理」としても、「妥当(Valid)」である。
(04)
① ∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}。
② ∀y{兎y→~象y}。
③ ∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x}。
といふ「述語論理」は、
① いかなるxであっても{xが、ある象ではない(動物)である所のyの鼻であるならば、xは長くない}。
② いかなるyであっても{yが兎であるならば、yは象ではない}。
③ いかなるxであっても{xが、ある兎である所のyの鼻であるならば、xは長くない}。
といふ「日本語」に、対応します。
然るに、
(05)
① いかなるxであっても{xが、ある象ではない所のyの鼻であるならば、xは長くない}。
② いかなるyであっても{yが兎であるならば、yは象ではない}。
③ いかなるxであっても{xが、ある兎である所のyの鼻であるならば、xは長くない}。
といふことは、要するに、
① 鼻長い。
② すべての兎は象ではない。
③ すべての兎の鼻は長くない。
といふことです。
cf.
① サンマ目黒美味い(サンマは目黒限る)。⇔
① ∀x{∃y(~目黒y&サンマxy)→~美味x}。⇔
① いかなるxであっても{xが、目黒ではない所のyのサンマであるならば、xは美味くない}。
然るに、
(06)
1   (1)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x} A
 2  (2)∀y{兎y→~象y}          A
  3 (3)∃y(兎y&鼻ay)          A
1   (4)   ∃y(~象y&鼻ay)→~長a  1UE
 2  (5)   兎b→~象b           2UE
   6(6)   兎b&鼻ab           A
   6(7)   兎b               6&E
12 6(8)      ~象b           57MPP
   6(9)      鼻ab           7&E
12 6(ア)      ~象b&鼻ab       89&I
12 6(イ)   ∃y(~象y&鼻ay)      アEI
123 (ウ)   ∃y(~象y&鼻ay)      36イEE
123 (エ)               ~長a  4ウMPP
12  (オ)   ∃y( 兎y&鼻ay)→~長a  3エCP
12  (カ)∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x} オUI
従って、
(04)(05)(06)により、
(07)
(1)すべての馬は動物である。故にすべての馬の頭は動物の頭である。
(2)鼻は象が長い。然るに、すべての兎は象ではない。故に、すべての兎の鼻は長くない。
といふ「論証」は、「日本語」としても、「述語論理」としても、「妥当(Valid)」である。
従って、
(01)~(07)により、
(08)
(a)
1  (1)   ∀x(馬x→動x)               A
 2 (2)   ∃y(馬y&頭ay)              A
  3(3)      馬b&頭ab               A
  3(4)      馬b                   3&E
  3(5)         頭ab               3&E
1  (6)      馬b→動b                1UE
1 3(7)         動b                46MPP
1 3(8)      動b&頭ab               57&I
1 3(9)   ∃y(動y&頭ay)              8EI
12 (ア)   ∃y(動y&頭ay)              239EE
1  (イ)   ∃y(馬y&頭ay)→∃y(動y&頭ay)   2アCP
1  (ウ)∀x{∃y(馬y&頭xy)→∃y(動y&頭xy)}  イUI
(b)
1   (1)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x} A
 2  (2)∀y{兎y→~象y}          A
  3 (3)∃y(兎y&鼻ay)          A
1   (4)   ∃y(~象y&鼻ay)→~長a  1UE
 2  (5)   兎b→~象b           2UE
   6(6)   兎b&鼻ab           A
   6(7)   兎b               6&E
12 6(8)      ~象b           57MPP
   6(9)      鼻ab           7&E
12 6(ア)      ~象b&鼻ab       89&I
12 6(イ)   ∃y(~象y&鼻ay)      アEI
123 (ウ)   ∃y(~象y&鼻ay)      36イEE
123 (エ)               ~長a  4ウMPP
12  (オ)   ∃y( 兎y&鼻ay)→~長a  3エCP
12  (カ)∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x} オUI
といふ「計算」に、「マチガイ」が無いならば、
(1)すべての馬は動物である。故にすべての馬の頭は動物の頭である。
(2)鼻は象が長い。然るに、すべての兎は象ではない。故に、すべての兎の鼻は長くない。
といふ「論証」は、「日本語」としても、「述語論理」としても、「妥当(Valid)」である。
然るに、
(08)により、
(09)
(a)
1  (1)   ∀x(馬x→動x)               A

1  (イ)   ∃y(馬y&頭ay)→∃y(動y&頭ay)   2アCP
1  (ウ)∀x{∃y(馬y&頭xy)→∃y(動y&頭xy)}  イUI
(b)
1  (1)∀x{∃y(~象y&鼻xy)→~長x}        A

12 (オ)   ∃y( 兎y&鼻ay)→~長a   3エCP
12 (カ)∀x{∃y( 兎y&鼻xy)→~長x}  オUI
といふことから、分かるやうに、(a)と(b)は、「同じ種類の、計算」である上に、私には、(a)に限らず、(b)の「計算」に、「マチガイ」があるとは、思へない。
仮りに、
(10)
「結果」として、
(a)の「計算」を「手本」にして行った、
(b)の「計算」に、「マチガイ」があるならば、
(2)鼻は象が長い。然るに、すべての兎は象ではない。故に、すべての兎の鼻は長くない。
といふ「論証」は、「日本語」としては、「妥当(Valid)」であるが、「述語論理」としては「妥当(Valid)」ではない。
といふことになり、それ故、残念なことに、「鼻は象が長い。」といふ「日本語」は、「非論理的な表現」である。といふ風に、言はざるを得ない。