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The Okinawan spirits ~泡盛百花~vol.5 稲垣千明

2009年07月29日 | 水曜(2009年7~8月):稲垣千明さん
 最近では“エコ”という言葉を聞かない日は無いくらい、
世の中、環境問題に敏感になっていますね。私も“エコ”な生活を
目指したいと思いつつも、たいしたことはできずに“エゴ”の範囲内
程度のことしかできずにいます(苦笑)

 でも、エコって、今でこそ、意識したり努力しなければ達成できない
ことですが、昔は、日々の自然な生活がエコそのものだったんですね。
便利な生活を手に入れた反面、努力をしなければ環境にやさしくできなく
なってしまったのは、皮肉な結末だったかもしれません。
泡盛造りや、泡盛にまつわる文化について調べるうちに、そんなことを
考えさせられるようにもなりました。


かつての酒造所内に残る豚小屋の跡

  かつて泡盛の酒造所と養豚は、深いつながりがあったといいます。
それは、泡盛を蒸留した際に出る蒸留かすが、豚の飼料にとても重宝とされて
いたからです。酒造所内で豚を養うことも、珍しいことではありませんでした。
泡盛の蒸留かすを食べて育った豚は肉質が良いと言われていたそうで、人気が
高かったという話もあります。酒造所には、蒸留かすを譲り受けに(場合に
よっては買いに)、容器を持った農家の方々が並ぶこともあったとか。

 
タンクの中で発酵中のもろみ。これを蒸留すると、蒸留かすが残ります。



蒸留かすを貯めていたタンク。譲り受けに来る農家の方は、このタンクから容器に
移して持っていきました。

 また、この蒸留かすは、人間の食用にもなりました。離島のほうでは、調味料の
ように使われていた様子も聞き取ることができます。お刺身をあえたり、小ぶりの
カツオを丸ごと煮るなんていうお話もありました。こうして煮たカツオは、「骨ま
で柔らかくなって食べやすいんだよ」と教わりました。


少しだけ蒸留かすを飲ませていただきました。酸味はやわらかくて、絶妙な風味。
私には好みの味でした。


少量もらいに来る方のために瓶詰めにしている様子。
今でも、食用に欲しいと求める方がいらっしゃるそうです。

飼料になったり、調味料代わりにもなったり、泡盛の蒸留後に残ったものも、
捨てることなく活用されていたのですね。

 かつては蒸留かすのまま活用され、近年ではもろみ酢として売られている
泡盛の副産物ですが、その合間には、産業廃棄物のように扱われざるをえなかった
時期がありました。戦後の復興とともに、泡盛の製造量が飛躍的に増えた反面、
豚を養う家や農家が減っていってしまったこと、さらには衛生面や臭気を理由に、
酒造所で豚を養うこともよろしくないとされてしまったことで、行き場の無い蒸留
かすが大量に出るようになったのが、その大きな理由だったようです。

 
市街地や住宅地に近くない立地を逆に利用して、隣接する農地で昔のように
蒸留かすを活用していきたいと考えている酒造所もあります。

 近年、ふたたび、蒸留かすや、もろみ酢の利用に注目が集まるようになり、
健康ブームともあいまって、もろみ酢の人気が高まりました。副産物を無駄に
しないこと、これも“昔の当たり前”ながら、こんにちでは立派なエコ。
ブームで終わらせないで、大切にしていきたいですね。 



text:稲垣千明





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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (kappa-rock)
2009-07-30 17:01:30
環境問題は僕たちKappaにとっても重要な問題なんだぁ。村おこしに僕たちがキャラクターとして使われる事も・・・。肖像権はいったい・・・笑。
河が汚くなって住めなくなった僕たちは綺麗になるまで山の奥で暮らしているよ。
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タンクの写真 (みゅーじのん)
2009-07-31 16:51:37
稲垣さんへ
蒸留かす貯めるタンク、かっこいいな~
博物館準備室で戦前の生活ヒアリングしたけど
庭に植えていたの草木は生活用品か食用品でした。
いまはいらないものが多すぎるのかな

応援してます。ちかいうちに飲みましょう~~
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Unknown (Chiharu)
2009-08-04 22:03:44
 Kappaさん、いつもコメントありがとうございます! Kappaさんが沖縄にいらっしゃるときには、キジムナーと泡盛を酌み交わす場をセッティングしますね☆ 沖縄代表のキジムナーと、環境問題について語り合ってみてください。
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タンクもリサイクル (Chiharu)
2009-08-04 22:14:07
 みゅーじのんさん、タンクがお気に召したようですね。私も、あのタンクに出会ったときには、ちょっと感動しました。酒造に使っていたものを再利用したタンクだったようですが、酒造所の外側の道に面して設けられていて、譲り受けに来た人が、酒造所内の作業に気兼ねすることなく酌んでいけるようになっていたのです。この関係性がなんだか素敵に思えました。
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