おかずさんの読書

ビジネス・歴史を中心に読んだ本の感想を記載

義経

2009-08-19 11:05:08 | 歴史小説
「義経(上)(下)」 司馬遼太郎 文春文庫

 宮古島での夏休みを利用して、何年かぶりに読んだ。
 題名は義経だが、源頼朝、後白河法皇、源義仲、平知盛などの考え方・心を活き活きと描いており、改めて司馬遼太郎のすごさを感じた。
 この小説の面白いところは、義経を悲劇のヒーローとして単純に描くのではなく、戦いの天才で政治的に「阿呆」としているところ。兄頼朝との血の繋がりのみを信じ、後白河法皇の手の中でうまく転がされ、知らないところで、どんどん頼朝との間に溝を深めていく様子が悲しい。部下の努力を認めることなく、自分の力で平家を打ち滅ぼしたことを言えば言うほど、周囲が疎んじ、頼朝が警戒することを理解できない義経。悲劇のヒーローではなく、自業自得。

 もう一つ面白いのが、後白河法皇の立ち回り。何の武力も持たない天皇・皇室が現在まで1000年以上にわたり存続している理由をうまく描いている。その時々の権力者を選別し、天皇を頂点とする秩序の中に巧妙に入れ込み、他の権力者が台頭すれば、冷酷に乗り換える。義経と頼朝にそれぞれ相手の追討を命じる院宣を出すところなど、二股の保険をかけている。

 本書における義経の位置づけから仕方がないかもしれないが、欲を言えば、義経が京都を出てから、平泉で死ぬまでのも描いてほしかった(本書では1ページのみ)。
 
コメント
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