にじをかけたむすめ 中国・苗族のむかしばなし/宝迫典子・文 後藤仁・絵/BL出版/2024年
むかし、ある小さな村に、花辺ねえさんとよばれる美しい刺繍飾りをつくるむすめがいました。むすめの刺繍した草花や動物は、生き生きとして、命がやどっているようでした。むすめのもとには、いつもたくさんの人があつまってきて、むすめは心をこめて、刺繍を教えていました。
むすめの評判は、王さまの耳にもとどき、王さまは、むすめを手元におきたいと、村を離れたくないというむすめを、無理やり城につれてきます。王さまは、村に帰りたいというむすめに、「七日以内に、生きているように見える見事なオンドリを刺繍して見せよ。できれば、願いをかなえてやろう」といいました。
むすめの評判は、王さまの耳にもとどき、王さまは、むすめを手元におきたいと、村を離れたくないというむすめを、無理やり城につれてきます。王さまは、村に帰りたいというむすめに、「七日以内に、生きているように見える見事なオンドリを刺繍して見せよ。できれば、願いをかなえてやろう」といいました。
オンドリと次に命じられたキンケイの刺繍ができると、むすめの涙で、オンドリとキンケイは、外へとびたってしまいます。
驚いた王さまがつぎに命じたのが、龍の刺繍でした。こんどもまた、涙をながしながら、昼も夜も、刺繍をして、七日目に、ようやく龍ができあがりました。むすめは指をかみ、願いをこめて龍のひげを赤くそめあげます。むすめがまばたきすると。真珠のような涙がひとつぶ龍の口にころがりこみました。そのとたん、なんと龍がとびたちました。牢屋で龍を見た王さまは、「こ、これは龍じゃない。ヘビだ!」とさけびました。龍は、口を大きく開いて、王さまや家来たちにむかって、ボウボウ燃える火の玉をはきだしました。火の玉は、お城へと燃えうつり大騒ぎになりました。自由になったむすめは、龍にのって、はるかかなた天へとのぼっていきました。
天上で、むすめは、あいかわらずせっせと刺繍をしています。空にかかる色とりどりの虹は、娘が刺繍したものなのです。
中国・苗族(モン族)の刺繍にまつわる昔話。精密な娘の衣装、まさに生きているオンドリ、キンケイ、龍の絵。牢屋のまどには、ツバメ?、トンボ、フクロウ、月、クモが、一心不乱に刺繍をしているむすめを見守っています。