たいふうこぐま/おくやま ゆか/ほるぷ出版/2023年
町のちかくの山にすむこぐまは、なかなかの やっかいもの。ひとのうちの洗濯物を ぐしゃぐしゃにしたり、つりばで ひとのバケツをけっとばし、市場では わめきちらし、まるで台風のようだとまちのひとたちはめったにだれも よりつきません。
こぐまは、ミックさんの 畑のお野菜を食べたり、大切な花を 引っこ抜いたりしていましたが、ミックさんは こぐまを きらいではありませんでした。
ある日、ミックさんは ニュースで 本物の台風がやってくると知り、家のまわりをかたずけたり、こわれそうな窓に板を打ち付け、とおりかかったこぐまに 台風のことを しらせてやりました。ところが、こぐまは、ミックさんのいうことを無視して、つぎの日の朝、川に向かいます。
風と雨がはげしくなり、さかなとりあみは おれてしまい、雨粒が目に入って前にすすめなくなったこぐまは、木の枝にしっかり つかまりました。そんなこぐまのようすをみたミックさんは、こぐまを家につれかえり、おふろにいれてやり、あたたかいミルクをいれ、ふかふかの ねどこを用意しました。
翌朝、こぐまのねどころは からっぽ。台風がさって、ミックさんが あれはれた庭の手入れをし、ごきんじょの家も 修理してまわり、帰ってくると 玄関には、食べきれないほどのさかなが はいったバケツがありました。おどろいたミックさんが あたりをみまわすと、あわててかけていく こぐまの すがたが みえました。
こぐまも、ひとりぼっちで さびしかったのかも。ミックさんのやさしさが つたわってきます。
いつのまにか生活圏が だぶるようになって くまとの共生もむずかしくなりました。