しあわせなふくろう/チェレスチーノ・ピヤッチ え・おおつか ゆうぞう やく/福音館書店/1999年8刷
ふくろうの絵が、なんともいえない味がある絵本です。
にわとりやがちょう、くじゃく、あひるたちは食べたり、飲んだりすると、こんどは喧嘩をしたりと、ねんがらねんじゅう同じことを繰り返しています。
ある日、動物たちは古くてくずれかかった石の壁に暮らすふくろうの夫婦がどうしてしずかになかよく暮らしているのか聞きにいきます。
ふくろうは四季の移り変わりの素晴らしさを話します。
春にはあらゆるものが、冬のねむりから目をさまし、蕾がふくらみ葉があおあおとしげり、ちいさな花が何万も開く。
夏にはみつばちがとびまわり、ちょうちょが花から花へまいあるき、きんいろのひまわりからみつを集める。ひのひかりと雨とで、森の木々や草が青々と茂る。
秋になると、くもが木の葉のかげからそとにでてあみをひろげる。そうして落ちかけている木の葉をしばらくの間、つなぎとめておく。
木の葉がみんな落ちて地面が雪におおわれると、ふくろうは石の壁にもどってしずかに暮らすという。
しかし動物たちは、ふくろうの気持ちがわからず、これまでと同じように、食べて飲んで喧嘩する暮らしを続けます。
冒険があるわけでも、しあわせな結末がまっているわけでもありません。
名誉も富ももとめず、自然の変化を素直な気持ちでうけとめるふくろうの夫婦の思いと、目の前のことしか見えない動物たちが登場し、何が幸せなのかじっくり問いかけます。
理想的にもみえる夫婦像ですが、この域にたどり着くには、難しそうです。
作者の思いが子どもにどう伝わっているか知りたいところ。原文には、オランダの民話とあります。