貧しい島の奇跡/ムギと王さま/ファージョン・作 石井桃子・訳/岩波少年文庫/2001年初版
あるおはなし会のプログラムに、この話があり読んでみました。
そのあと続けてファージョンの他の話を聞く機会がありました。それまではほとんど聞く機会がなかったファージョンでしたが、続くときつづくのは不思議です。
沖にある漁師たちの島。
島の土地は岩だらけで、草や木もなく花は一つもありません。
たった一つあるのは、ロイスのおとうさんが結婚の記念に植えたバラの木。およめさん、ロイスがよく世話をしていました。
島と本土の間は、ひと月に一度、満月の時、潮がひいていききできました。
この島に女王がやってくることになりました。
教会への道には、大きな水たまりがあって、女王が通るには、足が水につかってしまいそうでした。
そこでロイスは、みんなにだまって、水たまりにバラの葉と花を敷きつめます。
島の人たちは、島のたったひとつの美しいもの、バラをみてほしいと女王を案内しますが、そこにはバラはありませんでした。
貧しい島の人びとは、月に一度本土とつながる道をとおって、魚を商っていたのですが、あるとき、帰るとき急に空模様があやしくなって、潮に巻き込まれそうになります。
このときロイスも潮に巻き込まれそうになるのですが、みどりの葉と白い花が島と島のあいだをうずめつくします。
ロイスは、亡くなった女王が、微笑みを浮かべ、みどりの葉と九つの白い花をつけたバラの枝をもっているのを見たのでした。
この女王は悲しみをもっていたとあるのですが、どんな悲しみかふれられていないので、よけいに想像がふくらみます。
バラの花でみずたまりをカバーできるか疑問なのですが、それを感じさせない幻想的な物語です。
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