いもさいばん/文・きむらゆういち 絵・たじまゆきひこ/講談社/2016年
おじいさんが丹精込めてそだてた さつまいもが、夜の間にだれかがこっそり盗まれてしまいました。
畑にこわい顔のかかしをたてても、次の朝、かかしはどろんこだらけ、わなをしかけても、かかったのは まごたち、落とし穴をつくっても落ちたのは おばあさん。
おいもはどんどん減っていきます。
じいさんが畑に穴を掘り、寝ずの番をしていて、いつのまにか うとうと。
真夜中に 変な音で 目を覚ますと、びっくりぎょうてん イノシシとウリボウが おいももかかえて 走っています。
じいさん穴から飛び出すと、イノシシは困った顔で「どろぼうなんて とんでもない。みつけた おいもを はこんでいるだけです」といいます。
「みつけた いもだと? なにをいっている どろぼうめ! このいもは わしの 畑の わしのいもじゃ」
すると、キツネ、ノネズミ、ウサギ、リスもいっせいにさけびます。
「わしの 畑? そんなこと だれが きめたの?」「そうだ そうだ にんげんが かってに きめただけ」「この じめんも やまも かわも そらも にんげんだけのもんじゃ ねえ」
じいさんが「わしが たんせい こめて つくった いもじゃ。だから わしの いもじゃ」と反論すると、サル キツネ モグラも
「いもは つちの なかで じぶんで そだったんじゃ ないのけ」「そう、あめふって たいよう あびて そだったはずや」「それとも あめや たいようも にんげんが つくったって いうのけ?」
動物たちとじいさんの論争はまだまだ続きます。
タヌキが、じいさんの味方をしますが・・・。
にんげんと どうぶつたち どろぼうは いったい どっちだろう?と、結論は読者にまかせます。
長いスパンで見ると、動物たちは人間より先に地球に存在していました。あとからやってきた人間が、ここは人間のものだと囲いをして土地を広げていきました。その裏には、そこから追い払われた大勢の動物たちがいました。ですから泥棒はどっち?というなげかけには、すぐには答えはでません。
泥臭い感じの絵は、とても迫力がありました。