世界でいちばんうつくしいもの/ヴィヴィアン・フレンチ・文 アンジェラ・バレット・絵 石井 睦美・訳/BL出版/ 2015年
表紙を見るとクラシックな衣服の人物ですが、イヌがのぞきこんでいるのはパソコン。
昔話風ですが”世界でいちばんうつくしいもの”をさがす旅でもあります。
ある王国の王さまとお妃さまが、娘ルチアにふさわしい婿をと願って、賢者アンジェロに助言をもとめました。
賢者アンジェロからの返事には、「世界でいちばんすばらしいものを見せることができる若者をおさがしください」とありました。
王さまとお妃さまはルチアにだまって婿選びをすすめます。
王妃になるのなら街のことを知っておきたいと、ルチアは街に出ることにします。
宮殿をあとにしたルチアは、運河のへりに腰かけて子猫と遊んでいる青年サルヴァトーレと出会います。
街を案内してほしいというルチアに、サルヴァトーレは喜んで承知し、二人は街を歩き回ります。金箔でかざられた教会、きらきら輝きをはなっているアーケード、きらめくような噴水、大聖堂 街の隅々まで、すばらしいものを見て過ごします。
一方、宮殿では次々やってくる求婚者が、王さまとお妃さまに”世界でいちばんすばらしいもの”をさしだします。「100本のバラと青い尾をもつラブバード」「雪のように白い馬」「ピラミッド」「手品をするイヌ」「神話に登場するけもの」「凍った空のかけら」などなど。
けれども、王さまとお妃さまには、それが”世界でいちばんすばらしいもの”だと思えませんでした。すっかりつかれきった二人。
一方、あらかた街を案内したサルヴァトーレが、最後の一か所を案内しようとしたとき、ルチアが王女であることを知ってしまいます。
一緒に街を歩いているうちに、ルチアを好きになってしまったサルヴァトーレは、身分違いで手の届かない存在だと知ってしまい悲しみにくれます。
”世界でいちばんすばらしいものって一体なんだろう”と思っていると、最後は最高の結末です。昔話風ですからハッピーエンドになるのはわかっているのですが、その結末のむかえかたが鮮やかです。