長崎のむかし話/長崎県小学校教育研究会国語部会編/日本標準/1978年
親と早く死に別れ、仲良く暮らしていた二人の兄弟。次郎が庄屋で働くことになった。
庄屋は条件を出した。「次郎、おまえがひまをもらうとき、もうそう竹の数を数えてもらう。そのとき四のすうじを口にしたら、おまえは、ただぼうこう。もしも、おれが、四の字を口にしたら、ほうこうちんは倍返しする」。
約束の三年がたって、次郎がもうそう竹の数を数えることになった。もうそう竹は、四百四十四本。次郎は三年前の約束を忘れていて、「四百四十四本あったばない。」といってしまった。銭をたいそうもらって、家に帰れると思っていた次郎は、ひどく悔しがって、楽しみにまっていた太郎に、一部始終を話した。太郎もひどく悔しがって、倍返しのほうこうちんをもらおうと、庄屋のところへいった。
三年たって、太郎がやぶからもどってくると、「三百本、百本、三十本、十本、三本、一本」と、早口で言った。庄屋は、「なんだって・・」と聞き返した。太郎が何度も早口で、「三百本、百本、三十本、十本、三本、一本」というと、庄屋は、「それは、四百四十四本じゃなかか。」といってしまう。
太郎は次郎のぶんまで、ほうこうちんをもらって、勇み足で家にもどった。
昔話では、兄弟が出てくると、しっかり者は弟のほう。この話では兄が存在感を示しています。