大阪のむかし話/大阪府小学校国語科教育研究会・「大阪のむかし話」編集委員会編/日本標準/1978年
惣平という飛脚が仕事を終えて「とろす池」のそばをとおりすぎようとすると、白い髭の老人から声をかけられ、久米田池の主に渡してくれるよう一通の手紙を差し出される。
「池のそばで手を三つ打つと、池の主がでてくる」といわれ、惣平は大きな力にひきずられるようにいつのまにか久米田池までたどりつきます。
手を打とうとするが、どんなこわいことがおこるかわからんので、おそろしさにふるえていると、ひとりの坊さんがとおりかかります。惣平が坊さんに、ありのままをはなすと、坊さんが手紙をあけてみます。そこには、「この男をたべてしまえ。」とあったので惣平はおどろいて、これはみ仏にすがるしかないと、念仏をとなえました。お坊さんは、手紙をかきかえ、久保田池の主に渡すように言うと、立ち去っていきます。
惣平はもうにげられないと観念し、池にむかって手を三つ打つと、池の中から、それはそれは美しい女があらわれます。惣平が手紙をわたすと、女は手紙を読み上げます。
「この男は、正直な人だから、何かよいものをあげておやり」
惣平が、女の人からもらったのは、いくら出しても出しても、なくならない酢つぼでした。女は、つぼのなかは、けっしてのぞいてはいけないと念をおします。
惣平は、酢屋の店を開いて、しばらくのうちに大金持ちになりますが・・。
手紙を書き換えるのは、外国にはよくみられるパターン。飛脚は、荷物を届けるのが仕事で、手紙をとどけるのも自然です。