どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

地主の花嫁・・ノルウエー

2024年03月18日 | 昔話(北欧)

     ノルウエーの昔話/アスビョルンセン ヨーレン・モー 米原まり子・訳/青土社・訳/1999年

 

 広大な領地をもっている地主だったが、一人暮らしで何か物足りなかった。ある日のこと、近くの農場から来ていた娘をみてすっかり気に入り、少女に「あんたをわしのよめさんにしようとかんがえておるんじゃよ!」と言った。

 少女は「いやですわ! でもまあ、ありがとうございます!」と答えたが、そんな日が来ることは決してないだろう思った。しかし、地主は「いやだ!」などという言葉を聞くのに慣れていなかった。そして少女が嫌がれば嫌がるほど、彼の方ではますます思いをつのらせていった。少女と話していたのではいっこうに事がはかどらないので、少女の父親を呼んで、もし娘と結婚できるように取り計らってくれたら貸した金のことはわすれてやろう、そのうえ、牧草地の横の土地もおまけにやろうと付け加えた。

 父親はその話を娘にしたものの、やさしく言おうと、きつく言おうとどちらにしてもなんの役にも立たなかった。少女は、たとえ地主さんがとほうもないほどの金持ちでも結婚しませんというばかり。

 地主は来る日も来る日もまっていた。けれどだんだん腹がたってきて、がまんしきれなくなって、約束を守るつもりがあるなら、さっさと一発殴りつけたほうがいいぞと、言ったのだ。父親はこう答えた。地主さんとしては、婚礼の支度をすべて整えて、牧師さんや結婚式の客たちが集まったところで、なにかしなければならないよう仕事があるようなふりをして娘を呼びつけるんです。娘がやってきたら、心を落ち着かせる時間を与えず、あっという間に結婚せにゃならんようにするんですな。

 地主は、これはとてもいい考えだと、召使に命じて、結婚式の準備を万端抜かりなく整えさせた。婚礼に招かれた客がやってくると、召使の少年に、急いで農場の隣人宅にいって、約束したものをよこすようにさせろ、と大声で命じた。少年が隣人宅にいくと、「あの子は、牧草地にいるから連れて行ってくれ」と言われ、牧草地にいた少女を連れて行こうとするが少女は騙されません。「約束したものって、あの小さい雌馬のことじゃなくて?あのこを連れていくことね」と答えます。

 召使の少年は、雌馬にのってもどり、地主から「あの子をつれてきたか?」と聞かれると「扉のそばにたっています」と答えました。母の部屋だったところへつれていけ!と地主からいわれ、とやかくいっても無駄だと悟った少年は、召使たちみんなと雌馬を階段を上らせ、寝室まで連れて行った。つぎに「女たちをいかせて、あの子に花嫁衣裳を着させるんだ」といわれ、「でも、そんな!」と言いますが、つべこべいうなといわれ、召使の少女たちに声をかけ、小さな雌馬に花嫁衣裳を着せ、準備が整いましたと、報告しました。

 地主がみずからで迎えようとすると、地主の花嫁は大広間にはいってきました。居並ぶ婚礼の客たちは全員こぞって、どっと笑いだした。

 地主はその花嫁のことがあんまり気に入ってしまったので、それ以来二度と求婚しようとはしなくなったのだということだよ!。

 

 少女の心のうち・・醜い年寄りなら、結婚なんかよりももっとふさわしいことを考えればいいのに・・