どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

イモほり藤五郎・・石川

2022年06月16日 | 昔話(北信越)

           石川のむかし話/石川県児童文化協会編/日本標準/1977年

 

 むかし、わらぶきの貧乏な家に住んでいた藤五郎ところへ、嫁入り行列がやってきて、よめごに してほしいという。

 何が何だかわからない藤五郎に、後からきた白髪の爺さんが、「わたしゃ大和の国初瀬村の方信というもの。長い間こどもにめぐまれなかったもんで、毎日毎晩初瀬の観音に願をかけ、さずかったのが和子と、もうします。すくすくのびて、今年17。ある晩、観音さまが、まくらもとにたたれて、加賀の国、山科という里に藤五郎という若者がいる。家は貧しいが、気だてはやさしく、むことして不足のない男や。いそいで出かけるがよいぞ」という。

 それならばと、よめさんに もらうことにした藤五郎。

 藤五郎は、村のもんを呼んで、よめさんをひきあわせ、よめさんのもってきた着物や帯を、お祝いじゃというて、みんなにわけてやったと。

 年もあけて、正月も終わりのころ、初瀬の長者から、お年玉というて、重たい袋がおくられてきた。なんやと思うて開けてみたら金のつぶが数えきれないほどはいっていた。これをみた藤五郎は、「ありがたいとは思うが、わしにゃ用のないもんや」というて、うらのたんぼにまきちらした。

 おどろいたよめさんが、「金といえば大切な宝物。すてんでいいものを・・」というと、「金なんか、わしゃ自然薯を掘りに行くと、自然薯についてでてくるわい。」といった藤五郎は、翌日、イモほりにでかけた。

 イモづるを見つけて、くわサクリ打ち込み、ポンとほりかえすと、ぴかぴか光る金のつぶ。またくわを打ち込むと、ちょうどうめておいたかのように、大粒小粒がでてきた。藤五郎は山イモを川であらうと、川底に金のつぶが ぴかぴかひかっていた。藤五郎は、この金のつぶも、村人にわけてやったと。

 藤五郎が、山イモをあらったところを、「金洗い沢」と、いつのまにか よばれるようになったという。

 

 世の中、世界の各地に別荘をもち、自家用飛行機でとびまわる超富豪がいる。しかしいくら金があってもそれがかなずしも幸せにはつながらない。一生使いきれない金なら、しかるべきところへ寄付して社会貢献をしてもらいたいもの。