観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

調査ガール、尾瀬へ行く

2012-08-05 11:21:55 | 12.7
3年 笹尾美友紀

 夏がくれば思い出す はるかな尾瀬 遠い空

 研究室に入ってあっという間に時間が経ち、夏になった。研究室に入って以来、研究対象になったサトイモ科の植物が、正確に言うとテンナンショウが気になって気になってしょうがない。しかしテンナンショウの花の時期は3月下旬から6月までである。もうすっかり暑くなっていて夏の気配が感じられた。…「夏?」「夏といえば尾瀬?」「尾瀬と言えばミズバショウ?」
 ミズバショウの花がとっくに終わってしまっていたことは知っていたが、少しでもサトイモ科の植物と近くなりたくて同級生の山尾さんを誘って尾瀬へ行った。
 7月はニッコウキスゲという花が見ごろだと聞いたので、尾瀬沼と大江湿原を目指して夜行バスで大清水に向かった。大清水から尾瀬沼に向かうまでは坂道と階段が永遠と続いていた。お互い「疲れた」と言える様な性格ではないので、そろそろ休みたいなと思うと
「あっ!これ見て!」と言って観察と休憩をした。私たちが
「こんな植物は見たことがない」とか、
「これはシカが角でつけた傷じゃないか」とか騒いでいると、
「植物をたくさん見たいなら、この季節なら至仏山に行った方がいいよ。この辺は面白いものがないからね。」と声をかけられた。またテンの糞らしきものから種子が出ているのを観察していると、
「そんなの見つけられるなんてラッキーだね」と声をかけられた。
 たしかに登っている道を見回してみると、ササがずっと続く尾瀬らしくない景色であった。そして私たちを抜かしていく人々は余所見などせずに目的地に向かってもくもくと歩き続けていた。
「何も見ないで歩いててつまらなくないのかな?」ふと疑問に思った。何もなさそうな道でも目を凝らせば面白い昆虫や新しい発見がある。それを見つけようともせずに歩き続けることに意味はあるのだろうか。
「きっとみんな山の頂上に登ることが目的なんだよ。やった、登った!みたいな達成感を得ることが楽しいんだと思う」そう山尾さんに言われたとき、なるほどと思うと同時に尾瀬を十分に満喫できていないのではないかと思った。二人で話し合った結果、他の人たちは山ガールだが、私たちは「調査ガール」なのでゆっくりいろいろなものを探そうということになった。派手な色のショートパンツにタイツといった格好をした今流行の山ガールに追い越されながら、調査用のチェックのシャツを着た私たちは観察を続けた。
 大江湿原までの道の8割は上り坂で、そのうえ写真で見たようなニッコウキスゲの大群落は見ることができなかった。ちらほらと咲いてはいたが、つぼみは少ないような気がしたので、もう時期は終わってしまっていたのだろうか。もし私たちがニッコウキスゲを見るためだけに歩き続けていたなら、きっと落胆して家路につくことになったと思う。

<砂利道の続く林道>


<大江湿原にて>

 尾瀬ではミズバショウもテンナンショウも見つからないだろうと思っていたが、帰り道でテンナンショウの雄を見つけた。また湿原で
「あれ?」と思ったものがあった。テンナンショウの実によく似ているがギザギザしていた。葉の雰囲気はテンナンショウよりもサトイモに似ている感じであった。ミズバショウではないかと思ったが、葉がかなり大きく、春にアファンで見たミズバショウよりも何倍も大きかった。


<ミズバショウの実>

 帰って調べてみると、確かにミズバショウであったようだ。結実すると急速に葉が大きく成長するらしい。7月前半に北高尾で見た結実したテンナンショウの葉も今まで見たよりも大きかったことを思い出した。これは種類が違うのではなく、ミズバショウのように結実後に大きくなったのだろうか。葉が大きくなったのは、結実したために多くのエネルギーが必要になり、光合成を盛んにするためだろうか。
私の勉強不足でテンナンショウについてもまだまだ分からないことや知らないことが多い。あと1年半でどんなことを発見できるだろうか。来年の芽吹きの時期までに既出の知識を沢山身に着けておきたい。そして来年はミズバショウが溢れるはるかな尾瀬へ!





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