布屋忠次郎日記

布屋忠次郎こと坂井信生の日記

御寺 泉湧寺

2008-11-27 19:50:08 | 日記
「せっかく京都に行くなら」の第一は泉涌寺でした。自由行動になった瞬間、同僚たちをほったらかして京都駅のバス乗り場へダッシュ。何しろ拝観時間が16時までだから。

着いてまっさきに、中央に威風を放つ仏殿や舎利殿には目もくれず「四条天皇他二十四方御陵参道」の案内が脇の細い道へ。そう、ここは明治天皇より前の天皇や皇后が多く菩提を弔われている、皇室の菩提寺なのです。
というとたぶん「皇室は神道じゃないの」と驚くクリスチャンも多いのでは?でも確かに、境内の奥の「月輪陵(つきのわみささぎ)」に、二十四方が葬られています。案内など見る限り「まつられている」とか「二十四柱」といった書き方は見当たりませんでしたが、それも神社ではなく仏教寺院だからです。

「神仏混淆の時代だったからさ。神道も仏教も所詮は多神教だし」と考えるクリスチャンもいるかもしれませんが、皇室が仏教を受容したのは「同じ多神教だから」でもないんですね。じゃあなぜかという話は長くなるのでまた今度にしますが。

さて。行ってみたところ、まあ予期してはいましたけどやはり月輪陵には立ち入りできません。絵葉書かガイドでもあればと思ったけど、これも陵の中を写したものはなし。かろうじてパンフレットに伽藍全景の空撮があって、様子がうかがえるのみでした。

本坊に入り、御座所へ。天皇はじめ皇族方が墓参にこられたときの御座所とのこと。この御座所の内庭の紅葉が、すごかった。濡れ縁に出た瞬間、「息を呑む」って感じ。はじめのうちこそ写メをとりまくったけど、気がついたらただ庭を眺めていました。しばらく眺めたあと、順路に従って御座所を一周。でもまた濡れ縁に出て、今度は座り込んでしまいました。

ただただ美しいのです。
どうして自分は「美しい」という言葉しか知らないのだろうというくらい、見事な彩り。

添付の画像がそうなのだけど、これじゃ何も伝わらないよ。ちゃんとしたカメラ持ってくるべきだったなぁ。ちなみに屋の塀のむこうが月輪陵になります。
紅葉の名所なんて、日本中にいくらでもあるのでしょうけれど、そして私はこういう方面は見聞がとぼしいのだけど、それでも「これにまさる紅葉があるのだろうか」と思ってしまいました。山中など一面の紅葉というのも美しいでしょうけれど、庭園(と呼ぶにはわりと小さめ)では随一なんじゃないかなぁ。

満足感いっぱいに御座所を後にし本坊を出た次は、すみっこにある泉湧水屋形へ。ほとんど観光客が寄ってこないけど、ここから沸いた泉が寺号らしい。鍵のかけられた小さな建物は、金網越しに目を凝らしてもうすぼんやりとしか中をうかがえませんでしたが、耳をすますと小さな水音が。
後ろから来たご婦人が「ここが泉ですか」と聞かれ、「そうみたいです。耳をすますと水音がしますよ」と。しばらく耳をすましてから、にっこり笑みながら「聞こえた聞こえた。聞かなかったら、もったいなかったわよねと。いつもの人見知りもどこへやら、こういう見知らぬ人との交流もまた旅の楽しさか(旅で京都にきたわけでもないけど)。

せっかくなので、宝物館の心照殿へ。第二展示室では「孝明天皇と英照皇太后 幕末の天皇と皇后の宝物」という企画展示をやっていた。孝明天皇の御尊影とか、両陛下の愛用の品々など見ているうちに、ここでも見知らぬご婦人方といつのまにか仲良く話していたのだけど、そしたら別のご婦人が寄ってきて「ご専門は何ですの?」と。「いえ、ただの会社員です」と答えたら、そうは見えないと言われた。飾ってあった立派なキセルを前に、先のご婦人にキセル愛用者の立場から薀蓄たれてただけなんだけどなぁ。それにしてもあの煙草盆はすてきだった。

「せっかく京都に行くなら」の第二は、京都タワー地下の大浴場、だったのだけど、あまりに泉湧寺でゆっくりしすぎて集合時間に間に合わなそうで今回は断念しました。